18話 食器は万能です
体長は戻ってきましたが・・・
あぁ、正月休みが欲しいです・・・・・
でも書いちゃう!
立ち並ぶ建物は過ぎた時代を感じられるほど朽ち、地面は割れた石畳の隙間から雑草が生い茂る。
スラム外にある平民が住む住居と比べ全ての建物が高く、最低でも3階建てだ。
遮られた日光と朽ちた光景は、どこか寂し気な雰囲気が染みついている。
そんな空気をかき分ける俺達はまさしくよそ者なのだろうな。
「やべぇよ、あいつら!ドンドン殺気が強くなってくんだけど!?」
「ん~、煽りすぎたか?」
「ハァッハァッ・・・・・で、ですが動きが単調になりました。旦那様のおかげでしょう」
ディランは嵐のように襲い掛かる攻撃にギャーギャーいいながら逃げ惑う。
バリスたちから少しでも襲撃者たちを引き付けようと奴らのボスであろう《狂獣》を貶したが、まさかここまで効果があるとは。
おっと、ラミスがそろそろ体力の限界だな。
「ディー、ラミスを背負ってやってくれ」
「任せとけ!ほら爺さん、来い!」
「お、お手数おかけします」
飛び乗ったラミスの動きは俊敏だが、乗ったとたんに汗が滝のように流れた。
いくらオンブルに鍛えてもらったとしてもやはり年齢的に無理があったか。
その証拠に共に走る若いメイド数人は息が切れていない。
「旦那様、手持ちの武器が少なくなってまいりました!」
「剣を渡すから盾代わりに使え!慣れない武器で戦おうとするなよ」
ラミスと入れ替わ代わりで配置に付いたメイドの一人に《無限収納》から鉄製の剣を渡す。
これで約半数が投擲具から武器を持ち換えたことになったが、元々仕留めることが目的ではないので問題はない。
「???」
そんな中、ディーは攻撃を弾きながら眉をひそめる。
どうやら彼は俺の狙いに気づいたようだが、他の者は気づいていないのか気にしていないのか、それとも攻防に精一杯か、誰もそのような素ぶりは見せない。
だがしばらくすれば、ディーの疑問は全員が共通するものとなった。
「気のせいでしょうか・・・・・最初より防御が楽になった気がします」
「お前もか?俺も腕のしびれがマシになってきた気がするんだ」
使用人たちは変化に疑問に思い始めたがディーのように戸惑うことは少なそうだ。
だがこれはディーが未熟というわけではない。
本来命のやり取りをするならば良くも悪くも変化があれば身構えるものだ。
金ランク冒険者として高難易度の依頼をこなしてきただけはあるな。
「やっぱりか。レイヌさん、こうなること見越して走ってきたのかよ」
「もちろんだ。闇雲に逃げても被害が重くなるだけだからな」
「ど、どういうことでしょうか?ディラン様、爺たちにいったい何が起きているのですか」
「爺さん回り見て見ろよ。周りの建物がだんだん高くなってきてるだろ?」
「そういえば・・・・・旦那様はこれを狙って?」
「だけどどうやってデカい建物が多い場所までの道知って・・・・あぁ、《何とか地図》ってスキルか」
「正解だ、あいつらは屋根を伝って移動してるからな、高くなればこっちまでの距離も長くなる。あと《脳内地図》だ!」
上を見れば足元が御留守になる。
だから奴らは上からの攻撃が多かったんだが、これで作戦は破綻しただろう。
まさか向こうもこちらにスラム街の構造が筒抜けとは思ってなかっただろうしな。
「さて、ここでもう一工夫だ。ディーとラミス、あそこの青い屋根の建物に全員で逃げ込むぞ」
「ちょっ!?あそこにか!」
「旦那様、遠目ですがこの場に居る全員が入れるとは思えませんが・・・」
「大丈夫だって。一工夫って言っただろ?」
「「???」」
二人の困惑は強いな。
まぁ、せっかく地の利を奪えそうなのに逃げ道の無い建物に入るんだからしょうがないか。
「まっいいか。レイヌさんの指示に従うぜ」
「あまり思考放棄は褒められないぞ?」
「違います旦那様。我々は旦那様を信頼しているのです」
・・・正面から言われると照れるな。
ラミスはそう言うとディーの背中から降りて使用人たちに一言言い渡した。
旦那様を信じなさい。
それだけで彼らは不安顔を輝かせた。
「信頼されてんなレイヌさん」
「そうだな。なら盛大に答えるか!」
そして目的の場所に着くや否や、俺は90度方向転換をして建物へと飛び込んだ。
既に知っている二人は迷わず付いてくることは分かっていたが、他の使用人たち全員が立ち止まらずについてくるとは。
建物内は広く、細かな木片が散らばり荒れ放題だが構造を見るとおそらく酒場だったのだろう。
俺はそのまま走りカウンターらしき場所を飛び越え更に奥へと進む。
割れた壁を潜ると壊れて錆びた魔道具式の調理器具が並んでいたのでやはりここは酒場か料理屋だったみたいだ。
いや、ここに来た理由は別に腹が減ったわけではないぞ?
