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創造主長様のお仕事  作者: 己龍
第3章 貴族+家族+愛情=???
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5話 全ての歩は進みだす

予約間違えました


「ウル…スラ。は…母上」



アリエルの言葉からさほど時間も経たずに、ランバは目を覚ました。


精神を犯されていた後遺症からか目は虚ろとなり、言葉もたどたどしいものとなってはいるが、それでも周囲にいる人間は判別できるほどには思考は出来るらしい。



「すまない‥‥みんな。私は‥‥今まで酷いことを‥‥民にも」


「お兄様!安心してください。わかっています、お兄様に何が起きていたかは全てウルから聞きました」


「そう‥‥か。アリエル、お前にも‥‥嫌がらせを‥…使用人たちにも」


「ランバ、その続きは元気な姿になってから聞きたいわ。それまでゆっくりと休みなさい、命令よ」


「‥‥‥申し訳…ありませ‥…ん」



ランバは、女王に一言謝るとゆっくりと目を閉じた。


もしやと悪い予感がよぎったウルが急ぎ俺へと振り返ったが、寝っただけだと伝えるとホッと胸を撫でおろしガクリと膝をついた。


ランバの目から流れる一筋の涙をぬぐう女王の目にも、後ろ姿からは見えないが涙を流しポタンッポタンッと石畳に落ちていった。



「ウル、とりあえず陛下に伝えた方がいいんじゃないか?」


「そうだな。レイは一応まだ反逆者の疑いがある扱いだ、我がひとっ走り行くとする」



ウルは俺たちに一言告げると一目散に地上への階段を駆けていくが、先ほど膝をついた時はまさに崩れ落ちるを表したかのような勢いでいたので、若干彼の膝が心配だ。









その後は陛下が地下牢まで落ちてきたり(階段で躓いたらしい)、しばらくランバの主治医として毎日王城へ通う手はずを整えたりとせわしない日が続き、気づけば捕えられてから一度も城から出ていないと気づいた。


俺が地上に出た頃には城門前にて行われていたデモも落ち着いていたことからも分かる通り、俺の無実はすでに帝都中に広まっている。


屋敷からラミスが泣きながら着替えを持ってきたときに聞いたのだが、我が家の使用人たちは俺が捕まったと兵に言われた際に「そんなことはありえない!」と屋敷から叩き出したそうだ。


そこから無実の証拠を集める為に密偵を飛ばしながら情報を集めていた最中での大々的な誤認逮捕の発表で無駄になってしまいましたと、ラミスは笑いながら帰っていった。


俺へ会いたいとリンたちが面会希望を申し込んできたが、ランバの容体が安定しない日が続いた為残念ながら会えなかった。


その代わり手紙のやり取りは出来たため、ラミスに頼んで連絡はこまめに取れている。


もっとも、羊皮紙でのやり取りはラミスにも負担になるため重要なこと以外では言伝だが。


こうしてランバの起こした騒動はなんとか内乱の一歩手前で収まり、洗脳騒ぎは一時的な解決となった。


そう、一時的に。












「メイトラが帰ってくる」



ランバの診察を終えた俺を待っていたウルが、ランバの自室から出てきた俺を応接室へ連れ込み、なぜか声を抑えめに告げた。



「《織部蜘蛛》からの報告では予定日数から一日遅れらしいが、道中問題もなく帰国予定だそうだ」



アルバ帝国の特殊戦闘諜報員からの報告か。


彼女たちは普段王族付きのメイドとして動いているがその実力は高く、冒険者で表せば平均で銀ランクの実力を持っている。


5人~10人で組めば都市や国の行き来は出来るだろう。


しかしそうか、メイが帰ってくるか。



「彼女も落ち着いたとはいえ、先日まで内情が悪かったこの国にどうして今帰ってくるんだ?そもそも学園はまだ長期休暇に入っていないだろう」


「そこは我も知らん。実のところ手紙を受け取った父上も詳しいことは分からぬらしいが、どうやらイビルアルでなにかが起こったらしい」


「なにか?なにも情報が無いのか?」



外での移動は困難とはいえ絶対隔離というわけではない。


国から出る者もいれば入ってくる者もいる。


イビルアルから帝国領内に来た者はいないのだろうか。



「どうやらそうらしい。乗り継ぎで来る者はいるがイビルアルからの定期馬車の乗客はメイトラ以外いないそうだ」


「まさか。なにかあったのなら逃げてくる人もいるはずだろ」


「未確認の情報だが、どうやらほとんどの者がアルバとは正反対の方向にある《技術国ヴェルカー》方面へ向かったらしい。彼らがなぜアルバを避けているかは詳細不明だが、もしかしたら兄上の以前の狂行が他国へ広まったのではないかと我は考えている」



ふむ、混乱のある国へわざわざ行きたくないからが理由‥‥ね。


それは違うんじゃないかな。



「どういうことだレイ。あまり勿体ぶるな、性格悪いぞ」


「お前に言われたくない。さて理由だがな、洗脳状態だった義兄さんはその行動を隠すのが上手かった。国民が内乱の予兆じゃないかとも思わないほどな。他国で広まっているなら帝都でも広まっていなければおかしい」


