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「お前、魔法使えないのに、あんなのと一緒になって戦うのか?」
「うん。みっちゃんは土の精霊を使役する魔法使いだからね。あれはゴーレムって言って、魔法使いの魔力を使って動く泥人形なの。あのゴーレムは見慣れてるし、みっちゃんも扱うの巧いから、大丈夫」
「そうか。じゃあ、まあ、ごまかしきれなくなったら、俺の所に来いよ。それまでは俺、ここに隠れてるから」
俺はそう言って、バケツの蓋を被って、目だけを隙間から出した。ハルは「解った」とだけ言って、マントとチェックのスカートを翻して、一人と一体の許へと向かった。ハルの足音を聞いて、肩までの黒髪を靡かせながら、女の子は振り返った。
「みっちゃん、今どんな状況?」
「あ、ハルちゃん。今は、ちょっとまずいかな。あいつ、結構魔力溜め込んでるみたいで、迂闊に近付くと、色々壊れそう」
漏れ聴こえた会話が、ただ事じゃない。「色々」って言葉が何を指すのか、考えれば考える程怖い。二人と一体の向こう側で、夜の暗闇に幾度も光が放たれる。絶対、魔獣が何かしてるのだ。
俺はバケツと蓋の間から、勇敢な二人の少女の背中を見つめ続けた。いやあ、俺って情けない。
「あのさ、今日ちょっと魔法の調子が悪くてさ、今日はみっちゃんメインで、お願い」
「大丈夫? 最近は一段と冷えるし、風邪引いてない?」
「大丈夫だって。ちょっとタッチが悪いだけだから」
何だ。両者の会話の意味する所が、微妙に解らない。風邪と魔法の調子って、関係あるのか? そもそも魔法に調子の善し悪しなんてあるのか?
ってか、最後のハルのはなんだ。「タッチが悪い」って、お前はバスケットボール選手か。
でも、魔法が使えない事をこうやってごまかすのは、例え一時しのぎだとしても、堅実なやり方なのかも知れない。
などと思っていたら……。
「来るよ!」
みっちゃんの鋭い声が飛んだ。俺は少し身をかがめ、蓋をさっきよりも低くした。
その瞬間、ゴーレムの向こう側で光が弾け、少し遅れて、全てを吹き飛ばすかの様な風が吹いた。
「行け! エメちゃん!」
再びみっちゃんの鋭い声がとび、その声に答える様に、傍らの大きな泥人形がゆったりと動き始めた。妙に、感情が存在している様な動きで、ゴーレムは光の許へと歩き出した。
ゴーレムはしばらく頼もしい足取りで歩いていたが、急にその歩みを止めた。ん? 何が起きたんだ?
と、その瞬間、再び光が弾けた。さっきよりも大きく、激しく光が撒き散り、俺の所に届いた風も、さっきとは比べ物にならない程強くなった。
ハルは、と見ると、強い風に飛ばされない様に、つま先を踏ん張って風に向かっている。いつもはどうだったのか解らない。ただ魔法が使えない今、吹き荒れる風に木の葉の様に舞って行ってしまいそうだった。
「地よ、疾れ!」
みっちゃんの声が飛ぶ。と、みっちゃんの前後の地面に、うねうねと荒れ狂う亀裂が入り、それは止まる事を知らずに走り続けた。




