40話 血の池地獄は苦労の証
Twitterでもお伝えしましたが、ユニーク10000突破!
ありがとうございます!
空間を侵入した先は血の海だった。
比喩ではなく本当に血の海なのだ。
幼い姿の俺とは言え、足首にまで浸かる血が見渡す限り続き、無数の血液の滴が空中に漂う。
俺は邪魔だなと思いつつも風魔法を使い、通り道にある滴を退けて歩を進めた。
この光景を作った原因は分からないが、今は迷宮核と亜神たちを探すことが最優先だ。
まぁ迷宮核はともかく亜神についてはこの光景で大体どうなっているかわかっているがな。
俺はこの場所の状況を把握するため再び魔力を放つが、血液が漂うため《脳内地図》では反応がすごいことになっている。
判別に時間がいるなぁとうんざりするが、幸いというべきか一つだけ違う反応を示すものがあったのでほっと胸をなでおろした。
(ルル、迷宮核は見つけた。座標位置を送るから元の場所に動かしてくれ。ルル?)
呼び掛けに反応しないルルに眉をしかめて再度問うが、ルルからはなんの返事も来ない。
(ルル?ルルリア創造神!!)
(ルールーリア様、主長様が呼んでいますよ?)
(え?あ、はい!わかりました!・・・・・ところで何を?)
なんだこいつは、この忙しいときに話を聞き逃しやがって。
・・・・・・・・ふ~、落ち着け俺。
山積みの問題を前に気が立ってるんだ、さすがに八つ当たりは情けないぞ。
(迷宮核を見つけたんだが、それよりも気になることがあったか?)
(え~と、実は大問題がたった今発見されました)
またか、またなのか。
(今度はなにがあった)
(レイヌ様の質問の前に一つ聞きたいんですが、今何をしたんですか?)
ん?どういうことだ?
どうもこうもお前が付けたスキルだろうが。
俺は彼女が何を気にしているかわからないので、動作の一つ一つから説明をすると「えぇー・・・」となぜか落胆声をあげた。
(なんだ、なにがいけなかったんだ?)
(その・・・《脳内地図》には《周辺状況の察知・観測》の能力は備わってないんです。《一度通った場所を脳内へ刻んで地図化する》スキルなんです)
(いや、現に今見た通りできたんだが。じゃぁ俺が使っているこれはいったいなんなんだ?)
(え~と、ん~と。すみません、該当する既存スキルはないです。つまりは私も生み出していない新しいスキルですね、さすがレイヌ様!)
(持ち上げて誤魔化そうとするな)
まさか俺自身が変質しているとは思わなかった。
だがこの世界におりてそこまで時間は経っていないんだぞ?
短時間でのこの変化、果たして-リソースが原因なのか?
こんなに影響が出るほどの濃さを身体に受けたのなら真っ先に俺自身が気づくはずなんだが。
あと原因があるとすれば
(俺自身、+のリソースが原因か?)
世界に巻くための不足していた+のリソースを直接打込むために自身に貯め込んでいたそれが変化をもたらした。
そういう可能性も、というかそれしか今は見つからないな。
(はぁ~。後で原因の特定とその他スキルの確認を頼んだ。今は迷宮核を戻してくれ)
(え、怒らないんですか?)
(怒鳴られたいならそうするが?)
(そんなことないです!さー張り切ってお仕事しまーす!)
ようやく動き出したルルの声にフフッとつい笑った。
うん、俺も気持ちが落ち着いてきたようだ。
迷宮核をルルに任せたので、もう一つの用事へと取り掛かるために迷宮核のある方向とは別へ進む。
それにしても血液が邪魔しょうがない。
いちいちどけるのにも魔力を使うから何かあったらどうするんだよ。
使った傍から回復しているので常に万全状態ではあるけどさ。
などと特に意味もないことを暇つぶしに考えながら進んでいると、《脳内地図》・・・・もう《脳内地図》じゃなかったな。
なにかのスキルが生命反応をとらえた。
というか目の前に降ってきた。
「んっしょ、んっしょ、ふ~。だいぶ集まりましゅた、まだ動けしょうにないのでしゅか?」
「まだまだでっしゅ。後は両目と海馬が欲しいでっしゅ」
降りてきた一対の羽をもつ二匹のリスは俺に気づかず、血液の一つ一つに手を口を突っ込み何かを探していた。
「無いでしゅ無いでしゅ」
「ならあっちに行くでっしゅ」
僅か数秒で辺りの滴全てを探し終えるとまた移動を始めようとする。
って待て待て!
