37話 紅蓮の迷宮 13
PVが50000を超えました!
ありがとうございます。
「いってぇ・・・・」
俺は腹をさすりながら魔物を見る。
幸いにしてこちらの防御力と防具のおかげで怪我はないが、立ち止まる理由は痛みが原因ではない。
目の前でカウンターを喰らい悶える魔物が先ほど俺の束縛を破壊したからだ。
若干忘れていた節もある黒杖は使わなかったが、間違いなく本気の魔法だった。
どんな方法で破ったかは分からないが、こいつの危険度は一連の動作で跳ね上がったのは確かだ。
もう手加減はできないと黒杖を腰から抜き構える。
「これでも避けれるか?『浮漂焔』」
構えた黒杖の先からいくつもの火が生み出される。
炎というには小さすぎるその火は一見受けてもダメージは少ないように思うだろう。
実際この魔法そのものに攻撃力はないがその代わり。
KyalaLalaGaloloHyaaa!!!
火の一つが魔物の頭の一つにそっと触れた瞬間、その部分のみが燃え上がり、魔物は叫びをあげる。
この魔法は状態異常である「燃焼」を引き起こすもので、燃える部分は一定時間燃え続ける。
だが長続きはしなかったようで、パチュン!という音が二度響くと燃える頭を自ら引きちぎり、こちらに投げつけてきた。
目玉が弾け、視力を失った分、捨てた方が得策と判断したんだろうな。
だがその判断は遅すぎる、と投げられた頭部を一刀に切り裂き、残りの火を魔物へと向かわせた。
無数の火は次々に魔物を包み、まだ半分近く数が残ってはいるがいたるところが炎に包まれもはや場所を探す方が困難になる姿に変わっていく。
炎は消えず燃え続けることから今度は逃げられないと俺は判断し、改めて神魔法の詠唱を始める。
『私はいつも見つめていた。貴方の傍で見つめていた。無垢なる時も・・・(!?)』
は!?唱え始めた途端、魔物を覆っていた炎が掻き消えたぞ?
どうなってる!
これは、とっとと始末しないと・・・!?
『貴方の目の前に私は・・・・・・』
詠唱が止まらない!
それだけじゃない、体も動かずスキルも使えない。
いったい何が
「ブハッ!」
二回目の攻撃、しかも顔面ときたもんだ。
「つか顔殴んな!口内をちょっと切っただろうが!・・・・ん?」
口が動く・・・手も足もだ。
さっきと今は同じ状況、そして共通点は。
「原因は神魔法かよ」
どちらもこの魔法の詠唱中に起きたことだ、おそらく間違いないだろう。
詠唱中は行動・スキル・魔法の使用不可ってところか、威力を考えれば相応な代償だろうが。
「使い勝手が悪いな」
ルルもなんとも微妙なスキルを作ったもんだな、まぁただでさえ高威力の魔法なんだ、全力を使うこともないか。
「うん、それなりに価値あることは分かった。実験はここまでにして・・・・・終わらせるか」
魔法から逃れた理由は解決したとしても(俺が悪かったんだが)、こいつが危険なことは変わりないからな。
スラリと太刀を抜き構えると魔物は怯え、後ずさる。
一歩進めば向こうは数歩下がる。
再生・増殖能力は厄介だが、塵になるまで焼き尽くせば問題ない・・・・・
「ハァッハァッ、いた!無事かレイヌさん!」
「でぃ、ディランさん、大声を、出しては!」
突然の乱入者を探すと魔物の後ろ、上層への階段からこちらを除くディーとリンの姿が。
あいつら実はそこそこ仲いいんだよな・・・・・・って違うだろ!
「馬鹿野郎!なんで来た!」
俺の怒声を聞いて二人ともビクリとし、何かを言いかけるがその前に自分たちに向かってくる魔物を見て硬直した。
「逃げろ!」
俺は叫びながらも魔物に向かい《無限収納》から取り出した短槍を投げる。
だが短槍は魔物の手前で止まり、ドロリと溶けて地に落ちた。
吸収したどの魔物の能力かは知らないが関係ない、短槍が溶けたと同時に立ち止まった足を再び動かし手中に魔力を集める。
火魔法を放つが向かう先は魔物ではなくなんの変哲もない壁。
何を遊んでいるんだ!と怒られるかもしれないがこっちも理由はある。
魔法の当たったか所からガシャンと音を立てて落ちたのは大砲。
向いていた方向から言って俺ではなくディーたちを狙ったものだ。
一つ撃ち落とすと待ってましたと言わんばかりに壁からずらりと大砲が覗き、一斉に炎の弾を打込んだ。
もちろんディーたちに向けてだ。
「迷宮主の能力か・・・・邪魔だぁぁぁ!!」
周囲に無数の《炎剛矢》を放ち一つ一つ破壊していくが、そのせいで一瞬魔物から目を離した。
その一瞬で魔物とディーたちとの間は縮まると、慌てたようにリンが一つの瓶を魔物に向かい投げつけたが・・・あれは?
