取引
領主の居場所は道中で人に聞いたらすぐに分かった。
この街で一番高く、一番デカイ屋敷。
それはリーシェリアの中心に豪邸が立ち並ぶ場所にあった。
まるでその建物の存在を誇示するかのように、他の豪邸とは一回りも二回りも大きく、そして豪華だった。
しかし、俺はその富豪達が住む豪邸の並ぶ場所に近付く事すら出来ずにいた。
その手前には大きな関所があり、立ち入るには検問を通らなければならない。
そこの衛兵に中に入れてもらうよう頼んだが、俺の話など聞く耳を持たなかった。
俺は関所から左右に伸びている柵を飛びこえようかとも思ったが、至る所に衛兵が巡回しており、そんな事をすればすぐに彼等が駆けつけてくるだろう。
既にほんの少し騒ぎを起こしかけている俺は、これ以上無闇に騒ぎを同じたくはなかった。
起こすにしても、まずはアーシェとシェリーを奪還してからなのだが……。
関所に背を向けてどうするかと考えていた時、一人の青年が近付いてくる。
それは深い紺色と煤けたような深い紫の鎧を纏った青年だった。
その両目は黒い黒いバンダナが巻かれて隠れている。
青い髪は短く、顔には切り傷が顔の至る所に刻まれている。
「リーカス狩猟団の溜まり場を襲撃したハーフエルフ、とは君のことか?」
その青年はゆっくりと近付きながら俺に問いかける。
目をバンダナで覆っているのに、足取りはしっかりしている。
「あぁ、それは俺の事だな。
連中がエルフを拉致するような外道だから、それなりの制裁を加えただけだ」
俺がそう答えると青年は足を止める。
「制裁とは大きく出たな。
一体何様のつもりだ?
どこから来たのか知らないが、この街の在り方も、この街の猛者が誰かも知らないらしい」
そう言って青年は腰に差してあるレイピアとエストックを両手にそれぞれ掴んで引き抜く。
「リーカス狩猟団に手を出した事の代償は、高くつくぞ」
青年が地面を駆ける。
瞬時に俺との間合いを詰めるとエストックの鋭い一突きが俺へと襲いかかる。
それを俺はバックステップで躱し、すぐに風の矢を三本放つ。
その矢は青年のもう片方のレイピアで全て弾かれる。
「お前はリーカス狩猟団の何なんだ?
ひょっとして頭が自らやってきたか?」
俺は問いかけながら矢を続けて放つが、やはり全て弾かれる。
コイツ……目が見えていないはずなのに正確に矢を弾いている。
なら、魔力感知やその類の感知で俺の位置や矢の軌道を察知してるのか?
「私はリーカス狩猟団の団長を務めているものだ。
私の事も知らずに狩猟団に喧嘩を売るとは、ふざけた奴だ」
青年はそう言ってレイピアを俺に向ける。
「“グラシエス・ストライク”」
青年が詠唱すると、レイピアの先端から鋭い氷が飛び出してくる。
それはレイピアの刃が伸びたかのようだった。
あまりの速さに反応が遅れ、俺の肩を僅かに掠める。
「つッ!!」
小さく痛みに呻き、左肩を見ると凍り始めていた。
それに驚いていると、次の瞬間にエストックの突きが迫ってきた。
直ぐに身を躱したが、直後にレイピアの追撃が俺に襲いかかり、腕と足が貫かれる。
「ッいってぇっ!“ヴェントス・ウィスティオ”!」
俺は痛みに声を上げながらも詠唱し、風を纏って距離を開く。
疾風の加護と遜色ない速度で一気に距離を離し、青年を見る。
すると、その姿が氷の欠片だけを残して掻き消える。
次の瞬間、真後ろから冷気を感じ、振り返る前にエストックが後ろから右肩を貫いた。
今度は右肩が凍り始める。
「なかなか器用な事が出来るのだな。
しかし、速さで私を上回ろうなど浅はか過ぎるぞ」
俺の真後ろで青年はそう言うと、エストックを振り下ろし、俺の身体は地面に叩きつけられる。
その衝撃で両肩の氷が砕けるが、凍傷によって感覚が無くなっている。
や、ヤバイ……。
腕が動かねぇ!
