38話 放置された玉座
遅れました(/ω\)キャッ
「なぁ、向こうに変なもんあったんだけど?」
夕食を食べ終わり、各自で装備の点検をしていると用を足しに行ったディーが首を傾げながら訪ねてくる。
指さす方向を見ると長い廊下の奥に続いていた。
おそらく階層主との戦闘はこの先で本来行われるはずだったのだろうが、その本人(?)が飛び出してきたから結局俺たちはこの先を確認していない。
どうやらディーはそんな未確認場所まで行ったようだが、そんなに用足しを見られたくなかったか。
いや、別に見たいわけじゃないがな。
「なにかあったか?」
「・・・危険そうなもの?」
「う~ん、どうなんだ?初めて見たから判断がつかねぇんだよ」
迷宮攻略自体が最低でもこの大陸初な為、迷宮の最奥に何があるかは知られていない。
そして俺も迷宮の細部までは知らないので明確な答えは出せない。
「とにかくさ、レイヌさんの鑑定で調べてくれねぇか?下手に触れないからよ」
「おう、わかった」
こういった慎重な判断は非常に助かる。
もしその正体不明な物がトラップだった場合、迂闊に触れて全滅なんてことも起こりそうだからな。
リンとオンブルをテントに残し、ディーと俺、そして《魔力視》のスキルを持つダリエラの三人でその場所へと向かう。
廊下は長く、足音が随分と響く。
「・・・時間かかる。・・・こんなに長いんだね」
「だよな!もういないからいいけどよ、奥に迷宮主がいるならこうやって歩いてるだけで気疲れが半端じゃねぇぞ」
「それも含めての迷宮主なんだろうな。で、ディーが見たというのはどんなものだ?」
危険がないためダラダラ歩いてはいるが二人とも見るべきところは見ている。
後にギルドや陛下に報告するんだ、感じたことはそのまま伝えておくか。
「ん~とな、なんか変な模様が描いてある光る円とでっかい水晶だ。水晶の方は赤みがあったからルビーかもしれない」
「・・・迷宮名物、お宝かも」
迷宮は外では考えられないような環境から特殊な素材が溢れている。
宝箱もその一つであり、魔物蔓延る場所にポツンと置いてある宝箱からは、まさにお宝というべきものがたくさん入っている。
宝石や鉱石、地図や魔法が付与された通称《魔剣》などなど。
ちなみにほとんどが入りこんだ冒険者が置き去りにした物であり、吸収後に変質して魔剣になることもある。
だが言ったように「なることもある」なので宝箱からハズレと言われるガラクタが入っていることもあるので、過度な期待はしないほうがいい。
「お宝かぁ・・・・・・プッ!」
「・・・ディー、今なんで笑ったの」
「いや、だってさ、お前が3階層で拾った奴が・・・・ククク・・・」
「・・・なんで笑ってんの?」
そういえばダリエラが3階層で見つけた宝箱には下着一枚だけ入ってたな・・・・・・男用の。
「だってよ、ワクワクして開けてよ、一枚って・・・・一枚って・・・・」
「・・・なんで笑ってるの?」
言い忘れていたがディーを先頭に俺、ダリエラの順で縦に並んでいるんだが、気づけディー!
一見穏やかな声だが、振り返らなくても俺にはわかる。
ダリエラは相当にキレてる!
「ディー、誰にでもあることだ、笑うなよ」
気づけ俺の気持ち!
「だってその一枚、おと、おと・・・」
止めろ!その続きを言うんじゃない!
「男物のブリーフって・・・・アハハハハハハ・・・ぐぼぉあぁ!?」
「・・・ディー、遺言は必要?」
「殴ってから言うなよ」
とうとう禁句を発言したディーは、ダリエラによる心臓へのコークスクリューによって前方へとバウンドしながら飛んでいった。
あの野郎、無茶しやがって。
「・・・師匠、あれって誰にでも起こるの?・・・パンツって誰でも出てくるの?」
殴るために俺を追い越したダリエラはそう尋ねながら振り向くと、ハイライトが消えた瞳で俺をジッと見つめてきた。
「まぁ、な。お前もギルドで調べたと思うから詳しくは省くが、ここで死んだ者が身につけたものが入ってるなら下着があってもおかしくはないさ」
「・・・ふ~ん」
納得してくれたか?
