2話 地雷増殖帝都(バリス視点)
急いで書いたので誤字脱字は後々修正します。
「こんなこと許されんのかよ!」
帝都に建つ冒険者ギルドのギルド長室にて怒号が響く。
俺の目の前には顔を真っ赤に怒らせ、ダンッダンッと一区切りごとに机をたたく金ランク冒険者がわめいている。
「うるせぇよ、そんなことはここにいる全員が思ってんだよ!いちいち口に出さなきゃわかんねぇか、坊主?」
「貴方の声の方がうるさいですよ。年寄りの耳をもう少し労わりなさい」
ちっこれでも優しく諫めた方なんだがな。
そもそも俺の隣にいる司祭のジジィはなんでここにいやがるんだよ。
俺がこの部屋に収集したメンバーはレイヌと組んでいた4人と、生産・薬学ギルドの長だけなんだが。
「私とて彼の薬の恩恵に預かっているのです。この不当な件について話し合う場にいてもおかしくありますまい」
「おいジジィ、俺の心を読むんじゃねぇよ」
「読むまでもありませんな、貴方の目が全てを語っています。どうせ今も「んなわけあるかよ」っとでも考えているのでしょう?」
「・・・・・・・・」
もうこのジジィに付き合ってられるか。
目を反らし周囲を見渡すが、先ほど言った奴以外にも一名部外者がいる。
ジジィに関してはまだ納得できる内容だが、ここ数日内に帝都にきたこいつがなぜ我物顔でソファーに座ってんだ。
俺と同じことを他の連中も思っているようで全員がその人物に視線を投げる。
そのうちの3名は疑問ではなく、輝いた瞳で見つめているがな。
「ん?|僕に何か質問かな?」
細っこい足を組みなおし、イラッとするほど緩やかな動きでリーシアは一人一人に微笑み返してくる。
空気の読めないやつだが、レイヌと同じ水晶ランクの冒険者であり、この大陸に3人しかいない最高戦力の一人である。
この町に住んでいるやつは軒並みこいつが帝都に入ってきた時にやたら騒いでいたから、大概が存在は知っている。
だがレイヌと一緒にいた4人はそんな状況を知れるはずもなく、突如現れたレイヌ以外の水晶ランクに目を輝かせている。
「だー!話が一向に進まねぇ、もうこいつは無視して始めるぞ。そこの三人も気引き締めろ」
「・・・そうだった。・・・ギルド長、なんで師匠を助けに行くのを止めたの?」
「そうだそうだ!レイヌさんは絶対盗みなんかしてねぇ、全部あの貴族の嘘っぱちだ」
「じゃかぁしぃわクソガキ!貴様は一旦黙ってろ!」
再び騒ぎ出した《炎拳》の頭に、生産ギルド長のドワーフによる鉄拳が振り下ろされたが、あれ痛いんだよな。
案の定、頭を押さえて蹲る《炎拳》は無視して先ほど意見したダリエラ嬢ちゃんに意識を戻す。
「助けたいって気持ちは分かる。ここにいる連中は、俺も含めてあいつのやったことの恩恵を十分に受けてるからな。それに見ただろう?ギルドホールにあったでかい板」
「あれですか、以前はありませんでしたけど何でしょう?あれもレイヌ様によるものですか」
「あぁ、もう状況的にもビックリさせようとかふざけてる場合じゃねぇからばらすが、あれは離れた場所を映し出す魔技具だ。今回、リーダーであるレイヌと皇帝陛下に許可を取って迷宮の探索を帝都住民は見させてもらった。《美強》の言う通りレイヌの作品だな」
俺は黒髪エルフの嬢ちゃんの頭に浮かぶ、丸い球を指さしながら説明すると、それ以外の三人が目を見開いてそれを見た。
なかなかのリアクションだ、レイヌはこれを見逃すとは惜しいことしたな。
しかし黒髪エルフは全く動じねぇけど、知ってたのか?
