43話 始まりの鐘は地に響く
ふっふっふ、私は迷宮からではなくデスマーチからの帰還です。
体を休める為、来週は・・・・更新できるでしょうか?
『帰還!』
全員で声を揃え、転移陣を発動させると足元が眩く光り、目の前が真っ白に染まった。
一生のような、刹那にも満たないような、そんな時間を過ぎて目を開くとそこにはポカンと口を開けこちらを見つめる迷宮の常駐騎士たちであった。
転移したはいいが、今いる場所がわからず周囲を見る。
僅かに離れたところに詰所が見え、すぐ後ろには垂れ幕のみが設置された一角。
って便所の前じゃないか!
なんでよりにもよって転移先がここなんだよ!
「フンフ~ン、フ~・・・・・・ん?」
垂れ幕からカチャカチャと音をたてながらベルトを締めている騎士が俺たちに気づき足を止める。
俺達も気まずくなり止まる。
騒めく木々に遠くに聞こえる喧騒、静かな時間が流れるが・・・・・なんだこの状況?
「っは!おいお前、すぐに謝れ!侯爵様たちの前で失礼だぞ!」
「も、ももももも申し訳ありませんでしたーーーーー!」
ベルトの騎士は盛大に額を地面へと叩きつけ、なんとも豪快な土下座を見せた。
もちろんこちら陣営は全員恥ずかしそうに顔を反らすしかなかった。
こちらから声をかけなければあちらもずっと頭を下げ続けるしかない。
パーティの名目上のリーダーである俺が出るしかないか。
いや、土下座の原因が俺な以上、他にいないか。
「あー、不敬を許そう。そもそも俺たちが急に来たことに非があるんだ、謝るならばこちらの方だ」
はぁ~、最初に俺を侯爵って言わなけりゃこんな上から目線で言わなくてもよかったんだが・・・・。
向こうが貴族扱いしてこっちが冒険者の立場で発言すれば、最悪気を使わせたってことで彼が解雇になる可能性もある。
貴族になったの早まったか?
つかまた「名誉」が抜けてるぞ!
「寛大なお言葉、感謝致します!ところでなぜ皆様そろってこのようなところへ?そもそもいつおいでに?」
「そりゃぁ俺たちが」
「待ちなさいディラン、ここは私たちのリーダーである我が主様が宣言すべきです」
「・・・ディーは配慮が足りない」
うん、貴族を差し置いての宣言って体裁悪いからな。
だがここで?便所の前で宣言するのか?
史上初の迷宮制覇宣言が便所前っていいのか?
「そのことについては・・・・・なるべく大勢のいる前で説明させてもらおう」
そんなに残念そうな顔をするな、逃げたとか言わないように。
「大勢、ですか。まさか、迷宮内でなにか異常が!?」
「慌てるな。今はまだ名言はしないが悲報ではないことは約束しよう」
「ではまさか!」
周りの騎士たちは騒めき、目の前の騎士も興奮のあまり再びズボンがずり下がる。
「だから至急責任者を含めて移動できるものを集めてくれ。もちろん内密にな」
内密を強調するために唇に人差し指を当て、「静かに」のジェスチャーをする。
後ろでリンたちはこの後の事を考えているのかニヤニヤが溢れ出ているな。
あれ?騎士たちは動かずに俺をじっと見つめているが・・・・どうした?
「なぁ、だから人を集めて欲しいんだが」
「ひゃい!」
もう一度声をかけるとようやく行動を開始したが、土下座騎士(区別の為にそう命名)は噛み噛みなうえに、ズボンを上げずに走り出し盛大にこけた。
しかし周囲は非情で、彼を置いて全員あちらこちらへ散らばった。
残るは俺達のみになったが
「一人二人で良かったんだが。便所待ちしていたやつらはもういいのか?」
できるなら彼らにとっての悲劇が起こらないように。
「オンブルさん、先ほどのレイヌ様のお顔を見ましたか?‥…オンブルさん?」
「だめだ美強、この人絶頂のあまり立ったまま気絶してるぜ」
「・・・横から直視したから仕方ない。・・・ズボンの騎士も股間押さえてたしね」
「レイヌさんも罪造りだよな。あの騎士は普通の恋愛に戻れんのか?」
「無理かもしれませんね。後ろ姿だけ見ていた私たちでも顔が真っ赤なんですから」
とりあえず見覚えのある場所へ移動しようと騎士たちが走り出した方向へと向かい歩いた結果、俺達が転移した場所は迷宮入口から数百m離れた森の中だと分かった。
《脳内地図》で確認をすれば早く確認は取れただろうが、戦闘もなく急ぐ必要もないだろうとのんびり歩きながら久しぶりの外を満喫した。
整備された道(ただ踏みしめられただけだが)にそって歩き森から抜けると以前リンと二人で訪れた詰所に出たが、人の気配は無いようだ。
集めるように言っておいたのだが、別の場所へと集合しているのだろうか?
