30話 紅蓮の迷宮6
風邪とGWの仕事の忙しさでしんどいです(´;ω;`)
「・・・・見つけた」
俺はそう呟き閉じていた目を開く。
そこではみなが闘う光景が見える、かと思ったが見えたのは赤い壁だった。
もしかしてどこかに吹き飛ばされたかと辺りを見回すと、壁だと思っていたのはどうやらディーの背中だったようだ。
動き回る戦闘スタイルの彼は軽装なのだが、服の背中部分は焼け落ちて肌が露わになっている。
肌自体は汚れてはいるが傷がないことからポーションを飲んで癒したのだろう。
「ディー」
「レイヌさん!?あんたやっと起きたのかよって目から血が出てんぞ!?」
「おぉ失礼。俺を守ってくれたみたいだな、ありがとう」
「~~~!?キレようとしたけど・・・・もういいわ。すぐ戦闘に戻ってくれよ、もう全員限界に近いぜ」
「わかったが、あの蛇共はもうすぐいなくなるぞ」
「何言って・・っておーい!あんた何やってんだよ!?」
俺はディーたちを置いて後ろへと走り出し、そのままマグマへと飛び込んだ。
潜る瞬間に女性陣の悲鳴が聞こえたが返事をしている暇はない。
なぜならば、マグマへと潜ったはいいが俺の周囲にはマグマはなく、見渡せば俺を中心としてドーム状の魔力壁で囲まれた空間に一人立っていた。
この空間はどうやらマグマの中らしく、魔力壁の向こう側には溶岩が流れていくのが見える。
俺は一瞬だけ眺め安全を確認し、後方にあった目的の物へと《無限収納》から取り出した長槍を投擲した。
【魔物収束発———】
鑑定による説明が終わる前に破壊したせいで提示情報の全貌は表示されなかったが、今破壊した浮遊するゴブレットは【魔物収束発生装置】と呼ばれる、ようは魔物を生み出す魔道具だ。
効果は先ほどまでの状況と名前が表す通りに魔物を生み出すのだが、出てくる量が異常だろ・・・。
よく調べたいがリンたちの事が心配だ。
とりあえず残骸を回収するだけに抑えて一刻も早く戻ろう。
「・・・・ところで、どうやってここから出るんだ?」
―紅蓮の迷宮二十層 上部―
行かれてしまった。
我が主様が急に動きを数秒停止させたかと思うと、なんの迷いもなく炎の噴き出るマグマの中へと飛び込んで行きました。
予想だにしていない行動に私もあっけにとられディランの声でようやく現状を理解しました。
えぇ、私を含めて全員がそれは慌てましたよ。
リンなど自分も飛び込んで助けに行こうとしていましたからね。
私もディランが止めなければ二人一緒に心中しているところでした。
冷静になるとあの主様が意味のないことをするはずがありませんでしたね。
主様の潜っていった場所を見ると僅かにですが魔法がかかっていることがわかり、大体の事情は把握することができましたが、主様が気になり戦闘に集中できないリンたちには教えておきましょう。
「ほら、気にしている暇があるのでしたら手を動かしてください」
「いってぇ・・・助かったけどさっきまでのアンタに言われてもしっくり」
「お黙りなさい!ほらほら次が来ますよ?」
「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!いつ終わんだよぉぉぉ!?」
彼は素直でいじりがいがありますが少々うるさいですね。
「レイヌ様レイヌ様レイヌ様レイヌ様レイヌ様・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ま、魔力・・・もたな・・・い・・」
残り二人も別々の意味で危ないのですが・・・・面白いのでこのままにしておきましょうか?
いや、やはりやめときましょう、主様に叱られます。
え、待ってください、叱られる?
もしかして殴られるのでしょうか?
蹴られるのでしょうか?
また火あぶりでしょうか!
なんだかワクワクしてきました!
