31話 紅蓮の迷宮 7
遅れてきたG.Wスペシャル!
火、水、木の0時!3日連続投稿!
まずは1本目!
俺としたことが・・・・失態だ。
この世界の魔物が捕食により進化することを忘れるとは。
このままだとリンたちが耐えられるとは思えない。
早期の決着をつけるべく、使わないつもりだった神魔法をためらいもなく使った。
「全員その場を動くな!《裏切りの冷獄園》!」
「!?《暴食濃霧》!」
この場の全てを凍らせる《コキュートス》の冷気が僅かな時間でこの階層を飲み込む。
魔力壁によりリンたちは安全だと踏んでいたが、オンブルが周囲に《暴食濃霧》を撒かなければ危なかった。
しかし神魔法か。
いままで補助としか使っていなかったがやはりこの世界どころかどの世界でも逸脱した代物だ。
状況に適した魔法が頭に出てきて使うが、効果が「周囲を凍らせる」としか説明が無いのは厄介だな。
そもそもこれは魔法なのか?
これに近い力をごく身近で・・・・・
「ぎゃぁぁ!壁がミシミシ言ってんだけど!?」
「・・・私たちここで死ぬんだ。・・・師匠の手によって」
「人聞きの悪いこと言うな、悪かったよ。だがこれであれも終わり・・・・」
「我が主様、あれを!」
「ん?・・・は!?」
オンブルが騒ぎ指さす方向に目を向けると、そこにはいまだ健在のマグマの盛り上がりがあった。
いや、もはや塊と言った方がいいだろう。
巨大だったそれは浮かび上がり、少しづつ、少しづつ小さくなっていく。
だが見ていて安心はできない。
なぜならば《魔力視》によって見えるそれの魔力は弱るどころかますます膨れ上がっているからだ。
「な、なぜあの魔物はレイヌ様の魔法で凍らないのですか!」
リンは歯をカチカチと鳴らせながら叫ぶ。
別に寒くて鳴らしているわけではない。
俺たちがいる場所、そしてあれ以外の周囲は例外なく凍り付き、空気中の水分がキラキラと輝いているからだ。
肌で感じるは熱気ではなく冷気。
ついさきほどまで煮えたぎるマグマに囲まれた環境をこうにまで変えた攻撃に耐えるアレに恐怖を覚えたのだ。
見ればディーとダリエラも目を見開き、徐々に上昇していくアレを見上げていた。
「迷宮の特性か・・・」
「と、特性?」
「迷宮は一層一層が独立した空間だ。時には外の常識が通用しない場合がある」
「ではあの魔物はこちらの攻撃が一切効かないのですか!?」
「マジかよ・・・どうやっても無駄じゃねぇか!」
リンとディーはもはや終わりだと諦めかけたが、まだ早いぞ?
「落ち着け。よく見れば向こう側に一ヵ所色が違う壁がある、おそらくあそこが次の層の入口だ」
「だからなんだよ!」
「次があるならどうにかする手段があるはずだ。たぶん雑魚蛇を全て倒してからじゃないと攻撃が通らないとかそんなところだろう」
「すでに蛇はいませんね、我々、というより我が主様のおかげですが」
「・・・それに雑魚じゃない。・・・一匹でも十分強かった」
「それはあいつが進化するから条件が変わったんだろう。おっと、そろそろ変化が終わりそうだ、構えろよ」
ダリエラ、別に無視したわけじゃないぞ、本当に変化が終わりそうなんだ。
あと言わなかったがあの蛇【守災蛇】はランクSの魔物だ、強くて当たり前だがお前たち相当な数倒したぞ?
ディーがダリエラを慰めているとそれが一際大きな変化を見せた。
マグマの塊が収縮を止め、ゴォォォと音が鳴るほど流れが速くなる。
ゴクリと誰かが息を飲む音が聞こえ、とうとうその時が訪れた。
Ihya・・・・Hyahahahahaha!
「なんですか、あれ?」
「あれは・・・・魔物なのか?」
マグマの塊が弾け飛び散り、それの支配から抜けたマグマが即座に凍る。
残ったのは彼らにとって異形なものだった。
【油炎悪魔】ランク外
それはいわゆる悪魔と呼ばれる魔物だ。
この世界の住民が滅多に見ることない《ランク外》の魔物。
それもそのはず、一匹のランク外がいれば都市の一つは簡単に無くなるのだから。
それにしても
「なんてかわいいんだ」
「「「え?」」」
つぶらな瞳、可愛い手足、体に不釣り合いな大きさのフライパン。
なんてかわいいんだ!