「さて、その命、貰い受けるぞ」
そう言ってレイピアを構える青年。
その真後ろにズドンっと大きな音を立てて巨大な影が着地する。
その影の姿は一人の巨漢たった。
ボサボサの髪は乱れて、上半身は裸。
下半身には動物の毛皮の腰巻をしているだけのオーガのような姿。
身体つきはとても大きく、身長は2mは超えているだろう。
太い腕には鋭く長い三本刃の鋼の爪が左右に着けられている。
「リーカスっ!
そいつぁ俺の獲物でもあるんだ!
独り占めにはさせねぇぞ!」
乱暴な口調で青年、リーカスに言い放つ巨漢。
「ディラン。
悪いが私が先約だ。
遅れた君の出る幕ではないよ」
そう言ってレイピアを振り抜いたリーカスだが、その僅かな隙に身体の自由を戻した俺は身体を翻し、二人から距離をとって弓を構える。
レイピアは地面に突き刺さり、舌打ちしたリーカスは直ぐにそれを引き抜く。
「君の邪魔が無ければ終わっていたものを」
リーカスはディランを睨みつけるが、ディランはグハハハと笑う。
「良いじゃねえか。
まだ元気なら楽しめそうだ」
ディランはそう言って左右の爪を打ち鳴らす。
……呼び合ってる名前から察するに、リーカス狩猟団とディラン盗賊団の頭二人がやってきたって所か。
こりゃ、いよいよヤバそうだ。
両肩の感覚は徐々に戻ってきている。
しかし、動きは少し悪い。
リーカスはさっき俺の背後にいきなり現れる時、あいつの身体が人型の氷になっていた。
つまり、あれは自分の身体を氷の欠片に変え、散らし、再度それを集めて移動する魔法なのだろう。
それは口で説明する以上に高度な魔法だ。
なんせ自分の身体が一時とは言え粉々になるのだ。
それでも再度集束するまで意識を保てるのは、移動が終わるまでの術式が事前に組まれているから。
つまり、集まり出した欠片の場所に必ずリーカスは現れる。
ならば、風魔法で擬似的な生体感知を作り出し、その欠片の動きを捉えてやる。
俺は目を閉じで詠唱する。
「“ヴェントス・スパティウム”」
俺が詠唱すると、周囲に風か広がっていく。
魔法というのは使い方次第で様々な効果をもたらせる事が出来る。
これは、メーティスと魔法を学んでわかった事だ。
魔法lv.1の攻撃魔法ならば、火の玉や風の矢くらいしか作れない。
それをただ放つだけなら大した威力にも脅威にもならないが、矢を弓で放つだけでも威力も速度も変わる。
更に、矢に回転を加えて貫通力をあげたり、風の矢を変質させ、風魔法を付与させれば暴風を巻き起こしたりと工夫次第で様々な効果を発動できる。
今の俺が詠唱した魔法も、普通ならば遠距離武器から身を守る所謂“矢避け”の魔法である。
しかし、少しその術式を少し変えればこの魔法の空間内における動的物を感知するという事も可能になる。
例え相手が小さな欠片になって動いても、その姿が現れる時にはこの感知に引っかかる。
リーカスの姿が掻き消え、風魔法の結界の感知に引っかかった場所に俺は飛燕を放つ。
リーカスは目の前に迫る燕の姿に驚き、慌ててレイピアで弾くが、被矢した瞬間にリーカスの身体中をカマイタチが襲いかかる。
これもまた、変質した矢の効果である。
ディランはというと、急に姿を消したかと思ったが、風の感知によって動きは手に取るようにわかる。
真っ直ぐ俺へと直進してくるその姿は、目では確認出来なかった。
何かしらのスキルか、魔法の効果だろうか?
