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声に遅れて、急激に膨らんだ光のドームが俺達を包み込んだ。俺は咄嗟にポリバケツの蓋を被った。まるで光の猛獣が、俺を一飲みで飲み込もうとしているかの様だった。
「きゃあっ!」
ハルとみっちゃんの声が聞こえる。再び、地面が割れるかの様な縦揺れが、ゴミ捨て場を襲った。
直後、光に遅れて来た爆風で、俺のポリバケツは乱暴に横倒しにされた。俺はポリバケツから放り出され、冷たい地面に這いつくばる。
ハルは、大丈夫なんだろうか。ふと、そんな考えが頭をよぎる。
自分は少し離れた所にいるとはいえ、ここまで風が届いたと言う事は、俺の身にも危険が迫っていると言う事だ。そのまま、スタコラサッサと逃げ出しても良い。
なのに、本当に気付かぬうちに、俺はハルの事を思っていた。俺の記憶を奪うと言ってみたり、それでも俺に笑いかけてみたり、少ない記憶の中から、ハルの顔ばかりが浮かんで来た。
いや……。こんな時に浮かんでくるなんて、卑怯だろ……。
俺は地面に手をついて立ち上がる。冷たいアスファルトが、俺の目を覚ましてくれているようだった。
魔獣の方を見る。地面は枯れた川の跡の様に、まっすぐ抉られている。何が起きたのか解らないが、おそらく、魔獣の仕業だろう。
と、道の右端にハル、左端にはみっちゃんとおぼしき影が転がっている。左側にはゴーレムの欠片とおぼしき泥が積み重なり、こんもりとした山を作っている。ようするに、みっちゃんとゴーレムも、今のでやられてしまったのだ。
ちらりと左の影を確認した後、俺は急いで右端へ駆け寄り、影を覗き込んだ。衝撃を和らげる為か、頭を抱えてうずくまっていて、あの金色の髪も、白いほっぺたも見えない。
「ハル」
「あ、ヤマト……?」
小さな、怯えた様な声が聞こえる。俺はその場にしゃがみ込み、三角帽子と黒いマントの隙間から見える蒼い瞳を、じっと見つめた。
「大丈夫か? 怪我は無いか?」
「なんであんたがここにいるのよ。隠れとけって言ったじゃない」
俺を睨みつける目に、鋭さは無かった。なんとかして、不安と戦おうとしているようだった。
俺は、そっとその瞳に微笑みかける。巧くできたかは自身が無いけれど。
「お前は逃げろ」
「みっちゃんがやられちゃったのに、私だけ逃げるなんて、無理」
「いいから」
俺は怒っている。あんな理不尽なルールを決めた魔法使いの奴らに、俺はムカついている。
でも、それはハルが悪いわけじゃない。ハルが魔獣にやられて良いなんて、これっぽっちも思っていない。第一、そんな事になったら、寝覚めが悪いじゃないか。
「お前は逃げてろ。いいな?」
「ここにいる」
ハルは拗ねた様にそう言い放った。
「魔法が使えなくても、ヤマトがここに残るなら、私も残らなきゃ。でしょ?」
ハルの瞳が、「でしょ?」と俺の目に問いかけてくる。許しを請う様な、逆に教え諭される様な、変な気分になる。
「ああ」
俺はぶっきらぼうにそう答えて、立ち上がった。抉られた道の脇に立ち、未だにゆらゆらと大きな光をともらせている魔獣へ向き合った。
深く息を吸い、大きく息を吐き出す。すっかり冷えきった空気が、頭を冴えさせて行く。
さあ、来い。
俺に何ができるか解らんが、しがみつくくらいの事はしてみせよう。そう思い、両手を広げ、腰を落とす。もしかしたら吹っ飛ばされるかも知れない。
さあ、来い!




