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創造主長様のお仕事  作者: 己龍
第3章 貴族+家族+愛情=???
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3話 そして歪な羽化に向け(ランバ視点)

くそ、忌々しい。


適当に作った罪状で牢屋に放り込んだあの成り上がりめ!


あいつを捕えてからというもの、スキルバカの愚弟の取り巻き達は飢えた獣のごとくに噛みついてきやがる。


何が我が国の恩人だ、どいつもこいつも頭がおかしいんじゃないか?


アルバにいる者はただ帝国の為に命を削って奉仕するなど当たり前ではないか!


それを別の大陸から来たという暴れるしか能のない冒険者を貴族になど、ましてや王族の血脈に加えるなどとは、父上も愚かになったものだ。


メイトラという便利な道具をこのように使い潰すとは、あれはもうダメかもしれんな。


さらに母上も父上の意見に賛同して成り上がりをすぐに釈放するよう《王命》の権利まで使ってきた時には、さすがの私も思わず剣を抜いたほどだ。


母上は昔は高名な魔法使いだったらしいが、俺の行動に目を見開いて動けずにいた。


思い出せば母上も元は子爵家の生まれだった、やはり子爵程度の身分の者など王家に入れるべきではなかったな。


父上の後ろから上の愚妹がキンキンと喚いていたが、女風情が出しゃばるな!と命令すればすんなりと口を閉ざしてしまった。


あれは実に惜しかった、あのまま喚いていれば喉を切り裂いて強制的に黙らせようかと考えていたからな。


ついこの間まで可愛がってやったというのに恩を返さない愚妹なんぞ必要は・・・・






ん?可愛がっていた?


そうだ、私は可愛がっていたんだ。


ウルスラも、アリエルも、メイトラなど特に可愛くて仕方なかった。


父上も母上も尊敬していたし、そもそも王になんかなりたくは・・・・・・






くそ!頭が痛い!


そうだ、昔はどうだろうとかまわない。


今は堕ちるに堕ちた家族にも、私に逆らうゴミ共も、すべて切り伏せてしまえば問題ないだろうが。


その後、私の気迫に恐れをなした父上は、愚弟と愚妹、そして母上を牢に入れるよう通達した。


ははは、なんだ、こうまで簡単に事が運ぶのかとその時は高揚感しかなかったが、私を悩ませるのはそのあとだった。


成り上がりを牢に入れてから平民がワラワラと城門にあつまり抗議なぞし始めた。


日夜繰り返される攻防にイラ立っていたが、愚弟たちを牢に入れてからは各ギルドまで抗議を入れてきた。


しかも父上に直訴という身分知らずの愚行まで犯して、だ。


この場で全て殺してしまおうかと思ったが、やめておいた。


理由は‥…ない、ただ何となく止めた方がいいかと頭によぎったからだ。


くそ、まただ!


最近自分自身でもよくわからない考えが頭をよぎる。


私らしくない行動を私がとるなど、気味が悪いし怒りが湧く!


・・・・・今度医父に診させるか。













愚弟たちを牢に入れてから数日がたち、私は今、牢へと降りる階段にいる。


その目的が処刑の宣告ならどれほどよかっただろうか。


だが残念ながらそういうわけではない。


あの腰抜けの父上から《王命》で全員解放せよと受けたから、仕方がなく釈放をしに行くのだ。


各ギルドのゴミ共の抗議があり、俺はすぐに全員捕えて処刑するよう父上に助言したが、帰ってきた答えが釈放(これ)だ。


何が他国と関係性だ、そんなもの植民地にして支配してしまえばよいだけではないか。


だが今の私はただの皇子、皇帝である父上には逆らえない。


私は先ほどの偉そうな父上を思い出し、歯を鳴らせながら下へと続く階段を降りていく。


本来このような汚らしい場所など皇子である私にはふさわしくないが、せめて成り上がりだけでも挑発し、奴だけでも再び投獄させてやろうと考えての行動だ。


ふん、そもそもあの愚かぶりでは退位も時間の問題だ。


何もするなと言った父上が発した《王命》への反抗はアルバでは重罪だが、問題が上がるまでの間にどうせ私が皇帝の座についているんだ。


ならば問題ないと結論し、数名の騎士を引き連れ降りていく。


下で待つあいつらはいったいどんな顔をしているだろうか、と内心からにじみ出た笑みを浮かべ階段を降りるが、途中からおかしなことに気が付いた。


この地下へと下る階段は、足を踏み込んだ瞬間にじめっとした空気とカビ臭さが目立っていた。


しかし今、空気は若干の湿り気程度に収まり、匂いにいたってはむしろ果物のような香りが鼻腔を埋めていた。



「おい、なんだこの匂いは。牢屋というのはこれが普通なのか?」


「い、いえ。普段はカビ臭さで鼻を摘まむほど・・・・なのですが」


「ではこれは異常事態と?看守共はなにをしているんだ」



どうせ異常事態ならば、あいつらも全員くたばってくれればよいのだがな。


近衛兵に守らせどんどん降りていくが、それとともに違和感も大きくなっていく。


なんだこれは?