「お前たち、無事でよかった・・・か?無事でいいよな?」
「むみゅむみゅ!主長しゃまでしゅ!」
「本当でっしゅ!お久しぶりでっしゅ主長しゃま!」
舌っ足らずな喋る彼らは振り向いて俺に気づくとペコリと挨拶をした。
だがお世辞にもその身体は酷い有様であり、一匹は頭部のみで両目がなく、その頭部を抱える一匹は右足と尻尾が千切れていた。
なにがあったか聞く前にどうやら彼らの身体を探す方が先になりそうだ。
「そんな怪我までして頭を下げなくてもいい、俺も残りの部位を探すから」
「おや、口調が以前と違いましゅ!でもこれはこれでいいでしゅ!」
「主長しゃまのお顔も初めて見ましゅた!感動でっしゅ!」
「ははは、ありがとう。とにかく急ごう、今迷宮がどうなっているか説明もしたいしな」
はしゃぐ二匹を宥めながらもう一度魔力を放ち、今度は彼らの身体を探し始めた。
ふむ、いくつかは見つけたが相当にばらけているな。
これはディーたちが起きるまでに戻れそうにもない。
そこでルルにこの空間の時間経過速度を速めるように伝え、幾分かの時間を作った。
普通はこんなに簡単に時間操作などしてはいけないのだが、もともとこの場所は何も用途もない故に他世界に影響なしと判断した。
二匹は「ありがとうごじゃいましゅ」とぺこぺこ頭を下げてきたのでまた宥めるはめになった。
「お、右目があったぞ」
「わー!これで僕の頭は全部そろいまっしゅた!」
「よかったでしゅ!よかったでしゅ!」
手分けしてかき集めた身体から丁寧に戻していく二匹は嬉しそうにステップを踏み鳴らす。
正確には一匹抱えられて、で二匹ではないが。
「これで後は体を戻しぇます、ありがとうごじゃいましゅた!」
「まっしゅた!それかりゃ、図々しいのは承知でっしゅが、あともう一匹助けていただけましぇんか?」
「もとよりそのつもりで集めてたんだ」
俺は《無減収納》から魔力で包んだ見た目肉塊をそっととりだし告げた。
「なら安心でしゅ、彼女は脳みそまで弾けてしまっちゃので自力で再生が出来なかっちゃんでしゅ」
「しょれだけ脳が集まれば後は一人でできまっしゅ」
こうして喋る間にも肉塊はウゾウゾと動き一つになろうとしている。
少し手がくすぐったいから洗った皿に置いておいたが・・・・・うん、見た目が悪い!
二匹もそう思ったようで「うわぁ~」と皿から遠ざかる。
もう一匹の亜神が復活するまでの間に二匹から何があったか聞き出すと、やはり-のリソースによる迷宮核暴走が起きたようだ。
「ぼきゅたちいつも通り迷宮核を操作してたんでしゅ」
「しょーしたら急に核がブルブル震えだしたんでっしゅ」
「ぼきゅたち頑張ってとめようとしましゅた」
「数百年くらいがんばりまっしゅた」
「「しょしたらドカーン!ってなった!」」
迷宮核は-のリソースの保管の役割もあるが、さすがに保管容量の限界になり貯めこんでいた物が放出され、迷宮の異常に繋がったらしい。
二匹は管理も満足にできず、ごめんなさいと頭を下げてきたが、原因は彼らにはない。
この件は不問にし、むしろ体を張って止めようとした勇気とこちらのミスについて頭を下げると、彼らは畏れ多いでしゅ!と、下げた俺の頭を必死に下から支えていた。
これ以上続けると逆に彼らの疲労が濃くなりそうなので、言葉に甘えて顔をあげるとホッと胸を撫でおろした。
「主長しゃま、あまりぼきゅたちを困らせないで欲しいでしゅ」
「こんなところ見られたらオンブルしゃまに何をしゃれるか・・・・」
「あいつが何か暴力でも振るおうというのか?」
もしそうなら流石に黙ってはいられないぞ。
「いえいえ、暴力はないでしゅ。でも・・・・」
「ぼきゅたちの記憶を覗いて主長しゃまのシーンを永遠リピートされしょうでっしゅ。ぼきゅたちは再生機器ではないんでっしゅ!」
あいつも創造神の第二席なんだからそんなことはしないさと二人を慰めるが・・・・すまない、否定が出来ないんだ。
心の中で二匹に詫びているとどうやら脳の再生が終わったようで、皿の上には大きな脳がプルプル震えていた。
「ここまでくればもう大丈夫でしゅね、彼女も放っておけばすぐに全身元に戻るでしゅ」
「そうだな。この場所の使用許可は君たちに出しておくから三匹ともしばらく休んでいてくれ」
「やったでっしゅ!やく1000年ぶりの休暇でっしゅ!」
うぅ、こんなにまで酷使してすまないな。
目からこみ上げてくるものを拭い、慰労代わりに二匹の頭を撫でた。
他の迷宮も同じことが起きている可能性も高いので、改めて今回の件が解決した時は亜神、神共に特別ボーナスと有給を渡さなくては!と深く心に決めたのであった。
亜神A 「ぼきゅたち元はただの鼠でっしゅ!」
亜神B 「なぜ亜神になれたかというと・・・・」
亜神A・B 「「続きはWEBで!!」」
レイヌ 「この場がWEBなんだが?」