見えない姿に飛燕を放つと、ディランは慌ててそれを躱すが、飛燕は宙返りしてディランの真後ろから襲いかかる。
この追尾性能こそ、飛燕の真骨頂である。
ディランの舌打ちが響いて、風の燕を弾こうとするも、飛燕が急に四つに分かれて、四方からディランを切り裂いていく。
「クソがっ!小賢しい真似を!」
姿の見えないディランがそう悪態をついているが、切り裂かれた事など関係なしにこちらへと向かってくる。
俺はディランの足元に矢を突き刺すと、その場所に巨大な竜巻が出来上がる。
ディランは高く巻き上げられ、勢いよく竜巻から弾き出されると、建物の外壁に打ち付けられた。
「この程度っ!」
身体から血を流しているリーカスがまた氷の欠片を残して搔き消えると、俺のすぐ真後ろに移動してきた。
場所はわかっても、反撃か僅かに遅れる。
エストックが俺の脇腹に深々と突き刺さったが、俺もお返しとばかりにリーカスの鳩尾に拳を放ち、更に詠唱する。
「“ヴェントス・プロケーラ”ッ!」
吹き荒れる暴風。
それは打ち付けた拳を中心に竜巻が巻き起こり、リーカスの身体を吹き飛ばす。
あまりの衝撃と痛みに回避行動が出来ないリーカスはそのまま建物の外壁に打ち付けられ、その場に膝をつく。
ディランもようやく姿を目でも確認できるようになり、こちらも片膝をついている。
俺は二人に挟まれる形になっており、二人を交互に弓矢で狙い、警戒する。
すると、まずはディランから立ち上がり、俺を睨みつける。
口からは血が流れていた。
体中に切り傷があるようで、腕や足からも血が滴り落ちている。
次いでリーカスも立ち上がる。
鎧はトラックにでもぶつかったかのように大きく凹み、周りの服も破けている。
恐らく、肋骨がいく本かもっていったはずだ。
しかし、その瞳からは闘志がハッキリと見て取れる。
俺もどうしたものかと考えていると、凛とした声が響いた。
「それまでだっ!
お前達ら武器を収めよっ!!」
その声の主は真紅と漆黒を合わせたような色合いのドレスを身に纏った女性だった。
そのドレスは胸元が大きく開き、豊満な胸をより強調させている。
括れは細く、スラリとした手足は真っ白で、その肌がドレスから伸びている。
真っ赤な髪をしたその女性が俺たちの視線が集まるとニヤリと笑って、続けた。
「なかなか面白い見世物だったぞ。
だが、これ以上は止めておけ。
街に被害が出てはかなわん。
街の人達も騒ぎを聞きつけてこんなに集まっているぞ」
そう言って銀色の扇を開いて扇ぎ始める。
いつの間にか俺たちの周りは人集りが出来ていた。
「スカーレット様っ」
リーカスがそう言うと、一度俺を強く睨んで、スカーレットに向かって傅く。
「おいおい、お嬢!
やられっ放しで武器を収めろとかねぇだろ!
俺は最後までやらせて……」
ディランがスカーレットに食ってかかるが、その言葉は途中で止められる。
ディランの首元に大きな鎌の刃が当てられていたからだ。
その大鎌の持ち主はゴスロリの格好をした少女だった。
刃をディランに押し当て、ディランに囁く。
「スカーレット様が武器を収めろって言ったんだから言うこと聞きなさいよ。
その首、跳ねられたいの?」
ディランは動きを止め、両手をゆっくりと下げた。
俺はスカーレットと呼ばれている女性を見る。
ドレスがあまりにも際どい形をしている為、視線のやり場に困る。
俺が視線を逸らすと、スカーレットの方から近付いてくる。
「お前が、今日至る所で問題を起こしているハーフエルフか。
クロムウェルと一戦交え、その後に冒険者ギルドのすぐ近くでジグル達を伸した後、ジーグの酒場を襲撃。
終いにはここでリーカスとディラン相手に派手な戦いを繰り広げるとは。
全く、愉快な奴だ」
そう言って銀の扇をパタリと閉じて、俺の顎に添える。
「ふむ……。
顔立ちは悪くない。
実力も及第点だな。
殺すには惜しい。
おい、リーカス、ディラン。
お前らがコイツに固執してる理由は知っているが、コイツは私が貰い受ける」
スカーレットは俺を見つめたまま声を上げる。
それを聞いたリーカスは顔をしかめるが、わかりました、と承諾する。
「おいおい!ふざけんなよ、お嬢!