とはいえ誰が悪いかと言えば全部ディーであるのであいつに関しては自業自得、慰めもない。
とにかく進もうかとダリエラの背を押して再び歩き出し数分後、顔を青くさせビクンと痙攣する無残なディーを回収した。
仕草がやたら女性らしいくせに女心がわからん奴め。
しばらくすると廊下が終わり、広々とした部屋に出た。
周囲を見ると迷宮主が討伐され機能しない大砲や、ドロッとしたタール状の可燃液が部屋をぐるりと囲っている。
まるでアルバにある玉座の間に闘技場をミックスした感じだ。
「おぉ、あれだあれ!」
「・・・ほんとに光ってる」
俺に引きずられていたディーは部屋の中心を指さしやっと立ち上がった。
ダリエラの声の先を見て見ると、ぼんやりとした光が下から射すのがわかる。
そしてその奥には球体状の赤みを帯びた水晶体が浮いていた。
「奥にディーの言っていたルビーっぽいものもあるな。だが先にあの光を調べてみるか」
ディーと戦闘を交代し、一直線に歩を進めていく。
ディーとダリエラはトラップがないか慎重にしているが、主がいなくなった時点で罠は全て止まっていると伝えておく。
大した距離は無かったのですぐに目的の物まで近づき、光源である床を見ると二人も危険はないと安心し横から見下ろした。
「あ~、これが光ってたのか。なんだっけこれ?たしか魔具に似たようなもんが付いてたような・・・・」
「・・・これ陣だよ。・・・でも見たことない形してる。・・・紙に写すから師匠、手元照らして」
光っていたのは床に刻まれた陣だった。
幾何学模様がいくつも刻まれ、確かに今市場に流れる魔具に書かれた陣と比べると高度な魔法が表されていると見て取れる。
【陣(指定型転移魔法陣)】
指定された場所のみ転移可能な陣。
この陣は紅蓮の迷宮最奥までたどり着いた者のみ使用可能とされる。
指定転移先【迷宮入口前方10m地点】
しっかりと伝えた脱出用出口が用意されているようで、どうやらルルは俺の言ったことを最低限守っていたようだ。
だが長年放置されていたのか所々の線が歪み、数度発動すれば壊れてしまうほど劣化が激しい。
こういった管理は亜神がやっているはずだが、やはり何かあったのか?
「ランプは置いておくからそのまま続けてくれ。ディー!もう一つの方を見に行くぞ」
「おう!金にはなんのかな?」
なるだろうがそうすると迷宮が消滅して一部の物資流通が止まるから止めてくれ。
宙に浮く水晶体に近づいても特に反応はないく、ただゆっくりと上下に動くだけだ。
触れてみても決まった動き以外はせず若干の暖かさがある。
【迷宮核(紅蓮の迷宮)】
迷宮を管理する魔力の超圧縮結晶。
生物が触れることにより一定まで魔力が抜け、迷宮内の罠・魔物の活動が100年間穏やかになる。
迷宮核自体が魔力を生成し、永久機関にもなる。
更に破壊により迷宮は消滅し、永遠に世に現れることはない。
破壊できれば・・・・の話だが。
破壊不能が設定されています。
これが迷宮核か。
最後の報告から随分と形が変わったものだ。
元はひし形、大きさは人族程度だったはずだが、これさえも変質してしまったようだ。
そしてその報告は俺が目にするまでいまだにないと。
「こりゃ《迷宮核》という物らしい。破壊されれば迷宮が消えるんだと」
「マジか!?だったらさっさと壊しちまおうぜ」
「まてまて、これを壊すとここで採れる鉱石とか薬草もろもろまで全部消える」
「でも危なくねぇか?」
「生き物が触ると100年間は活動が大人しくなるんだとよ。それに《破壊不能》とわざわざ説明があるんだ。ここで無理やりどうにかしようとしても損しかないだろ?」
「う~んそうかぁ。さすがに俺達だけじゃ判断出来ねぇよな」
「情報だけ持って帰るか。あとは国とギルドに任せよう」
今は調べられることはないと肩を組み二人でダリエラの元へと向かった。
転移陣はあった、迷宮核もあった。
となれば不安はあるが、あの機能が使えるかもしれん。
(オンブル、廊下の先で転移陣と核があった。変質はしているが下に行けるかもしれない)
(では亜神たちをお尋ねに?)
(あいつらが今なにをしているか気になるからな。現地に降りないと直接会えないとは、ルルもなぜこのような面倒な使用に・・・・・)
(このようなことは想定していませんでしたから仕方のない部分もあるかと。そこは後の対策として我々がフォローに回ればよいかと)
(そうだな、こういう前例ができたと捕えておくか。とにかくことによっては時間がかかりそうだ、寝静まる頃に俺が見に行くからお前は)
(何かあった場合の対処の為にお待ちしております―――――――ゴシゴシ)
(頼んだ。ところでなにか音が聞こえるが?)
(ちょうど用を足していたので。よろしければ音をおk―———)
ブチン
‥‥‥‥さて!根回しも済んだし今はテントに帰ることだけを考えるか。
最後は何も聞かなかった、そう聞かなかったんだ。
「―———でよ~、美強のやつがその時・・・どうしたレイヌさん?そんな《身内の痴態を目撃した親》みたいな顔して」
「なんでもない。というかやけに具体的だな」
ダリエラ 「・・・これをあげる」
ディー 「これって、あの男用の下着か?やめろよ・・・笑っちまう・・・」
ダリエラ 「・・・履け」
ディー 「え?」
ダリエラ 「・・・二度は言わない。・・・罰と思って」
ディー 「・・・・わかりました(泣)」
爆笑、ダメ、ゼッタイ!