瓶は回転を加えながら魔物に当たると中に入った液体が飛び散り、触れた部分からシューシューと煙が上がっていく。
魔物は痛みか驚きか、身体中を掻きむしると足をもたつかせ走る勢いのままディーたちの真横へと突っ込み勝手に自爆した。
嗅ぎつけた匂いはやたらとスッとした刺激・・・・《清涼液》を投げたのか、予想外だが好都合!
追いついた俺は、壁に縫い付けるように背後から魔物と壁を太刀で貫き、長い戦いに終止符を打った。
・・・・長引いた理由は半分以上俺のせいだけどな。
「演舞《流れ花火》」
太刀が真っ赤に燃え上がり、魔物を体内から焼いていく。
炎は魔物の身体をまるで血液のように巡り、全身にいきわたるまでさほど時間はかからなかった。
苦しさから暴れる魔物の細かな傷からは体内の炎が行き場を求め吹き出すが、硬い皮膚のおかげか外観はそれほど損傷はない。
俺が太刀を引き抜くと残ったのは鱗や爪といった外表の特に硬い部分のみで、後は真っ白な灰となり音を立てて床へ落ちる鱗と共に空中に待っていく。
そんな勝利は脇に置いておき、太刀を鞘へ戻し黒杖を腰へさすと、俺は一直線にディーたちの元へと歩を進める。
うん、二人とも俺を見て怯えているな。
わざわざ危険地帯に入ってきて死にそうになったんだから当然だ。
これで金ランクなんて高位の冒険者なんだからギルドのランク基準は見直して方がいいんじゃないか?
さてさて、ではご期待に応えて怒るか。
それも全力でな。
「お前たち・・・・・」
「レ、レイヌさん。ごめん、あぶねぇのは分かってたけどよ・・・・・」
「私たちも・・・レイヌ様が心配でしたので、あの・・・その・・・」
「「すみませんでしたーーーーー!!!」」
二人してなんともきれいな土下座だ。
所々二人の身体には火傷の跡がみられ、二十階層から相当無茶をしたことがわかるが・・・・・慈悲はない、愛の拳を喰らえ!
ゴン、ゴゴン!
頭を上げる最中に拳骨を降ろしたせいで床に頭を打ち付けダメージは二倍になったが、我慢しろ。
「ったく、身の程を知って戦いを挑めよ。お前たちにはまだまだこの場所は早い」
小言を言ってもどうやら二人には聞こえていないようでピクリとも動かない。
「それじゃ次だな・・・・・出てこいダリエラ!オンブル!」
上層への階段に声を張り上げる。
カツン、カツンと響く音と同時に現れた残りの二人を見つけ、とりあえずオンブルに先ほど破壊した大砲の破片を投げつけておいた。
「お疲れ様で・・・・ブベェ!」
「・・・・・(ガクガクブルブル)」
なにかオンブルが言いかけたが気にしないでおこう。
「・・・師匠お願い、殺さないで」
「俺を何だと思ってる?殺さねぇよ!」
「・・・ディーとリンちゃんはもはや屍のようになってる、けど」
「気絶してるだけだ。そして次はお前の番になる」
ダリエラは小さい身体を更に縮め、イヤイヤと涙目で首を横に激しく降るが・・・・・・慈悲はない。
ゴチン
鈍い音と共にプクリとダリエラの頭に小さなコブができた。
ダリエラもしばらく動けそうにないか・・・・とにかくこの紅蓮の迷宮は攻略出来た。
あとは迷宮核に触れて証を立てるだけなんだが、一人でやったら三人とも文句言いそうだな。
「では今日はここで休息を入れましょう、ここまでの道のりでリンたちも疲労が濃いですし。我が主様、テントをお願いいたします」
「だから、お前はなんでそんなに平然としてるんだ・・・・」
あの鉄の塊はそれなりに力込めて投げたんだぞ?
オンブルの顔面に当たった瞬間に砕け散るほどの威力だったんだぞ?
そんな俺の考えなどお構いなしに取り出したテントを組み立てるオンブルにため息を吐く。
地上に帰ったらオンブル専用の新しい封印具でも作るか。
おそらく無駄になるだろうけどな。
設営をオンブルに任せて、俺は倒れる3人の元へと向かう。
上層と比べても、この階層はむしろ寒いと感じるほどの気温だからな、風邪をひかなければいいんだが。
《無限収納》から3組の毛布を取り出しもう一度ため息を吐く。
迷宮に入ってから、異常事態やオンブルのせいで数えるのもバカらしい数のため息はしてきたが、このため息だけは何度でもしたい気分だ。
「はぁ・・・」
片手に毛布、片手にいつの間にか取り出した火のついていない薬煙を遊ばせながらどこかホッとしたような顔でいるディーとリンの顔を見て、もう一度ため息を吐いた。
ダリエラ 「・・・止めて、嫌、殺さないで」
レイヌ 「だからしないって言ってるだろうが!」
ダリエラ 「・・・オンちゃんにしたこと思い出して」
レイヌ 「相手は選ぶにきまってるだろう・・・」
ダリエラだけ拳骨の効果音が違うのは相当手加減したからですね。
さてさて、迷宮攻略は今話で完となります。
ですがまだ脱出はしていないので数話は迷宮内でお送りします。




