41話 出したいときは出せばいい(体験談)
いや~暑い!むしろ熱い!
皆さんも私のように暑さにやられぬよう気をつけてください。
(あの~、すみません。ちょっといいですか?)
亜神の二匹を労っていると、迷宮核の移動中であるはずのルルが話しかけてきた。
(問題はないが、もう迷宮核の方は終わったのか?)
(そのことなんですけど――――――――――――)
慌てた様子のルルの説明は容量が得ずにこちらも状況が判断できない。
何度も落ち着いて話すように促しても同じ結果となるのでしかたなく現物を目視しておこうと、こちらから出向くことにした。
亜神たちは「とっても危ないでしゅ!行くのでしたらご用心を!」と例の爆発を危惧していたので守りを固めておく。
迷宮核の反応がある場所へ行くまでの間に、いくつもの肉片や血液が先ほどまでいた場所に向けてピョンピョン、ズズズズッっと移動しているのが目に入る。
肉片が邪魔になり思うように動けない内臓たちを助けていると、急にブワリと鳥肌がたつほどの不快感が身を包んだ。
腹の底から沸き起こる気持ち悪さが、どうにも慣れない。
「これがルルの慌てていた理由か?だがなぜ今まで気が付かなかったんだ」
今この瞬間まで気づけなかったことを不思議に思いながら、この不快感の発信源に進むが進路方向は先ほどと変わらない。
つまりこの現象は迷宮核が原因の可能性がある。
変わらずに歩き続けていると、ふと残り時間が気になりだしてきた。
どれほどの時間が余っているか《無限収納》から時計を取り出し確認すると・・・・・
「む!まずいな、そろそろ戻らないとリンが起きるぞ」
転移陣の仕掛けが誰にもバレないよう、一人で抜け出してきたためにリンたちの起床時間がタイムリミットとなっている。
このままでは俺がいないことに気づいて探しに来る可能性があるな。
用事を早く済ませるために歩きから早足に切り替え、時間の短縮を図った。
走れよと言われるかもしれないが、この不快感に身体が慣れる速さを考えればこのくらいのスピードが最適なんだよ。
カツカツカツと進むにつれてどんどんと不快感が強くなっていく。
人族の身体は言っては何だが不便だ。
やがてたどり着いた先には迷宮核は見当たらず、肉の山が鎮座していた。
どうやら爆散した亜神の一頭のようだが、この中に迷宮核はあるらしい。
彼女が覆いかぶさっていたから異変に気づけなかったみたいだが、再生を始めた途端に肉が離れていったことにより、ようやく俺が気づけたというわけか。
「はい、今まで抑えてくれて助かったよ。これから処理するからもう戻っていいぞ~」
パンパンと手を叩いて促すと肉の雪崩に巻き込まれそうになったが、ちゃんと俺を認識したようできれいに二つに分かれて俺を避けていく。
露わになった迷宮核は、本来の大きさの数倍にまで膨れ上がって鈍く光り、所々に亀裂が走っていた。
限界にまで込められた-のリソースによって今にでも爆発しそうだ。
吐き気を催すほどの不快感に俺は時間をかけて核に触れると、内包された-のリソースのおよそ半分の量を吸いあげた。
動作自体は一瞬で終わったが、膨大な量を体内に入れたことにより核から手を離した途端、俺は激しく吐
(※お食事中の方は申し訳ありません。「べた褒めされて赤くなったダリエラ」を想像しながら今しばらくお待ちください)
ふ~、若干すっきりした。
この体がレベルMAXであるからこその手段であって、こんなことを普通の生物がやれば辺り周辺を自身の魂ごと消滅しかねない危険な行為だ。
これだけで済んで幸いと思うべきか・・・・・・。
胃袋の物を全て出し尽くしたかのような腹部への空虚感を感じるが、すでに休んでいる時間はない。
随分と吐いていたようで、今すぐ戻らないと不審に思われる。
(‥…うぷっ!ルル、お前の懸案事項はこれの事だろ?早く戻してくれ)
(説明も無しの早期解決に感謝します!え、なんですか?‥‥あ、はい。レイヌ様、今回のお詫びにレイヌ様の愛用武具を送れるよう術式・手続きの許可が下りましたけど、どうします?)
女王の指金か?
ありがたいがこの世界では過剰戦力にもほどがあるからなぁ。
(今は必要ない。気持ちだけ受け取っておこう)
(了解です。う~ん、じゃぁ胃薬とか入ります?)
(‥‥‥それは貰っておく)
ルルとの念話を切るとすぐに目の前の光景が切り替わり、俺は転移陣の前で蹲っていた。
くそ!ただでさえ吐き気を催しているのに強制転移で転移酔いした!
もはや出すものはないにも関わらず、俺は再び吐
(※たびたび申し訳ございません。「大胸筋を見せながら筋肉を語るディラン」を想像しながら今しばらくお待ちください)
うぁぁ、もう勘弁してくれ。
こんな風に酔うという感覚は初めてで慣れてないんだよ。
そういえばと《無限収納》を開くと、ルルの言った通り《胃薬》というアイテムが入っていた。
「飲み薬か。まさか初めての回復薬が胃薬になるとはな」
ガラス製の瓶には黄色い液体が入っており、なぜかラベルが貼られていた。
これは・・・・ウ〇ンの力?