確かに俺の目的はこの調理室らしき場所だが、目当てはこの下だ。
「レイヌさん、それなんだ?」
部屋の隅へと移動、若干全体と比べて色の違う床を探り、隠れた取っ手を引くとそこには地下へと延びる階段が続いていた。
「スキルで調べてた時たまたま見つけたんだ。あいつらは俺たちがスラムに詳しくないと思っているから隠れてもバレないだろ」
「実際に旦那様がいなければ迷っていましたから見当違いではないですね。それでは爺たちはこの中に?」
「中は部屋じゃなくて通路だ。俺は足止めで時間を稼ぐからみんな降りてくれ」
「ちょっと待てよ!さすがに一人にはできねぇよ、俺も一緒だ!」
残る宣言にディーもラミスも講義をする。
「待て待て。ディー、危険なのはここだけじゃなくてこの先もだ。何があるかわからんのにラミス達だけ向かわせるのは心配なんだよ」
「旦那様、爺たちもオンブル様の指導を受けそれなりにではありますが・・・」
「ダメだ、多少訓練を受けたとしても経験が圧倒的に足りない。だからこそ金ランクであり対魔物ではあるが実戦経験の豊富なディーに守ってもらいたいんだ」
遠回しにだが足手まといと言われたラミスは手をきつく握り締まる。
だが分かって欲しい、お前は本来戦いに身を置く立場ではないんだ。
急に手に入った力に全能感があったようだが、それで死んでほしくはない。
「さぁ時間がない、抵抗するなら放り投げてでも行ってもらうぞ」
「・・・・わかりました。ですが爺が最後から二番目に降りさせていただきます。仕える主を置き去りにすることは、使用人の統括として出来ぬ矜持でございますから」
「ラミス・・・・・」
「それに他のみなも爺がこの場にいると安心して先へ進めますから、ご了承してください」
ラミスにしかできない役割を盾にしてきたか・・・・・しょうがないな。
俺はその提案を受け入れることにし(というよりも本当にここから動きそうもなかった)、後からやってきた使用人たちを地下へと降りさせた。
彼らも俺が降りないことに戸惑ったが、ラミスを見てスムーズに行動してくれた。
そしてとうとう・・・・・・
「てめぇら、どこでこの道知りやがった!!」
残り数人がまだ降りない中、俺達が入ってきたところと反対の壁が大きく吹き飛び、襲撃者改め《狂獣》の部下たちが押し入ってきた。
だが先ほどまでとは違い、先陣を切って叫んだ奴は黒ローブに身を包んでおらず、派手な重鎧を着こんでいる。
ツルリと剃ったであろう頭が眩しい。
まだ何か言おうとする大男と雪崩れ込もうとする黒ローブたちだが、残っている使用人一同が投擲したカトラリーで一時的に進行を阻止される。
すかさず俺は数本の小瓶を部屋の周囲に投げる。
即座に刺激臭が鼻を貫く衝撃にラミス達も手を止めて息を止めた。
「旦那様、これはもしや・・・」
「今のうちに降りろ。ちょっとばかし熱くなるからな」
投げた小瓶の中身は《紅蓮の迷宮》最下層で手に入れた可燃液だ。
アマナさんのところにおすそ分けした時、どれほどの威力か実験したが特段激しく燃え上がるといった効果はなかった。
だが、引火した炎は簡単には消えず、キッカリ一時間燃え続けた。
足止めにはもってこいだろう。
「《浮漂焔》」
小さいが火種の多い《浮漂焔》が可燃液に次々と降りる。
外に残っている使用人はいないし上階にも人の気配はない。
これで全員逃げる時間が—――――
「いけません旦那様!魔法の火は引火いたしません!」
「何?」
・・・・どうやら物事はうまくいかないようだ。
降り注いだはずの《浮漂焔》はなぜか燃え広がらず、液の上でユラユラと揺らめいている。
どういうことだ?
まさか魔法の理まで歪んでいるのか?
だが魔法スキルの一部はSSという上級に達している。
既存の魔法技術を調べ解読し得たというのに、まだ何かがあるというのか!!
「なんだ?なんも起きねぇのかよ!」
黒ローブたちにいつの間にか守られていた大男は、イラつきながら長杖を構える。
あのなりで魔法使いなのか・・・・じゃなくて!
俺は急いで火魔法を放とうとしたが、一足早く可燃液に火が回った。
「旦那様、火打石代わりにカトラリーを使用しました。お叱りは後程」
振り返ると既にほとんどの使用人は地下へと降りており、ラミスと一人のバトラーが頭を下げている。
バトラーの手元にはナイフの残骸が握られているので彼が火をつけたようだ。
「かまわないよ、むしろ戻ったら何でも好きな物買ってやる!」
俺の言葉に二人はほっと息を吐く。
使用人としては意図して家財を壊すことはいけないと前にラミスが言っていたがそのためか?
でもお前たちさっきまで投げまくってたよな?
「今のうちに逃げるぞ」
「「かしこまりました」」
二人を階段へと押し込み、俺も後に続いた。
隠し扉を閉める際に罠をいくつも仕掛けたので追ってくることも困難だろう。
どうやら奴らは魔法使いが多いらしいから魔力妨害で脅威は半減するが、こちらも魔法系の罠も足止めもなるべく使わないようにしなければならないのが面倒だ。
階段を降り切ると何人かの使用人たちが待機していた。
皆に「よくぞご無事で」と無事を喜ばれたが、この場を早く離れようと背を押して急がせた。
暗い地下は時間感覚を狂わせるが、今までの攻撃がない分十分に思考を深めることができた。
なぜあいつらのステータスは読めなかった?
理はどこまで歪んでいるんだ?
更にはこちらを見ているはずのルルからの連絡もない。
共通することはどれも神器《宝珠・ファトムゲンマ》を介しているといったところだけだが。
まさか神器になにか起こったわけじゃないよな?
大男 「俺もお前も名前が出ねぇな。結構立ち位置重要そうだけど」
団長 「ふんっ!お前は噛ませ犬の予定だからそもそも名前がないのだ」
己龍 (言えない・・・・実は団長さんも名前考えてない事(汗))