先ほどよりも強い香りは、よく思い出せば女どもがよく使う香油に似ていて普段から嗅ぎなれた物だ。


肌に纏わりついた水分を含んだ空気はいつの間にか気にならない程度にまで抑えられ・・・



「これは・・・・音楽か?それにこの匂いは」


「わかりません、しかしどうやら命が危ぶまれる事態ではないようです」



そんなことはわかっている!


だが罪人を入れる場にこのような・・・・



「おい、誰が剣を収めろと言った」


「しかし、おそらく下では快適な空間があるはずです。この匂いや音楽が良い証拠、剣など必要と思えないのですが・・・」


「・・・貴様、誰に意見を出している。他のやつらもだ、貴様らは黙って私の言うことを聞けばいい!」



馬鹿どもは私の言葉にすぐに応じ、改めて狭い通路で体勢を戻す。


最初からそうしてればいいんだ。


下から感じる気配とは相いれない、緊張を張り詰めた兵と共に階段を下りきり、先ほど私に意見を出した兵が牢の並ぶ部屋へと通じる扉を勢いよく開ける。



「・・・なんだこれは?」



私の言葉に、兵たちは一切の反応も見せない。


だが私もそんな彼らを罵倒もできず、同じようにこの信じがたい光景を一心に見た。



「いったい何なんだこれは!!」



私はここに来たことはない。


だがどのような場所かは聞いたことはある。


だがどの話も目の前と比べるとまったくの別の場所なのではと思える。


そもそもここは牢屋なのか?


鉄格子はそのままだが、煌びやかな小型のシャンデリアが天井に付けられ、床は柔らかそうな緑色の絨毯、一目で名のある者が作成したであろう調度品と家具がいくつも設置され、あげくの果てには・・・・



「レイ、この間渡した葡萄酒はないのか?たしか小樽2つ分を屋敷に届けさせたんだが」


「あぁ、こいつもそのままの状態であるが・・・このつまみには合わないだろう」



愚弟と成り上がりはグラスを片手に談笑しながら葡萄酒を飲み、



「あら、この焼き菓子はあまり甘くないわね」


「お母さま、こちらの果物を煮詰めた物を付けると大変に美味ですわ」


「どれ・・・本当ね!僅かに酸味があるからどんどん食べれちゃう!」



母上と愚妹は何かわからぬ食べ物を食べて盛り上がっている。


私は絶望に歪んだ顔が見たかったというのに、こいつらは・・・・



「ランバ皇子、どうなさいましたか?ご機嫌でも・・・・」



笑い、喜び、今後の憂いなど元々なかったかのように振る舞い・・・・



「皇子、おう―――グピャッ!?」


「黙っていろゴミが」



となりにいたゴミを叩き潰しても私のこの怒りは収まらない。


鼻を押さえ蹲ったゴミから剣を奪い奴らに切りかかったが、鉄格子に邪魔をされ耳障りな金属音しか返答は来なかった。


だがようやく私の存在に気付いた4人はそれぞれが呆れや落胆とした表情で見てくる。


止めろ、その目を止めろ!


貴様らのような分際で私にそのような目を向けるな!!


あまりの怒りに声が出ず、自分自身でもわかるほどの荒い息が無尽蔵に出てくる。


こいつらを切り刻む、コケにしやがって!


殺す!


目の前が真っ赤に染まり、私が私でなくなるかのような感覚に浸かっていく。


景色が歪んで見える中、それでもなぜかあの成り上がりの姿だけは歪まず、はっきりと見ることができた。



「きさ、貴様らは、貴様らはいったいなにを、何をーーーー!!!」



そして成り上がりに対してのみ言葉を発することができた。


しかしそんなことは今はどうでもいい、許せない。


気に食わない、腹が立つ、イライラと頭を締め付けられる。



「やぁ義兄さん、何を・・・と言ってもな。見ての通り寂しい牢に二輪の花が訪れたんだ。ならそれにふさわしい場所にと思っての事だが」



私の内情など知らぬと、普段の調子で話しかけてくる成り上がり。





あぁぁぁぁぁ!!!


だめだ、私自身何がしたいかわからない。


なぜここに来たか、誰に会おうとしたか、そもそもここはどこか。






頭痛が増し、思考がめちゃくちゃになっていく。


()()を握る私の手が震え、ズキズキと痛みが走る。


唯一の救いが成り上がりを目の前にしている時だけが、思考を統一させる。











私の今考えていること。











こいつは・・・・レイヌは何をしても殺さなくてはならない!



女王   「ほら、義息子!手が止まっているわよ!」

アリエル 「レイヌさん、次は柔らかいお菓子が食べたいわ」

ウルスラ 「レイ、そろそろエールに合うつまみが欲しいんだが」

レイヌ  「くそ、キッチン一式なんざ出すんじゃなかった!」

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