29話 紅蓮の迷宮 5
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―紅蓮の迷宮二十層・階層主エリア―
休憩をはさんで気を取り直したところでようやく俺はニ十階層への扉を開けた。
強大な鉄製の扉を軽そうに開ける俺を数名がじっと見てきたが、実は魔力で動く扉だから力づくじゃないぞ?
扉を開けた瞬間に熱気、いや熱波が襲い掛かり既に戦闘は始まっているのかと大太刀に手を伸ばすが、広がる光景でこの場にいる全員が熱波の原因を理解した。
この階層は一風変わりマグマで満たされ所々に足場となる岩が飛び出している。
均された岩ではなく自然界にあるような無骨な姿で、数は多いが行動しにくいだろう。
広さも広大であり、目を凝らせばようやく反対側の壁が見える。
もやしっ子のダリエラはオンブルが背負い、飛び移りながら移動するが、岩にはこのような環境でも生える苔が生え、どうにも足を取られるから戦闘時には要注意だ。
しばらく飛び回っていると一ヵ所やたらと広く平らにならされた足場が見え始め、上陸前に全員を止めて体調を万全にしておく。
おそらくあそこに降りると階層主が現れるのだろう、昇る熱気対策も怠らないよう特にダリエラに伝えた。
「全員準備できたな?」
最終確認に全員が頷いたところで、俺、オンブル&ダリエラ、リン、ディーの順で飛び移り辺りを警戒するが、何も起こらない。
「起きませんね・・・・何も」
「レイヌさん間違えたか?」
「我が主様が間違えるはずがありません!」
いやオンブルよ、俺だって間違えることはあるからな?今回は違うが。
「もう起こってるさ。全員降りてきた階段側へ寄っておけ」
中央に固まった陣形を崩すように言うと地震が起こり、同時に目の前でマグマが段々と盛り上がってきた。
しかも一つではなく複数。
「って何匹いんだよ!?しかもたぶんでけぇぞ!?」
ディーの悲鳴の通り盛り上がるマグマは次々に今でも増えており、最初に出てきたマグマの盛り上がりは更に高く上がっている。
端に寄っていた俺たちだが、この足場が取り囲まれている現状ではなるべくマグマの近くに寄らない方がいいだろうと中央へ集まり、ダリエラを背中越しに囲んだ。
何故かって?彼女は恐ろしく防御力が無いからだ。
「つかいい加減出て来いよ」
そもそも全部出てくるまで待っている必要はないと石礫で狙撃してみた。
「「「GYOBOOOOOOO!!」」」
一番巨大な物には効かなかったがその他には届いたようで断末魔を上げるとゆっくり沈んでいった。
姿を現さずに消えたので正体がわからなかったが、仲間がやられると怒ったように残りが見に纏ったマグマを脱ぎ空中へと飛び上がった。
【守災蛇】ランクS
複数いた魔物を鑑定すると、どうやらこの蛇たちは防御力が高く、それを利用した攻撃が得意だそうだ。
鈍く光る鱗はまともに攻撃を当てないと滑って逸れそうだ。
「・・・くっ、風の刃が届かない!」
「ダリエラ、一点集中だ!攻撃の範囲をできるだけ絞れ!」
ダリエラが放った〈風送刃〉では攻撃範囲が横に広い分、威力が低くなる。
鱗で滑る可能性はあるが一ヵ所に集中した攻撃であれば鱗を貫くこともできるが・・・・。
「・・・ダメ、私の実力じゃ当たっても効果ない。・・・だったら妨害目的で広範囲に」
「前に言っただろう、イメージだ!普段よりも大量に魔力を使えばその分威力も上がる!」
これは魔忠と闘ったときにわかったことだが、魔力を込めれば込めるほどこの世界の魔法は威力が上がる。
魔忠が初級魔法を上級と間違えた理由はそこにあったのだが、この単純な魔力運用は一般的には知られていなかった。
「魔法にはそれぞれ決まった魔力量を消費」という勘違いと《魔力操作》のスキルの有無が原因であり、無意識に込める魔力を制限、スキルが無いために込めても霧散し魔法に反映されない結果そもそも余分に込めるという考えさえ無くなったようだ。
《守災蛇》の数や強さを考えると、俺とオンブルでギリギリまで体力を削りリンたちに止めをさせたいのだが・・・・。
「ぐあぁ!くそ、手が・・・」
「オンブル!」
「申し訳ありません、こちらも今は」
「チッ。リン、ディーのカバーを!」
「わ、わかりました!」
魔物の数が多すぎる!
