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創造主長様のお仕事  作者: 己龍
第3章 貴族+家族+愛情=???
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9話 一難去ってまた一難の兆し 後編

既に日は高くなっているが、いまだ三人での話し合いが続いていた。


少し喉が渇いたが、使用人をこの場に居させるわけにもいかないので俺が三人分を入れる。


赤茶の香りが部屋に漂い、若干暗くなった雰囲気を柔らかくさせていく。



「さて、次は我の話をしようか。我の内容はレイのパーティーメンバーであるリングラット・ラブリカが売られていた奴隷商についてだ」


「殿下自ら話すとなると、やはり違法商人でしたか」



彼女と会ったときからおかしいとは思っていた。


あの時見た街並みを見るに、リンのような扱いの奴隷は全員が犯罪奴隷だった。


そもそも奴隷に関しては厳しい法が定められており、奴隷になる対象は犯罪者と借金を抱えた者、そして敗戦者の三つのみとされているらしい。


犯罪の中でも一番重い罪を犯した者が受ける刑であり、過去には戦争、現在では街の防衛時に盾として使われる。


更に扱いにおいても一番悪く、死刑よりも重い罰だけに人権はない。


借金奴隷は名前の通り借金を抱え破産した者が身売りも兼ねている。


扱いは少々悪いが借金を返済すれば解放される為、最低でも質の悪い宿か最高で高級宿並みの扱いを受ける。


敗戦奴隷に関しては人間同士での戦争は起きていないので、現在存在しない。



「その通りだ。お前から聞いた彼女の待遇、本人の状態や帝国内の犯罪記録を見ても、犯罪者ではない者を犯罪奴隷として扱っていたことになる。そこで一般からの通報を理由に立ち入ったのだが、すでに店主は逃げた後だった」


「立入りには軍務大臣でもある儂も同行したのだが、持ち出せるものは全て持ち出したようだ。黒幕や魔道具、魔具の有無もわからなかった」


「なぜあの奴隷商がランバ殿下の件に関係あると?」



意外な情報に驚いたが、どうやら失脚した貴族のところへ頻繁に出入りしていたらしくその件を含めた捜査だったらしい。



「地下にいた被害者たちも全員保護をした。案の定全員が違法奴隷であり、奴隷紋によって何も喋られぬよう契約をされていた」


「では詳しいことはわからないと」



アース公爵はすまないと謝っていたが、地下の様子を直接見たようで同族であるリンがあの扱いを受けていた事、貴族として帝都内でこのようなことが起きたことに憤りを覚えているようだ。



「問題はどこへ逃げたかだが、東西南北の全ての門を調べても出ていった記録がない。おそらくまだこの帝都に身を潜めているだろう」


「なるほど、殿下の言いたいことはわかりました。ラミス達をスラムへの案内に雇いたいのですね」



帝都内にいて居場所が知れないとなると、騎士たちですら安易に入ることができないスラムしかない。


俺は普通に入って買えることができたが、あそこは闇ギルドが幅を利かせている危険地帯だ。


スラムの入口には警備が隠れた状態で常にいる為、都民が誤って入ることはない。


それゆえにスラム内部を知る者は限られ、さらに信頼できるかどうかとなると我が家の使用人しかいないだろう。



「どうだろうか」


「‥…私個人が了承することはできません。あの場所は彼らにとって忌まわしい場所となっていますから」


「殿下がこのように頼んでいるのにか?場合によっては王命が下ることになるぞ」


「脅しですか公爵様?言っておきますが、貴方方が頼もうとしているラミス達は操られていたとはいえランバ殿下、もとい王族に見捨てられてスラムへ行ったのですよ?」


「待て!我は彼らを見捨てては‥‥‥」


「事実はそうなのでしょう。しかしここで大切なのは結果と彼らがどう思ったかです。被害を受けたのはウルスラ殿下でもアース公爵様でもなくラミス達なのですから」



言い終えると同時に赤茶をチビリと飲み喉を潤す。


ぬるくなった赤茶は酸味が増し俺の喉を焼くが、目の前に座る二人はこちらを見ることもなく、うつむき黙り込んでいる。


アース公爵もあの件に関わっていたようだ。


しかしこのまま時間が過ぎるだけなのも勘弁してもらいたい。


そこで俺は助け舟を差し出した。



「お二人とも相当悩んでいるようですが、まずはラミス達に聞いてからの方が良いのではないですか?返事も聞かぬうちに諦めては前に進みませんよ」



残像でも残るのではないかと思うほどの速さで顔を上げる二人にもう一度赤茶を入れ差し出す。


今すぐラミス達に頼みに行くために立ち上がろうとしていたが、もう少し落ち着いてほしい。


彼らは仕事をしている最中で、二人が説明の為に全員を集めると我が家が困る。


それよりも来た時と同じように公爵と王族が護衛も付けずに走り回ったら使用人たちも迷惑だろうが!