「・・・なんだか向こうが騒がしいけど?」
「詰所の前方向というと‥…迷宮の入口か?わざわざそちらを選んだか」
詰所は常駐騎士たちの休憩場所にもなっているからてっきりここかと思ったんだが。
「彼らも我々が何を言うか見当は付いていましょう。ならばふさわしい場所、舞台背景となると」
「迷宮の始まり、もとい入口ってわけだな!なんつぅか熱意を感じるぜ」
「・・・祭りごとなんて随分と久しぶりだから。・・・ハメを外しすぎないか心配」
至上初だからな、得られる情報も魔物素材なども初物が大量だ。
もしかしたら乱痴気騒ぎにまで発展しかねない。
喧騒の元まで向かう中、そういった危険が頭を何度もよぎってくる。
「身の危険を感じたら、そうだな。殴って制圧してくれ」
「お、いいのか」
「間違えた、ディー以外は殴って制圧してくれ」
「ではディランさんはどうするのです?」
こいつが殴ったら人死にがでかねないからな。
「・・・いいアイディアがある。・・・私かリンちゃんが守ればいい」
「そりゃぁ確かにいい考え・・・・なわけあるか!情けないだろ、俺が!」
ディー・・・ダリエラのボケに対してまさかノリ突っ込みをするとは。
「ディー、お前も随分と成長したな」
「なんで今言うんだよ!?」
「そんなに暴動手前のような状況にはならないとは思いますが。ところでそろそろ着きそうです」
オンブルの言葉に前方を見れば、見覚えのある岩山、迷宮の入口が見え始め、同時にざわざわとせわしなく動く騎士たちが整列していた。
「あそこまで集まれるのか。ということは殿下は帝都の戻ったようだな」
「あのうるせぇ皇子様かぁ。よかったぜ、どうぜイチャモン付けられるなら後回しがいいからな」
「ははは、文句は前提か」
「むしろそれ以外無いと思いますよ?」
うわぁ、散々だな義兄さん。
ここから信頼を得るには大変だとは思うが、そっちの問題が解決したら頑張ってくれ。
だべりながらもさらに前方へ近づくと騎士たち全体が見えてきたが、迷宮に入る前と比べ人数が少ない。
かなりの大人数が義兄さんを送りに行ったようだ。
「おぉ、侯爵様!只今呼びに行こうとしていたところです。ご覧の通りすぐに動ける者だけではありますが、この通り準備は万全です!」
迎えの騎士は顔を紅潮させながら興奮状態だ。
「例を言う。だが陛下からの依頼は『名誉侯爵』としてではなく『水晶ランク冒険者』として受けたものだ。できるならその通りに進めてくれるとありがたい」
「で、ですが「頼むよ」・・・・わかりました。ではレイヌ殿、リングラット殿、ディラン殿、ダリエラ殿、オンブル殿、こちらへ」
臨機応変の効く騎士で良かった。
冒険者として俺だけでなく、他の皆も名指しでの案内も好感が持てるな。
案内をされるままに整列する騎士の列のど真ん中を通り過ぎ、急ごしらえであろう木箱の上から布をかぶせた即興の台へと昇る。
全体を見回せば役割ごとに列が形成され、あぶれるように列から離れた数人の女性騎士は紙を片手にこれからの内容を書き留める準備をしていた。
この短時間でここまでの動きか、どうやらアルバの兵は練度が高そうだ。
「ではこれより水晶ランク冒険者、レイヌ殿より重大な話がある。この場にいる全員が知っての通り、水晶ランク保持者は侯爵家相当の地位がある、決して無礼のないよう清聴するように!」
そういえば冒険者ランクにはそんな特典があったな、すっかり聞き流していたよ。
「ではアルバ兵および騎士のみんな、俺が陛下より直々に俺たちの背後にあるこの《紅蓮の迷宮》の攻略を依頼したことは知っているよな?」
皆ウンウンとうなずくが、我慢できないのか口元が緩みかけてるぞ?
「重大な発表っと行きたいが、どうやらある程度分かっているみたいだな。全員口元がにやけてるぞ」
『ハハハハハ』
「それじゃ、もったいぶってもしょうがない。盛大に宣言させてもらおう」
ちらりと振り返れば仲間たちは親指をグッと立てて「言ってやれ」と催促してくる。
わかってるさ、俺も目の前にいる彼らを見て焦らすほど意地は悪くない。
「俺達総勢5名からなるパーティーは、つい今しがた正式にこの紅蓮の迷宮・・・・・・」
『ゴクリっ・・・・』
息も詰まるこの瞬間、誰もが脇に拳を握り締め、次の言葉を待ち望む。
この世界の偉業の瞬間に立ち会うことを、おそらく彼らは生涯の自慢になるだろうか。
「全階層を突破した!もう一度言おう、紅蓮の迷宮は完全制覇された!」
『うおおおおおおおおお!!!!』
この時、ここ「迷宮監視地区」の地が揺れた。
今までのように悲しみや不安、絶望による行き場のない叫びではなく
これから先何かすごいことが起こる
今この瞬間から始まるのだと
理由なき喜びからくる叫びによって
この感情に確信はない
だが彼らにはわかるのだ
未来は
世界は
変わり始めると
―――今回の取得称号―――
偉大なる先導者
お笑い評論家
初めの迷宮攻略者




