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空から魔女がふってきた!  作者: 杉並よしひと
第二章
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 しばらくすると、男性は両手にマグカップを持って、「お待たせ」と言いながらリビングへとやって来た。俺達の前にココアの入ったカップを置くと、彼は俺達と直角の位置にあるソファーに腰掛けた。

「さて。君、いきなりで悪いけど、名前を聞かせてくれるかな?」

 穏やかな声と、優しげな青い目が俺を捉える。俺はその目を吸い込まれる様に見返しながら、答えた。

「春日居大和です」

「ありがとう。僕は、ユリウス・ラインハルト。よろしく」

 彼はそう言って軽く頭を下げた。あわてて俺もそれに続く。

「翠ちゃん、彼はこの場にいても大丈夫だと、君は判断したんだね?」

「はい。と言うか、いるべきなので……」

 はっきりとは言えないだろう。翠が口ごもる理由が、俺にも十分解った。ハルの異常を知らせたく無いのだ。

「まあ、君がそう言うなら、そう考えたんだだろう。僕は何も言わないよ。

 じゃあ、本題に入ろう。仕事の話だったね。魔法使用者組合の武蔵野支部からは何て通知が来てるんだい?」

「仕事内容は囚人の確保だそうです。魔法を犯罪に使って、魔法使用者組合本部の独房に収監されていたんですけど、脱獄したらしいです」

「そうか……」

 彼、ユリウスさんはそう呟いて、ゆっくりと首を振った。

「こんな事、君たちがやる義理なんて、無いのにね」

「仕方ないですよ。魔法使いの数は少ないですから、地域的な警察は組織出来ませんし」

「看守はちゃんと見張ってるから、おまんまを食えてるって言うのにね。彼らがここまで追いかけてくれば良いんだ」

「でも、脱獄した囚人は、そんなに強い魔法の使い手でもないらしいですよ。ただ、一般人の方に魔法を使ったから、刑が少し重くなったみたいですが。何か特殊な術を使ったんじゃないかって言われてます」

「部分的に記憶を消す魔法は、使える人が少ないからねえ。刑の方を重くするしか無いんだろうけど、そこすらちゃんと出来ないと、意味が無いね」

 知らない言葉がぽんぽん飛び出してくる。頭の中で頑張って漢字変換をし、どうにかこうにか話題について行く。

 と、俺が言葉の解明に躍起になっていると、急に。

「ヤマト、本当は魔法使えたり、しない?」

 訳の解らない質問が飛んで来た。は?

「何言ってんだ、お前? 十年も一緒だったのに、まさか俺が魔法使えるとでも思ってるのか?」

「んなわけ無いでしょ。使えたら良かったのになあって言う話。うーん、ヤマトは役に立たないか」

 俺は何もしていないのに、勝手にぼろくそに言われている。くう、悔しい。

「まあ、魔法が使えないからこそ、出来る事だってあるさ」

 ユリウスさんがフォローに回ってくれた。ああ、その優しさが目にしみるぜ。

「それに引き換え、翠ときたらなあ……」

「何よ。私がどう思ったって関係ないじゃん」

「だって、あんな猫一匹にでっかいゴーレム一体で掛かって、結局負けてるじゃん」

「ゴーレムなんて呼び方、許さないから。あの子はエメちゃん。小さい頃からお世話になってるんだから、そんな呼び方しないで。

 それに、クラウゼヴィッツのばあさんの猫でしょ? 無駄に気が強いのよ。ばあさんに似て」

 俺達の醜い争いを見ていたユリウスさんが、おもむろに口を開いた。

「ヤマト君、これでも翠ちゃんは、土の精霊を使役する魔法使いとして、ちょっとした有名人なんだよ」

「そ、そうなんですか……。じゃあ、なんであんなに簡単にやられたんですか、猫一匹に」

「カタリーナさんは、今でこそ隠居してしまってあまり目立たないけど、若い頃は恐ろしい程凄い魔法を使ってたからなあ。僕の妻が互角だった位かな。とにかく、現役の魔法使いの中じゃ抜きん出てたね。

 今じゃ、同じ風魔法使いのハルだって、カタリーナさんには敵わないと思うよ」

 遠い目をして、ユリウスさんはそう言った。あれ? ユリウスさんの言葉、ちょっと引っ掛かる。

 しかし、翠はどこにも突っ込まず、話を違う所へと持って行く。

「とにかく、私の話はどうでも良いの! 本題に入りましょう。最近仕事が多すぎる事でしたよね、本題は」

「ああ、そうだね」

 ユリウスさんは、やはり鷹揚に頷いた。

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