「くそ、なんてことだ!たしかにこれはランク外にふさわしい。これでは攻撃できないじゃないか!」
「落ち着けよレイヌさん!どう見ても気持ち悪いなにかだろ!?つかランク外なのかこいつ!」
「・・・ギョロっとした目、ガリガリの手足、ボーボー燃えるフライパン、どう見ても嫌悪感しか湧いてこない」
「レイヌ様、その、か、可愛いです、ね?」
「はっきりと拒絶しなさいリン。我が主様は完璧なお方だが、どうにも美的センスが壊滅的なのです」
黙っていろオンブル、どこからどう見てもかわいらしい小動物のようじゃないか。
あぁ地獄を思い出すなぁ。
どの世界の魔物も神界や連なる世界の生き物をモデルにしたものだが、あのウコバクたちは可愛かったなぁ。
「我が主様は身動きが出来ません、幸い相手は一匹です。私を先頭にやりますよ!」
「あの、壁から出ても大丈夫ですか?出た瞬間凍ったりなんかは」
「そうでしたね、では魔力壁内に誘い込みましょう。我が主様、出入口を」
「断る、あの子を殺すのだろう。勿体ないじゃないか」
「《暴食濃霧》!」
「おぉぉぉい!」
オンブルめ、なぜか今回はやけに積極的じゃないか。
いつもこうならいいのに・・・いや、今回は止めてくれ!
捕獲して俺の《無減収納》に入れれば悪さできないのだからそうすれば・・・
「オンブルさん、あいつが来たぞ!」
「Hyahahahahaー!」
「私にだけ意識が向くようにします。各員はとにかく全力で攻撃」
「・・・私だとリンちゃんとディーもまとめてやっちゃう」
「では貴女は我が主様をお願いします。おそらく邪魔をしに来ると思いますので」
「・・・私だけ危険度が高すぎない?」
なんて失礼な、俺だって場をわきまえて邪魔などしない!
「Ihyaーー」
「行きますよ!」
その言葉と共にオンブルは【油炎悪魔】に深淵魔法をかけ、自分しか見えないよう仕掛ける。
狙い通りレベルの違いから抵抗できず、まともに受け一直線に飛んでくる。
振り下ろした燃え盛るフライパンを短刀ではじき返すが、一撃一撃で壊しては取り換えを繰り返している。
むやみに攻撃を反らすと衝撃で近くにいるリンとディーが死にそうだ。
そんな二人は後ろから攻撃するがたいしてダメージはないな。
辛うじてディーの拳が纏う火が【油炎悪魔】のオーラを薄めているがそれだけだ。
リンは本体を諦めて足元を狙い体勢を崩そうとしている。
さて、俺も参戦しなければ。
「!ダリエラ、我が主様が動きます!」
「・・・阻止」
目の前でダリエラが両手を広げ進路を妨げる。
「そんなことしなくてもちゃんとやるさ」
「・・・嘘。・・・その刀とかいう武器がオンちゃんに向いてるよ」
「気のせいだ」
「・・・行かせない」
頑固な奴め。
そんなバカなことをしているが意識は戦いの方へと向いている。
【油炎悪魔】は先ほどからと違い、今度はフライパンを両手で持ち大きく横へスイングをすると、どこから出たと言いたい量の液体がオンブルへとかけられた。
しかし余裕をもって避けたオンブルだが、地面にかかる液体はバチバチと音を立てて魔力壁内の温度が若干上がった。
あれは、油か。
避けられたことに怒ったかのようにさらに何度も油を撒くがどれも避けられ気温が上がるだけだ。
「ディー、火を纏うな、引火するぞ!」
「っとあぶねぇ」
アドバイスに即座に反応したディーは火を霧散させただ殴ろうが、逆に拳を痛めている。
「ディランさん、私と一緒に足元を!」
「わかったー!」
即座に標的を変える切り替えの早さはさすが金ランクだな。
「Hyaー、Ihya-!」
【油炎悪魔】はそれでもリンたちの存在は認識できないようで相変わらずオンブルに敵意を向けている。
-のリソースで元より変質しているはず、あれの攻撃は二種類だけなのかと疑問を持つが、一向にそれ以外の攻撃がないな。
「二人とも離れなさい、止めです」
「「了解!」」
オンブルの声に二人が飛びのくと、空中から十数本の短刀やナイフが現れる。
それぞれが下へ落下し、金属音が響く代わりに
ドゴォォォォォォォン!
という爆発音が魔力壁内に響いた。
拡散する爆発を新たに作った魔力壁で包み、リンたちへ届かぬように抑え込んだ。
例え万全な状態でもあの熱量じゃ火傷じゃ済まないからな。
だからダリエラ、そんな非難の目を向けないでくれ。
―――― 今回の豆知識 ――――
【コキュートス】
ギリシャ神話において、地獄の最下層に流れる川。
イタリア文学においての最大の古典「神曲」では、最大の罪である「裏切り」を行った者がここで永久に氷漬けにされるとされています。
【ウコバク】
マニアは有名な書籍「地獄の辞典」においてベルゼブブの配下とされる悪魔。
地獄の釜に油を注ぎ続けることが役目。
※Wikipedia参照




