11/80
10
「大和、どこいくの? もうこんな時間よ」
こっそり出掛けようとした俺を、母親が呼び止めた。被りかけていたトレーナーから頭を出し、ちらりとリビングを見やる。母親と目が合った。ああ、バレてしまったか。
「ちょっとコンビニ行ってくる。ノート足りなくなったからさ」
「そう」
母親の納得した様な一言に、俺は安心してドアを開けた。が。
「じゃあ、なんかしょっぱいもの買って来てくれない?」
「りょーかい」
あの人、自分で「こんな時間よ」とか言いながら、「こんな時間」からまた酒を飲むつもりなのだ。肝臓とか、大丈夫なのだろうか。
とにかく、母親になにか感づかれないうちに、素早く家を出る。暗くなった住宅街を抜け、ハルとの約束の場所へと向かった。
母親は酒を気持ち良く飲めればそれで何も言わない。俺は家を出てすぐそこのコンビニで、魚肉ソーセージを買った。ポケットに突っ込んで、約束の場所へと歩みを早めた。