「‥‥せっかくイニスティア侯爵が入れたのだからいただくが、我々もなるべく早く判断を下したいのだ」


「見張っている以上、帝都のスラム街しか奴隷商の居場所はありません。それに今は孤児院の子供たちが遊びに来ているのです。どうか子供たちを邪険にしないでいただきたい」


「そう言われると動けないではないか。それにあの子供たちは外壁近くの者だろう?広い場所で遊ぶ機会が少ないのだから、これで我らがラミス達を取っては悪者になってしまう」


「それはいけませんな。しかたがない、大人しくここで時間を潰しましょう」



仕方がないとは思えない笑顔でアース公爵は赤茶の香りを楽しむ。


先ほどまでのピリピリとした空気が嘘のようにゆったりとした時間を過ごすことになったので、メイドを呼びお茶請けを用意してもらう。


やってきたメイドはスラムで救った者ではなく、募集によって雇った者なのでウルたちに合わせても問題はない。


二人がソファーの背もたれに寄りかかりダレている姿を後ろに、部屋の窓を開けると暖かい日差しと程よい心地よさが漂う風が部屋中を巡った。



「失礼ですが一服してもよろしいですか?」


「貴殿は煙草を吸うのか?しかし‥‥」


「アース様、私はこう見えて成人しております。公爵様には私がどう見えているのか、訪ねてみたいものです」


「すまんすまん。では儂も付き合わせてもらうかの」



窓へと寄る俺の隣に移動してきたアース公爵が胸から一本の葉巻取り出しので、俺も《無限収納》から薬煙を取り出し火をつけた。


俺が吐いた甘い桃煙と公爵が吐いた紫煙が空中で交わり空へと昇っていく。



「絵になるな」



俺と公爵を見ていたウルが呟くように感想を言う。



「だそうですよアース様。これは照れた方が良いのですか?」


「絵師にでも書かせるかの?貴殿の屋敷はエントランスが寂しい、この光景を飾るのもよいだろう」



アース公爵は窓から庭の光景を見下ろしニカリと笑った。


先ほどの鋭い眼光は見間違いだったのかと思うほどの差だったが、彼もウルもそれだけ追い詰められていたんだろう。


何しろ王族を狙った犯行、下手をすれば首都たる帝都が崩壊していた可能性もあったんだ。


そして黒幕に繋がりそうな糸が見つかる。


冷静さを欠いて強引に事を進めようとしたことは責められないな。


風に揺れる芝生を見下ろしながら二本目の薬煙に火をつけ日差しを浴びていると、ウルもこちらへやってきて窓から顔を出す。



「どうなさいましたかウルスラ殿下。服に臭いが付きますよ?」


「いや、今何かが外を通ったような‥‥」



眉を顰めキョロキョロと見渡すウルにそんなことはないと伝える。


ここは2階で魔力も感じられなかった。


抜群の身体能力かスキルでもない限り窓からは見えな‥‥…



「失礼いたします。ご主人様、先ほどから私の手入れをした芝生を見ているようですが何か不手際でも」



いたよ、しかも我が家の使用人だったよ!


どうやっているのか、窓の外には我が家の庭師がまるで空中に立っているかのようにいつの間にか佇んでいた。



「君は‥…どうやって。ここは二階であったはずだ。イニスティア殿?」


「申し訳ございませんが私にもわけがわかりません。君、そんなことができるスキルもっていたのか?聞いてないんだが」



あまりの唐突さに俺も目を点にさせたが、アース公爵の言葉で我に返った。



「ご報告遅れすみません。先日のオンブル様からの指導によりいくつかのスキルが発現しましたが、現状にはあまり関係はないです」




窓から顔を出すと、彼は片足を外壁に引掛け、屋根から伸びる植物の蔦を俺達からは見えないよう窓枠へと沿って引掛けた足を支えていた。



「‥…そういえば、ラミスが密偵を使ったと言っていたがもしや」


「すみません、執事長が少しかっこつけたみたいです。密偵というのは我々イニスティア家使用人の事です」



彼は言い終えると「会談のお邪魔をしてすみません」っと地上へと戻っていった。


壁を走り下って。


どうしよう、我が家が使用人がステータスブレイクを起こしかけている。


みなさん気づいていますか?

あの変態がここ数話登場していないことを。

何をしているかは次回判明です。


ムート 「すげー!しようにんって空を走れるんだな!」

レイヌ 「‥…普通はしない。というかそもそも簡単には走れないからな」

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