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「ねえ、もしかしてあんた、口軽い方なの?」
駅の高架から、オレンジ色の電車が出て行く。駅前のバスロータリーから、赤いバスが出て行く。バスが行ってしまうと、人が道路を渡り始める。
周りはそうやって動いているのに、俺はどうしてか、振り返る事が出来なかった。心臓だけが、胸を突き破ってしまうのではないかと思える程、高く跳ね上がっている。
「さっきだって、なに、あの子」
油の切れたボルトの様に、ギギギ……、と軋ませながら首を無理矢理回す。背後には今俺が出て来た横町があって、外よりはかなり暗い横町の中から……。
亡霊の様にハルが現れた。
「さも悩みがあります、みたいな感じでさ。ぽろっと言っちゃうんじゃないかと思って、ほんっと、心臓に悪いったら」
心臓に悪いのはそっちの方だ。
「言っとくけど、ヤマトが誰かにこの事ばらしたら、ばらされた方の身の安全も保証出来ないから」
考えてみればそうだよな、と俺は思いつつ、やっとの事で体ごとハルの方へ向かい合う。
「お前なあ、いるんだったらいるって言ってくれれば良かったのに」
「だって、お邪魔しちゃ悪いですし」
心無しか、蒼い瞳が鈍く光った気がした。
「みっちゃんと仲良いくせに? 千種ちゃんとか言う妹キャラまでいて? モテ期は人生に三回までしかないみたいだから、大事にしないとね?」
「どうしてお前がいらついてるんだ」
「いらついてなんかないわよ。ただ、秘密を共有するのがヤマトだったのが、不運だったな、ってだけ」
「いやいや、お前が降って来たからだろうが。あと、これだけは否定しとくが、俺は決して口が軽い方じゃないからな」
「どうだかね」
ハルの一言で、会話が一旦途切れる。俺は、明るい駅前の通りから、横町の中へと入った。ハルの横を通り過ぎ、横町の壁にもたれかかると、ハルもそれに倣った。
「お父さんから聞いたのよ」
俺は何も聞いていないが、ハルは一人で話し始めた。
「私に、『魔法が使えなくなったみたいだが、本当か?』って。で、私がとぼけ続けたんだけど、あまりにも色々知ってる物だから、問いつめちゃったわけ。そしたらお父さん、『ヤマトくんが教えてくれた』って、あっさり吐いてくれたわ」
ユリウスさん……、秘密にしてくれるって言ってたじゃないですか。なに速攻でばらしてくれてるんですか……。
ハル、めちゃくちゃ怒ってるんだろうなあ。俺は内心びくびくしながら、目を地面に落とした。汚いアスファルトの地面に、埃が溜まっている。
「まあ、お父さんにバレるのも時間の問題だと思ってたし、そこまで騙しきれるとも思ってなかったし」
溜め息をつきながら、ハルはそう言った。あれ、怒ってない……? 俺はおずおずと隣に経つハルの顔を覗き込んだ。
般若の様なハルの顔が目に入った。ぎゃー。