今の身体で全力の手数を出しているが、倒しても倒しても次々に飛び出してくる。
しかも階層主と思われるあの大きなマグマの山も待ち構えているというのに、このままではジリ貧だ。
「レイヌ様、この場を離れましょう!一旦この包囲を抜けたほうがいいのでは!?」
「ここ以上に広い足場は無い、全体が見えない以上留まるしか道はないぞ!」
広範囲に魔法を放ち、急かすリンを止めるがいい加減、魔物の数が異常すぎる。
戦闘を始めてからしばらく経ち、目測で数えても最初と数は変わらない。
まるで無限に湧いてくるような・・・・!?
「《脳内地図》」
魔力の波を全域へと放ち察知するこのスキルを連続で使い、より細かい情報を探る。
時に大きく、時に小さく、質を変えた波はそれぞれに反応する物も違い、普段は見ようともしない情報まで入ってくる。
《《脳内地図》により得た情報を提示します。周囲の空気中成分について、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、希ガス、ネオン、ヘリウム、クリプトン、水素、キセノン、水蒸気、二酸化硫黄、水素ガス、一酸化炭素、硫化水素、塩化水素、フッ化水素、四フッ化ケイ素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・続きまして鉱石成分について・・・・・》
「あ・・あヴぁガァァァ!!!!」
こ、これは・・・・・そうだ痛みだ!
急な頭への衝撃に一瞬痛覚によるものだと気づかなかった。
スキルで入ってくる情報を読み始めてすぐの痛みに、思わず攻撃の手を止め膝から崩れ落ちた。
まだ序の口だというのに頭が割れるように痛い!?
なんだ?どうなっている!?
「我が主様!」
「よ・・そみ・・する・・・な!!」
今なお増す痛みに耐えながらも、こちらに駆け寄ろうとするオンブルを止める。
彼女もここで自分が離れれば一気に戦況が崩れることを理解し、俺が抜けた穴を埋めるため攻撃の手を更に早めた。
頭痛を押さえるためにポーションを飲むが引くのは一瞬で、すぐに元に戻ってしまう。
神であった時も、降りてからもこんな事は一度もなかったが、いったい何が起きている。
何度も痛みで意識が飛びそうになりながらもいつでも行動できるよう二本の足で踏ん張り流れる情報を見ていたが
「・・・師匠、後ろ!!」
「・・・・(チィッ!)」
来るのは分かっていたが、スキルに集中しているため身動きが取れない。
攻撃されても大した怪我は負わないだろうからこのまま受けようと身構え・・・・・・たが、何も起こらない。
おそらく誰かが倒したのだろうと意識を切り替え、ポーションを更に飲んだ。
頭痛ごときで次々と消費されていくポーションは勿体ないが、この状況を打開すると思えばしかたがない。
情報をより早く処理するために目を閉じる。
やがて戦闘音が遠くに感じ、周囲の熱すらも感じなくなり、匂いも、唾液の味も消え、ひたすら波を送り、読み、痛みに耐えるを繰り返していく。
「~~~~!~~~~!?」
誰かが何かを叫んでいるが、内容を理解する前にまた作業に戻る。
五感を一時的に捨てなければここまで集中できないことに不便と欠片ほど思うが、次第にそういった思考も捨て情報の海へと潜っていく。
(こいつは違う、こいつも違う、こいつも、ちがう、ちがう、ち・・がう、・・・・・・・・・・・・・・・・・)
「・・・・見つけた」
――――今回の取得スキル――――
感覚強化A
痛覚耐性A
高速思考B
脳内地図作成→シ・・ステム・・・エ・ラーが・・は・・




