表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造主長様のお仕事  作者: 己龍
第3章 貴族+家族+愛情=???
88/181

8話 一難去ってまた一難の兆し


あの悲劇から数日がたち、我が家には現在たくさんの子供たちがいる。


床に臥せた料理長を皆で看病している間、屋敷内にはリンに対する恐れが蔓延し、主にキッチン補助をしていたメイドが恐怖に縮み上がった。


そんな空気はいけないと思い、思い切って孤児院の子供達を屋敷に招いてみた。


結果は大成功、使用人たちは笑顔となり子供たちを可愛がっている。



「いやはや。一時は彼女たちも顔色が悪く心配していたのですが、安心ですな」


「しかたないさ、あの物体Xかなにかわからない物体を見た後だ」


「ここ数日は旦那様に対してお目汚しをしたようで。申し訳ございません」


「確かに使用人として主に真っ青な顔で奉仕はまずかったな。だが俺もメイも気にしてはいないから安心しろ。なぁメイ」


「はい!」



子供達が遊ぶ姿を二階の執務室から眺める俺たちに謝るラミスを片手で制し、お前も行ってきてもいいんだぞ?と聞いたが、やんわりと断られた。


ただ庭先から聞こえる笑い声に耳をヒクつかせているので興味はあるのだろう。


出会ったときは大号泣の熱い老人かと思ったが、仕事は仕事できっちりこなす真面目さをもっていて嬉しく感じたが、たまには息抜きでもしてくればいいのに。



コンコンッ



執務室に響くノック音に許可を出すと、顔を出したのはメイドの一人。



「おぉ~、にいちゃんほんとに貴族だった!」



それから孤児たちのリーダー、ムントだ。


エルフ特有の長い耳がピクピクと動かしながら執務室内ではしゃごうとする彼をソファーに座らせ、クッキーを与えて動きを封じておく。


ここにはあまり一般人に見せられない書類もあるからな、入ることは許可するから大人しくしていてくれ。



「ここに来たってことは屋敷は大方探検したか?」


「おう!入っちゃダメなとこは行ってないけどここが最後だった!」


「いつも一緒の4人はいないのか?どうせなら一緒に回ればよかったのに」


「レックル以外のあいつらとは競争してるんだぁ。誰が一番早く家を制覇するか。そして俺が一番!優勝!」


「そうだな」



握り締めたフォークを高々とかかげ誇る彼の頭を撫で褒める。



「ん?レックル以外?彼女はどうしたんだ」


「レックル様はただいま温室にて育てている野菜を見ています。始めて見る光景に目を奪われているようでして、今しばらく掛かるかと。ランドリーメイドの一人が付いておりますのでご安心くださいませ」