酒酔いじゃないんだがなぁ。
用途が違うだろうとゴクリと飲み干す。
ん?これは・・・・ジンジャーティーか?
「誰だよ紛らわしい悪戯仕掛けたのは!」
思わず叩きつけ割れた瓶を後に掃除した俺の姿はさぞ滑稽だっただろうな。
「レイヌ様、こちらにいたんですね。ところで何を?」
「聞くな」
最後の一欠けらを回収し《無限収納》に放り込んだところで、俺を探しに来たリンがやってきた。
「探しましたよ?起きたらオンブルさんが外で真剣な顔していましたし、テントにもいなかったので」
「悪かったな、ちょっと転移陣を調べていたんだ」
スクっと立ち上がり、あたかもさっきまで作業していた風を出すために丸めた羊皮紙を無造作にズボンへと押し込んだ。
用は済んだとリンの背中を押してみんなが待つ場所へとようやく戻っていった。
「おかえりなさいませ」
焚火を前にパサリと呼んでいた本を閉じたオンブルは、俺たちの為に湯を沸かしていた。
どうやらお茶の準備をしていたようだ。
地下で火を起こすことに危機感はあるだろうが、迷宮内は常に一定の環境で固定されているので、焚火をしても酸欠にはならない。
本当は胃が空っぽなので先に食事にしたいんだが、ディーもダリエラも寝ている今は我慢しておこう。
どうせ先に食べた!ずるい!とか言い出すに決まっている。
特にダリエラがな。
「おう、ただいま。とりあえず陣の転写は終わらせた。この調子だと昼には帰れそうだな」
「それはそれは、相も変わらず我が主様は仕事が早いですね」
クスクスと控えめに笑うオンブルは俺の考えた設定を理解し、話を合わせてくれた。
今だに胃がムカムカとしているのでお茶を待つ間に、今転移陣を羊皮紙に記すため、オンブルの読んでいた本を焚火へと放り込み、トサリと床に座り込む。
彼女が呼んでいた物が俺の盗撮写真集でなければこんなことはしなかったんだがな。
「あぁぁぁ‥…これから複製するところでしたのに」
「やってみろ、その時は家への出入りは一切許さん」
風呂場での写真があったので、間違いなく現場は我が家だ。
というかあれが原本か、燃やしておいてよかった。
「あぁぁ‥…後で見せてもらおうと」
リン、お前もか。
ジト~と見つめると目をそらされた。
後ろめたいならしなければいいだろうが。
「はぁ~。ところで我が主様、転移陣の方はどうでしたか?」
「よくこの空気で普段に戻れるよな・・・・。陣の方は条件付きの空間魔法が陣化されたもんだったよ」
「空間魔法!?あの難解な魔法の陣が存在したのですか!」
ここでリンが勢いよく食いついてきた。
魔法の中でも特に発現が難しい空間魔法だからな、誰でも使える陣としての形は驚愕ものだろう。
「もしかしたら出土品のような古代の遺産かもな。現代では再現不可能な形だった」
便利な言葉「古代の遺産」がここまで便利とはな。
今よりも発展していた時代のものなら納得するだろう。
「再現は無理なんですか、残念です。では条件とはなんですか?」
「《到達者(紅蓮の迷宮)》の称号が必要だ。俺達みたいに1階層からここまで順を追ってこれたら貰えるもんだ」
「では実質我々にしか扱えない、と?」
「だな。一人に付き最大2人までは同行できるらしいが、自由な使用は俺達だけだ」
本当はそれ以外にも《限界を知る者》《スーパーメイド》《素潜り名人》といった全く関係のない称号が必要とされていたが、経年劣化で陣が壊れかけていた影響だろう。
幸い陣を修正する道具は《異世界マーケット》から取り出したのですぐに対応はできた。
いつやったのか?
強制転移の後に口を押さえながらちまちまとな。
あの惨事の原因の一端を担ったのは間違いなく陣の修正道具だったとだけ言っておこう。
あの匂いは凄まじかった。
オンブルに差し出された赤茶の香りで上書きするように長く香りを楽しむ俺を、二人は不思議そうに首を傾げていた。
ディー 「クカ~・・・・ク~カ~(熟睡中)」
ダリエラ 「・・・・・・(ジッとディーを覗き込む)」
レイヌ 「いつからあの状態なんだ?」
リン 「え~と、私が起きたときには既に」
―――― 今回の取得スキル ――――
・異世界マーケット→スきルが存在しマせん
現ザイ新たナすキル取得はテい止しテおりマす
―――― 今回の取得称号 ――――
・到達者(紅蓮の迷宮)
・苦しみを知る者
・マーライオン(←ルル、これ女王が関わってるだろ?)
ビキリッ