横からしゃしゃり出て獲物を掻っ攫うなんて真似してんじゃねぇよ!」
ディランが大声を上げて抗議するが、ゴスロリ少女が直ぐ様ディランを組み伏せ、「メッ!!」と叱りつける。
この少女も大概ヤバイ奴みたいだ。
「悪いが、あんたの物になるつもりはない。
勝手に人を所有物扱いしないでくれよ」
俺はスカーレットを真っ直ぐ見てそう言った。
それを聞いたスカーレットはクスクスと笑う。
「断るか?
ならば、貴様は衛兵に突き出して牢獄行きだな。
攫ったエルフ二人とも、もう会うことも出来まい。
それで構わんのだな?」
「攫った……だと?
お前何か知ってんのか!?」
俺がスカーレットに掴みかかろうとすると、ゴスロリ少女が俺の鼻先に斧槍を向けていた。
「お兄さん。
馬鹿な真似は止めなよ。
早死にしたくないだろ?」
このゴスロリ少女、どっから出てきた?
そもそも、ディランを組み伏せてた筈じゃ?
俺がディランの方を振り返ると、そこにもゴスロリ少女は存在していた。
大鎌を肩に背負って俺を見て、微笑んでいる。
そして、目の前にもゴスロリ少女。
見た目も格好も瓜二つだが、持ってる獲物だけが違う。
柄は長く、その切っ尖は鋭い槍の刃になっており、その根元には大きな斧が付いている。
これは所謂、ハルバードって奴か?
しかし、こんな小柄な子供が扱うには無理があんだろ。
「武器の迫力には驚いたけど、そんな長くて重そうなもん、振り回すだけでも一苦労だろ?」
俺が目の前のゴスロリ少女を見下しながらそう言うと、ゴスロリ少女は頬を膨らませてハルバードをブンブン振り回す。
「あたしにとってはハルルは腕と一緒だから!
扱いに困った事なんてないから!」
そう言って再度俺の鼻先で切っ尖をピタリと止める。
見事なもんだ。
「わかったよ。
ネルルでもメルルでも何でもいいっつうの。
とにかく、俺は後ろのその色っぽいお姉さんに話があるんだよ」
そう言うと、ゴスロリ少女はゆっくりハルバードを下ろして、「ネルルでもメルルでもない!ハルルっ!」と抗議してくるが、それを無視する。
「あんた、エルフについて何か知ってるのか?」
俺はスカーレットに尋ねる。
「知ってるも何も、私が攫うように命じたからな」
あっけらかんと言い放つスカーレット。
「お前が……!?
何の為にエルフを攫うんだ!二人は何処にいる!?」
今すぐにでも掴みかかりたいが、目の前のゴスロリ少女がそれを許さない。
俺はその場で怒りを込めた眼差しをスカーレットに送る。
「その辺りも含めて、道中で説明するさ。
馬車に乗るが良い」
そう言ってスカーレットは俺達に背を向けて一台の馬車に乗り込む。
ゴスロリ少女二人も続いて、馬車の前で俺を待つ。
俺もその馬車へと入ると、ゴスロリ少女も入って戸が閉まる。
馬車の中は四人が入っても十分な広さだった。
俺の隣にはゴスロリ少女二人が左右に座り、対面にスカーレットが座っている。
スカーレットは扇を仰ぎながら俺をジッと見つめている。
「さっきの話の続きをしたい。
あんたがエルフの人攫いの親玉なのか?」
俺は睨みながら聞くと、スカーレットは笑い出す。
「親玉ときたか。
そうよな、親玉という表現もあながち間違ってはおらんが、人攫いをエルフに限定し始めたのはここ数年からだ」
「何の為にそんなことをする!?」
俺は苛立ちを隠しきれず、思わず叫んでしまう。
しかし、スカーレットは涼しい顔をしている。
「何の為、と問われれば金の為と答えるしかないがな。
とは言え、本当の目的は金というよりは利権だな」
俺はそれを聞いて首を傾げる。
「つまりだな。
ある伯爵が持っている利権を剥奪したいのだ。
そいつは街の商業を取り仕切っている男で、そこそこ頭も切れるのだが、息子と妻を甘やかし過ぎてな。
妻も気儘に金を使い、息子はエルフの女性を好んで散財してるらしい」
スカーレットは外を眺めながらそう言った。
「私はこれでもここの領主だ。
勝手気儘に金をばら撒かれると、厄介な連中まで力を伸ばすようになる。
そうならないよう、ある程度コントロールせねばならん。
金な動きと、人の動きをな」
わかるか?と俺を見てスカーレットは言ってきた。
うーん、わかるような、わからないような。
「……だが、人を攫うのは犯罪じゃねぇか」
その本質は変わらない、と俺は睨む。
「確かに、人攫いは犯罪だな。
しかし、これでも昔に比べれば随分マシなのだぞ?