この帝都内では菜園自体に見張りが付いて国が管理しているからな、なかなか見られないだろう。


国内自給率が低い故に自国産の食糧は貴重なのだ。


たしかウルに聞いた話では他国も自給率が低く、現在たった一カ国が各国の食糧を補っているらしい。


まさかとは思ったが大陸の総人口、食糧供給の国の土地の広さ、何よりその土地そのものを考えると納得できた。


《食栄国家ジハヤ王国》


大地神の加護を受けた広大な土地に気づかれた国で食料面で各国を支える国の名。


この国ではとにかく植物の成長が早く、収穫に半年かかる物が1か月、数年にわたって成長するものが1年で実をつけるほどだ。


ジハヤ王国は他国に比べ国歴が浅く(とは言っても数百年の歴史がある)俺も知らなかった。


まさか当時聖地と呼ばれ神聖視されていた土地に国を築くとはな。


そんなこともあって一国に集中した食糧事情を危険視した2代前の皇帝によって自給率の向上と安定化を目的とした畑であるために一般に開放していない。



「なんだったらレックルに収穫をさせてやってくれ。たしかそろそろ収穫できるものがあったはずだ」


「かしこまりました」



子供達を招き入れた時に出した果実水をじっと見つめていた彼女の目を見ても、そういった職種に興味をもっているだろう。


きっといい経験になるはずだ。


俺は案内をしていたメイドを温室へと向かわせ、楽しそうに話すメイとムントを眺める。


俺に子供がいたらこんな光景を見ただろうかと暖かい目で見ているとメイに手招きをされ、ムントを挟んで座ろうとしたその時、気を使ったかのような声が投げかけられた。



「ずいぶんと賑やかだが、いつの間にこのような可愛らしい使用人たちを雇ったのだ?」



ノックもせずに入ってきた相手を見ると、いつも我が家に来る時とは違い、王族らしく金糸や銀糸など貴重品をあしらった服装で扉へと寄りかかるウルだった。


邪魔するなよと言いたいが扉を開ける際に躊躇した気配があったので口を閉じよう。


もっとも、そんなウルの後ろから現れた人物もいたこともあり、あまり不躾な言葉を発することを躊躇ったこともあるが。



「これはウルスラ殿下、ようこそイニスティア家へ。それからアース公爵閣下もお久しぶりです」


「うむ、久しいなイニスティア郷。少々話があるんだが」



白い鬚を蓄えているが衰えを感じさせない老エルフのアース公爵とウルへ深々と頭を下げようとしたが、公爵に手で制され中途半端な礼になった。


ウルの方も話に参加するのかウンウンと頷いている。



「それでしたら応接室が開いていますのでそちらへ。メイ、悪いが子供たちを頼む」


「いってらっしゃい、アナタ」



ムントが寂しそうな顔をしていたので頭を一撫でして部屋を後にしたが、すでにウルたちは向かったようで廊下には誰もいなかった。


道すがら慌ただしく動く執事やメイドが目立つ。


そりゃぁ公爵と王族がアポなしに突然訪問してくればこうなるだろう。


途中でラミスとも合流したが彼は平気そうだ。


やはり経験の差だろう。


ラミスが執務室の扉を開けるとすでにウルたちはテーブルを挟みソファーへと座っている。


公爵の隣へと座るほど階級は無く、ウルの隣へ座るわけにもいかず、俺は二人が視界に入るように椅子へ着いた。


会議室でも増築するか?


しかし、屋敷で国の重鎮が話し合うことはそもそもありえないことだからな。


こんな盗聴し放題な家屋ではなく、設備満載の王城へ行こうぜ。



「貴殿がいる時点で盗聴しようがないだろう」


「失礼、聞こえていましたか」


「はっはっは!お前にしては珍しいミスだな。だがアース公爵の言う通り、レイの目を掻い潜るやつがいるなら城で話し合っても同じことだ」


「‥‥…あまり過信しないで欲しいのですが」



ジッとウルへと視線を飛ばし抗議の訴えをする。


過信は甘えを生むから諫める意味であって、けしてお前だけ楽しようとするなという意味ではない!


さっさと用件を聞こうとしたが、その前に。



「どうしたレイ、急に拳をつき出したりして」


「殿下の前で武力行為は褒められたものではないぞイニスティア名誉侯爵」



何もない空中に手を伸ばし握り締めた俺をいぶかしむ二人に近づくと、公爵は僅かに身構えたがかまわず二人によく見えるよう、そっと手を開いた。



「驚かせてしまい申し訳ありません。少々精霊が迷い込んでいたようで捕獲させていただきました」


「ん?そこに精霊がいるのか?我は《精霊視》のスキルがないから見えぬのだが」


「これは珍しい、イニスティア郷は《精霊視》を持っていたか。殿下、ここには確かに火の精霊がおります」


「ほう、エルフであるアース公爵が言うのなら間違いないだろう。しかし精霊とは素手で掴める実体がある生き物なのか」


「それは違いますぞ殿下。精霊は肉体を持っておりません、それを掴むなど‥‥‥貴殿は本当に人族か?」



失礼な、今はレベルが高いだけの立派な人族だぞ。



「掌に魔力を纏えば触ることができますよ。維持できるほどの魔力量と精密な操作が必要ですが」



公爵に説明をすると窓へと向かい、そっと精霊を逃がしてやる。


あれは迷宮でランバの部下に捕らわれていた精霊だったんだが、明らかに意図してこの部屋にいたな。


おそらくリンが送ってきた奴だろが、このことを知られると面倒なことになるため迷い込んだということで通させてもらおう。



「これで本当に三人だけとなりましたし、そろそろお話の方を伺いましょう」


「そうだな、からかいたいことは山ほどあるが、それは後日に回そうか」



ウルはニマニマと笑っているが、またアポなしで来られても困るんだよ。



「ゴホンッ‥‥ではワシから。先日のランバ殿下の救出後、第一皇子派の連中を締め上げ男爵家が1件、子爵家が2件取り潰しとなった。もともとこの家は悪評も多くて仕事も任せていなかったため国としての機能は以前と変わりはない」


「魔道具も魔具も出てこなかったが、帝国を売ろうとしていた書類などの証拠が出たのでな。国家反逆で明日には処刑だ」


「その前に拷問にかけ、裏に誰がいるか問いただしたが末端の末端らしくてな、自らの利益以外は知らされていなかったようだ」


「なるほど、それで中立派筆頭であるアース様がウルスラ殿下の共をしていたと。すでに継承者争いは落ち着きを取り戻したと見てもよろしいですか?」


「兄上も元々争い事が嫌いだからな、その認識でかまわん」



国の為になるならどちらが王となってもいい中立派の代表格であるアース公爵。


ウルの傍にいるだけで第二皇子派に鞍替えか疑われるのではないかと心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。


中立派がウルに加担すると勢力図が大きく傾き、自棄になった第一皇子派が最悪暴動を起こす可能性もあるからな。



「さらにここ数か月の兄上の足取りも追ってみたが、特定の場所や人物が常にいたわけではなかった。レイよ、本当に《洗脳》というスキルを持つ奴はいるのか?」


「以前にも言いましたがランバ殿下の様子から見て間違いないでしょう。それに例え間違っていたにしろ、ランバ殿下をあのように豹変させた原因が帝都のどこかにあるのです。警戒は無駄になりますまい」



なるほどと二人は頷くが、やはり話された内容はかなりの重大案件だった!


頼むからもっと厳重な場所でこの話し合いをしてくれ!

アース (精霊触れられる?ならばあの精霊も、あの精霊も、存分に愛でることができるではないか!)

レイヌ (公爵が鼻の下を伸ばしてる。こいつろくでもない事考えてんな・・・)

ウル  (アースは重度の精霊愛好家だからな。レイは後で質問攻めだろう‥…ニマニマ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