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「なぜだか解らないけれど、最近この辺りに割り振られる仕事が多いんだよね」
それは、さっき翠が行っていた事だろうか。
「そうなんです。魔法使いの数が足りないって程じゃないですけど、それでも私たちの出動回数が増えたかなって気がするんです」
「確かに、僕のログを見返しても、やっぱり最近、とみに魔法使いの仕事が増えているね」
「ラインハルトさんでも、やっぱりそこまでしか解らないですか?」
「残念ながら、僕は支部の人間ですら無いからね。上で何が起きてるか、知りようが無いんだ」
「そうですか……」
また俺は、言葉の解明に躍起になっていた。どうやら、翠は最近の仕事の多さに文句を垂れつつ、その理由をハルの父親に相談に来た様なのだ。
ますます、俺が何でここにいるのか解らなくなってくる。
「じゃあ、何か解ったら教えてください。ハル経由でも良いので。とりあえず今週は、脱獄囚の確保に務めます」
「解った。危なくなったら逃げるんだよ。相手も魔法使いだ。何をしてくるか、解ったもんじゃないからね」
「重々承知してます。ありがとうございます」
そして、翠はすっとソファーを立った。あれ。急に話が終わってしまった。俺は再び慌てて翠の背中を追おうとした。が。
「ヤマト君、ちょっと良いかな?」
ユリウスさんに呼び止められた。
「なんですか?」
「ちょっと話があるんだ。翠ちゃん、済まないけど、玄関で少し待っていてくれるかい?」
翠はユリウスさんの言葉を聞いて、怪訝な顔をしながらも、「はい」と了承した。それを聴いたユリウスさんはもう一度ソファーへと腰掛けた。俺もつられて腰を落とす。翠はちらりちらりと振り返りながら、玄関の方へと歩いて行った。
それを見送ると、さっきまでの穏やかな笑みを消して、ユリウスさんは声を潜めた。
「これは、翠ちゃんには秘密にしておいて欲しい話なんだけど」
ん? 何かがおかしい。何かがおかしいのだけれど、よく解らない。もやもやを抱えたまま、俺はユリウスさんの言葉に返事をした。
「はい。解りました」
俺の返事を聞くと、ユリウスさんはもう一度玄関の方を見やった。翠の姿がここから見えない事を確認して、彼は口許に手をやり、内緒話を始めた。
「僕の魔法はハルと同じ風の精霊を使役する者なんだけど、使い方によっては人の心を読む事も出来るんだ。ずっと君のを読ませてもらったてたんだけど……」
「まじっすか」
魔法使いって怖い。俺の恥ずかしい記憶とか、読まれてないんだろうか。思わず過去の隠し事なんかを、全部話してしまいそうになる。
「ああ、でも、人の恥ずかしい記憶とか、そんな物覗いたりはしないから。こっちまで恥ずかしくなってくるし、僕の趣味じゃないんだ。安心してくれ。
で、僕が聞きたいのは、ハルの事なんだ」
そう言えば、彼はハルの父親だった。俺の心を読んでいる間に、もしかしたら心配になって来てしまったのかもしれない。
「ハルが魔法を使えなくなった事は知ってるんだ。それは、僕だって誰かに話すつもりは無い。君もそうなんだろう?」
「はい。そうですけど……」
「ハルが魔法を使えなくなった事についてなんだけど……、君が知っている事を教えて欲しいんだ。何でも良い」
ユリウスさんは声を潜めながらも、少し穏やかさの無くなった声でそう言った。少し焦る様な、うわずった声が、妙に耳に残った。
この人は、確かにハルの父親なのだ。やっぱり、秘密を背負うには、二人では少なすぎる。
「親として、ハルの事は知っておきたいんだ。翠ちゃんが信用した、君を見込んでの頼み事だ。どうか、教えてくれないだろうか」
「本当に、誰にも言いませんか?」
さっき感じた違和感は、どこかへ行ってしまったようだった。俺はなぜかこの人にハルの事を教えなきゃいけない、と言う使命感の様な物に駆られて。
「ハルは……」
喋ってしまった。