「オンブルさーーん!?そっちに突っ込む余裕はねぇよぉ!?」
ディラン、私の至福のときを邪魔しないでください。
分かっていますよ、私だって手が足りないんですもの。
ここで二人を守りながらでは私以外死んでしまいますから。
「ほらリン、我が主様なら無事ですよ。いい加減帰ってきてください、そちらに5匹行きましたよ」
「レイヌ様レイヌ様・・・え?キャーー!!」
「ダリエラもポーション飲めば少しは魔力は回復するでしょう。飲ーんで飲んで飲んで~♪」
「・・・がぼがぼぼ!?」
おや、おかしいですね?
〝原初の世界″ではこのように《こーる》をすればどんどん飲めるはずですが・・・・。
「・・・・・・・・・オロロロロ!!」
「レイヌさーん!戻ってきてくれよー!どこいったんだよー!」
う~ん、おかしいですね?
正気に戻そうとしたのですが悪化しています。
どうやって収集つけましょうか。
とりあえず・・・・・裸になりましょう。
「悪い、遅れ・・・・なにやってるんだ?おまえたち」
― レイヌ・イニスティア side ―
すこし手間取ったがようやく上へ戻ってきたら状況が把握できなくなっていた。
まさか回収した魔道具の破片の一部が転送の鍵になっているとはな。
気づかなければ無理やり魔力壁を破壊して脱出していたところだ。
多少マグマが熱かろうがしょうがないかと諦めなくてよかった。
・・・・現実を逃避しても目の前の惨状は変わらないか。
供給源を破壊したばかりだからいまだ蛇共は大量に襲い掛かり窮地からは脱していないがメンバーに緊張感が全く見当たらない。
ディーは泣きながら、叫びながら戦っているしダリエラは嘔吐している、唯一リンだけは身を守りながらも飛び上がった蛇を足場へと叩き落としている。
オンブルは・・・・・あいつはなぜ半裸なんだ?
「お前ら随分と余裕だな。手出ししない方がいいか?」
「て、手一杯です!助けてください!!」
「疲れ死ぬーーーー!」
だったら最初から遊んでないでちゃんとやれよ。
俺は倒れたダリエラに溶岩を吐き出す蛇を蹴り上げ、リンが叩き落とした蛇を一匹一匹踏んで始末する。
しかし魔道具は破壊したというのに生み出された数がすでにかなりのものだったから影響がないように思えるな。
おまけに例の大きなマグマの盛り上がり、あいつだけは先ほどの鑑定でも探れなかった。
こいつも大量に湧いてくるのかと思い、魔力の温存していたがもう心配はないようだし・・・・うん、一掃するか。
「今から障壁を張る、死にたくなかったら全員俺の傍にこい」
「わかりました!」
「ダメだ、囲まれてそっちに行けねぇ!」
どうやらディーは集中狙いされて身動きができないようなので倒れたダリエラを半裸で守るオンブルを向かわせた。
おっとその前に上着を着ろよ。
ほら、ディーが気を取られて手が焼け焦げただろうが。
全員集まったところでそれぞれ貴重な上級のポーションで傷の再生―—どうやら既製品と比べ回復速度が段違いらしいが—―をさせ、ようやく一息つくことができるようになった。
「・・・もう疲れた。・・・帰りたい」
「馬鹿言うなよ、こんなのは承知したうえでここに来ただろぉ」
張った魔力壁内に響く蛇の体当たり音をBGMにダリエラとディーが横になりながらぼやき合っている。
「そうか、ダリエラは帰りたいか。なら約束していた帰還後の肉料理は作らなくていいな」
「・・・え?いやいや、さっきのは冗談で」
「お、じゃぁ俺が代わりに食ってやるよ!レイヌさん、とびっきりのくれ」
「あ、では私は甘さ控えめのお菓子が欲しいです」
「では私は我が主様の・・・ゴホッ!?」
「「「いいから服を着ろ(て)!」」」
ちょっとした悪戯心に他も一緒になってダリエラをからかうが、本人は顔を青くさせプルプルと震えている。