「へい、バリス殿。それならあの魔技具とやらは動かぬ証拠になるのでは?」
「《毒怒》の言うように、あの魔技具は映像とかいうのを保存できるらしくてな。あいつの無実を晴らすなんざ簡単だ、だが・・・」
「ランバ皇子派の貴族ですね。下手に動けば我が主様が作られたあの魔技具も押収されるでしょう」
「で、その後部下の不注意で破損しましたって結末だな。あのバカ貴族どものやりそうなことだ」
ほう、黒髪エルフは頭は回るようだな。
生産ギルド長の奴とも話が噛み合い、最悪の初段を取って来るのではという結論が目に見えてくる。
「なー、だから俺たちを止めたのか?動くと向こうが調子に乗るからって」
「なんだ《炎拳》、話聞いてたのか。まぁそういうこった、一般人やただの貴族相手ならこんなにめんどくさくないんだが、相手は腐った貴族だ。へどがでるような汚い手も使ってくるぞ」
「・・・さっき言った魔技具を壊すってのも十分汚い」
ダリエラ嬢ちゃんの言う通り確かに汚い手だが、馬鹿どもは平然とやってのける。
全く、ああいった少数の連中がいるから、貴族共全体の印象が悪くなるんだ。
「おいバリス、そういった事も含めてどう行動する?わしはこう頭を活用することは苦手だ」
「アンタ一応ギルドの長だろ・・・とにかく今は様子見ってことだな。あいつが連れてかれてまだ二日だ。今俺たちが行動を起こせば住人全員が後ろに付いてくる」
レイヌの成果はさっき言ったように住人全体が知ってるからな、あいつに直接でも間接的にでも救われた奴は多い。
ある意味恩人を不当な扱いを受けている現状だ、内乱も視野に入れといた方がいいかもな。
「あらあらあらあら、なら私たちがここにいる理由は「余計なことをするな」って伝える為なのかしら?」
「薬学ギルド長の言う通りだ。この中にはやらかしそうなやつも数人いるからな、押さえつけと協力者を同時に作りたかったのが本音だ」
俺の言葉に5名ほどビクリと肩を震わせていたが、《毒怒》は暴れる気満々だったな?
露骨に残念そうな顔すんな!
「ですがよろしいのですかな?この場にいる者以外にも、彼のことを想い行動を起こそうとする者は現れると思いますが」
「何のために人数絞って集めたと思ってんだジジィ?」
ジジィは知っていて言いやがるが、その言葉は俺に対する意見ではなく、《炎拳》どもの代弁といったところだ。
「ここにいるのは帝都内でも影響力のあるギルドの長、渦中のレイヌの仲間、ついでに憧れの対象にもなる水晶ランクの冒険者だ。俺たちの言葉なら住民も耳を傾けてくれんだろ?」
「なるほど、では教会の司祭である私を呼ばなかったのはなぜですかな?」
「俺が苦手だからだ!」
「あらあらあらあら、バリスの坊やは相変わらず素直ね~」
薬師ギルド長と司祭ジジィのコンビは俺がちっこい時からの知り合いだ。
だから嫌だったんだよ、調子が狂うぞ。
「おい《炎拳》、次俺にその優しい目を向けてみろ。後悔させるからな?」
他の連中は何より、野郎にそういった目を向けられると腹立つ。
だんだんとまた話がズレだしたので何とか軌道修正をして今日の話し合いは終了した。
結果的にしばらくは様子見だとなったが、果たしてうまくいくか?
冒険者のガキどもは冒険者全体の目標である水晶ランクの捕縛に憤りを感じている。
ウルに聞いた話だと、王城内も意見が真っ二つに分かれ、一方はレイヌを処刑だとほざいてやがるらしい。
薬学と教会はレイヌが作った安価なポーションのおかげで儲かり、その分他の部分に手が回せると、その影響は大きい。
生産ギルドに関しては、ギルド長がレイヌと親友だと公言しているからな。
いつ爆発してもおかしくない。
そして何よりが帝都住民だ。
以前よりも生活が良くなった背景にレイヌがいることを皆が知っている。
以前は働く、食べる、寝るを繰り返し、下手をしたら一生を帝都で終わらせる者も多かったほどだ。
今では薬、武器、一部では娯楽も広まっているらしいが、生活に色がつき始めた。
ようやく毎日が楽しいと思えていたんだ。
そんな日々をくれた奴を捕えたなんて、正直あの皇子様は馬鹿じゃないかと思えてくる。
頭が痛いことに《毒怒》の話だと、メイトラ殿下が帰ってくる。
レイヌの婚約者が、だ。
更にスラムを住処にしてる闇ギルドも動きがあるようだ。
今帝都はあちこちで爆発する機会をうかがう危険地帯へと変わりつつある。
・・・はぁ~。
レイヌが来てから目まぐるしい変化の連続だが、せめて俺が引退してからにしてほしかったぜ。
薬学 「あらあらあらあら、バリス坊やったら。いつの間にか大きくなって」
教会 「いやはや、事前策を考えるようになるとは。成長しましたな」
バリス 「お前らは俺の親かよ!?」
薬学・教会 「「貴方が息子って言うのは嫌ですね」」
バリス 「声揃えて言うな!」