「もしかすれば《織部蜘蛛》のような偵察者が紛れ込んでいるのかも・・・」


「こそこそ嗅ぎまわる必要ない。お前だって《織部蜘蛛》を他国に差し向けたりはしないだろ」



人同士での争いが忌避されるこの時代に他国を偵察するメリットがない。


戦争などやるほどの余裕はどの国でもないのだ。




「それはそうだが‥…ならなぜアルバを避けているんだ?」


「もしかしたらだが、彼らはイビルアルから逃げているんじゃないかな」


「逃げる?魔物に襲撃‥…ではないか。そうならギルドを通じてこちらに話が来るはず」



あくまで想像でしかないんだが、そうなると不明な部分がさらに多くなってくる。


あとでルルに聞いておくか。



「だがレイよ、なぜかの国から逃げるとアルバを避けるのだ?」


「この国の位置だよ」



俺は壁にかけられた大陸地図まで歩み寄ると、アルバ帝国の位置を指さす。


布で織られたこの大陸地図は作られてから時間が相当経っており、現在では存在しない国も記されている。



「このアルバは知っての通り周りが森と草原に囲まれている。都市はイビルアル王国王都との間に作られこの帝都から後ろには国も都市も無い」


「そうだな、ついでに高ランクの魔物も多い。そのおかげで《冒険者の国》などと呼ばれているがな」



地図上でのアルバから東方向を指でなぞりながら苦々しく顔をしかめるウル。


そこは広大な土地となっているので魔物も多い。


下手をすればこの土地をうろつく魔物が全てこの帝都に襲撃!なんてことも残念だがありえることだ。



「つまりは例えイビルアルから逃げてきたとしても、帝都に来ればすでに行き止まりということだ」


「なるほど、わざわざ逃げ場のない場所まで来る必要はなしか」



アルバとの反対側を見ると、地図では少ない国数だが今も存国する数は確認する必要もない。



「すべてはメイが帰ってきたら詳しくわかるんだがな」


「そうだな、しかし帰ってくるのは家族として嬉しく思うが兄上を操った犯人がまだわからない現状では、歓迎はできんな」


「言ってやるなよ?」


「当たり前だ。‥‥‥それ以外の問題もあるがな」



後半をぼそりといったウルだが、しっかりと俺の耳には届いていた。


どんな問題か聞こうかと思ったが、遠い目をしだしたウルを見て遠慮しておく。



「まぁ、我が家にいれば安全面は問題ないさ。金ランクが二人に銅ランクが一人、オンブルもランクは低いが腕前はある」



それに使用人たちもいるしな。


俺は言い終わるとソファーにまで戻り、数枚の用紙を《無限収納》から出す。



「それは兄上の診察予定表か。日程を決めたということは」


「もう張り付いてなくてもいいだろう。精神状態も安定した、自殺騒ぎもないだろう」



ランバには洗脳を解いた後も魔力を流し続けていたが、それを止めた途端に彼は近衛から剣を奪い自害しようした。


すぐに気絶をさせ事なきを得たが、周囲はまだ操られているのでは!?と騒然としていた。


俺は何も問題はないと騒ぐ兵を抑え、ランバの様子を見ていた女王に説明をしておいた。


彼の性格はウルから聞いており、真面目で自分に厳しく家族や民を愛しているランバでは、洗脳されていたとはいえ自らが行ったことに耐えられるか心配となり、ずっと彼の心を魔力で保護していた。


この状態は安定するだけで解決はしていなく、何より俺が付きっ切りでなくてはならない。


そこで一時魔力流動を止め、彼とカウンセリングするという治療の初回に起こった自害未遂行為だった。



「精神などという目に見えぬは理解が難しい。兄上には悪いがあの行為があったからこそ兄上が重体といったレイの言葉が通ったんだ」


「治すと言えば教会の医父の仕事だからな。周りが最初に反対したのも納得してるさ」


「助かる。この予定表は父上に渡しておく、これでようやく城から出れるな」


「そうだが‥…なんでそんなに二やついてるんだ?」



城から出ると言ったウルの顔は見覚えがあった。


この顔をするときはほとんど俺が苦労する事態だ。



「すぐに出るんだろ。オンブル殿がお前の部屋で待機しているはずだから荷物をまとめているだろう」


「なんであいつは自由に出入りできるんだよ。お前も止めろよ!」


「いいじゃないか、そもそも彼女を止められる者がいるのか?」



くそ、いないから苦労してるんじゃないか。


オンブルは俺の無実発表から毎日俺の部屋に現れるが、来たことは全て事後報告、要は不法侵入している。


もう少し警備を厚くした方がいいんじゃないか?


それでオンブルが止まりはしないが、今後は王族の者全員が危険な状態になるのだから対策は取っておくよう伝えて部屋を後にした。


余談だが、俺が城門から出るときに庭園に大きな氷塊が現れたと騒ぎになったが俺には関係ないことなので口を出そうとは思わなかった。

陛下  「最近出番少なくないか?」

リン  「私達もですよ」

ディー 「俺たち迷宮で一緒だったのにだぜ?」


己龍  「君たちはシリアス展開が似合わないでしょう?」


全員  「「「ふざけんな!!」」」

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