エルフは高額で取引されるが故に未だに人攫いの的になっているが、一般の人間への被害は減少傾向にある。
ゼロにはならんのは、奴隷市場があるからな。
需要があるから、供給するのだ」
「領主自ら犯罪行為をするのは大問題だろうが」
スカーレットが未だに悪びれない事が腹立たしい。
するとスカーレットはフッと失笑する。
「お前は聖人でも目指してるのか?
それに、私は今回のエルフの人攫いで終わりにするつもりだ。
私がこのような手段に出ねば、その息子は延々とエルフを付け狙うぞ。
その方が望ましかったか?」
俺を見返してスカーレットは言う。
「エルフへの人攫いは……終わりになるのか?」
「さぁな。
私は少なくともこれ以上エルフを狙う事はしない。
目的は果たせたからな。
人攫いも、これ以上被害を多くし過ぎればいずれ何処かで火種が出来る。
お前のようにな。
それが大火になる前に、止めさせるさ」
俺はそれを聞いて、こいつを何処まで信用出来るのか、と思った。
必要に迫られればまたコイツは人攫いをするんじゃないだろうか?
「それに、お前は今日捕まったエルフを取り返したいのだろう?」
「あぁ、その通りだ。
二人は無事なんだろうな?」
「無事のはずだぞ。
一応、下手に傷つけんよう私の部下にも指示してある。
それより、お前はどうやって取り戻すつもりだ?
既にあの二人は商品だ。
取引が成立するまでは、商品として私はお前に渡すつもりはない」
強い眼光で俺を見るスカーレット。
その迫力は少し上の歳とは思えない程だ。
「力尽くでも、奪い返す」
「そうなれば、お前はやはり犯罪者として牢獄行きだな。
今、ここで取り押さえるべきか?」
スカーレットがそう言うと、俺の隣に座ってるゴスロリ少女二人がナイフを俺の首すじにピタリと付けた。
「……やれるもんなら、やってみるか?」
俺はそれに動じずスカーレットに言い放つ。
スカーレットはそれを見て品定めするように俺を見る。
「ふむ、やはりお前はなかなか興味深い。
私としても、この後の取引はかなり大事なのだ。
お前に暴れられてご破算になるのは御免だ。
そうならんようにするつもりだが、なかなかどうしてお前は底が見えん。
ならば、一つ私と取引せんか?」
スカーレットは問いかける。
「どんな取引だよ」
「お前の望むエルフ二人は解放させよう。
代わりに、お前をもらう。
私の僕になるのなら、エルフ二人は解放してやる」
扇で仰ぎながらスカーレットはそう言って、どうする?と再び問いかける。
「私の僕となって安全に二人を解放させるか。
お前が好きに暴れて取り押さえられるか。
後者の場合はエルフ二人の身の安全は保障出来ん。
お前を捕まえた後、エルフ達はどこか遠い所に売り飛ばされるか、あの馬鹿息子のモノになったままになるか。
さて、お前はとうするんだ?」
俺は……。
しばらく俯いて悩み、そして顔を上げて決断する。
「約束しろ。
二人の身の安全と解放。
そして今後手出しはしないと、約束しろ」
約束できるなら、俺は……。