そこまで肉が食いたいか・・・・。
「ダリエラ、冗談だ。冗談だから帰ってこい」
お詫びに収納から干し肉を取り出し、目の前に近づけると一瞬にして消えていった。
「よく食えんなぁ。ところでさぁ、外は大丈夫なのか?つかレイヌさんどこ行ってたんだ?」
ディーの質問に簡略にだが説明をしておく。
特に秘密にすることもないので魔道具の事も話したがリンは渋い顔をし、取り出した破片から顔をそむけた。
「どうしたリン?ってディーとダリエラもか?」
「魔物を生み出す道具ですよ?これのせいで先ほどまで酷かったんです!」
「俺なんか何度死にかけたか・・・レイヌさんの上級とかいうポーションがなかったら序盤で死んでたぞ」
「・・・私は熱気で焼け死んでた」
よく見れば、いやよく見なくても彼女たちの装備はすでに効果を発揮できないほどの損傷だ。
手元にまともな装備もなく、敵に囲まれ、まだ危機を脱してはいない状態でよくここまでリラックスできるなと、呆れではなく感心のため息を吐く。
さすがトップクラスの冒険者だとあらためて感じさせられたよ。
「あぁ~。ここからまたあれと闘うんだよなぁ、嫌になるぜ」
「・・・いくら倒してもきりない。・・・もう魔物は増えないけどそれでもまだまだいっぱい」
「そうですよね・・・・あれ?」
魔力壁の外の様子を見てリンが「はて?」と首をかしげてキョロキョロと辺りを見回した。
「どうしたよ美強、あのでっかいのが動き出したか?」
「いえ、そうではないのですが・・・・・魔物、減っていませんか?」
先ほどから雨のように降り注ぎ、体当たりや溶岩を繰り返し当ててきていた【守災蛇】が減っているというリンの言葉にディーとダリエラは「何を言っているんだ」という顔で二人も見回し始める。
オンブルはジッとこちらを見つめ無言で問い詰めてくるので俺は笑って返す。
実際にリンの言う通り蛇たちは減ってきているはずだ。
魔力壁を張ったとき、攻撃を反射させる仕組みも組み込んだので体当たりしてきた奴らは次々と自滅しているだろう。
溶岩を放ってくる奴も耐性があるから大したダメージは無いだろうが、それでも溶けきれない岩が当たり少しずつ数は減っている。
「あ、マジだ。マジで減ってるぞ!?どうなってんだ?」
「・・・最初と衝撃音が違う、私も同意見だけど・・・」
残りの三人もオンブル同様に見つめてくる。
そこで反射の事を話すとリンは恐る恐る魔力壁に触ろうとしたが、結局こちらへ逃げてきた。
なかなかかわいらしいな。
後はこの蛇共が全滅してでかい魔物に総攻撃すれば
「我が主様、少々お聞きしたいことが」
「ん?なんだ?」
「あのマグマの盛り上がり、急に大きさが増していると思うのですが」
もはや景色の一部と化しているそれはたしかに大きくなっている。
「いよいよ本番・・・・とういうわけじゃなさそうだな。あのままだと天井に届くぞ」
このまま闘うとしたら場所と大きさが合わないだろう。
さすがにルルもこのようなつまらない配置ミスはしないと思うが。
「それから、【守災蛇】達ですが、減りが激しくないですか?」
雨のように降る状況には変わりないが、次軍が出てくるまでの時間がたしかに伸びてきている。
おかしいな、予定ではここまでにあと30分はかかるはずなんだが。
さすがにおかしく思い《脳内地図》で確認しようとしたがこちらも今までと様子が違う。
いままではアナウンスや網膜に画像が映る程度だったのだが、眼でなくスキル名の通り脳内に現れる。
だがルルに問いただす前に移された地図には予想外の情報が記されていた。
「あいつ、【守災蛇】を食ってやがる。進化しようとしてるぞ!?」
――――今回の取得スキル――――
・不明ノスキルガ検出サレマシタ。以後、レイヌ・イニスティアヘノスキル投入ヲ一時中止イタシマス。




