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創造主長様のお仕事  作者: 己龍
第2章 子供+仲間+迷宮=???
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28.5話 その頃の子供達


ギン!シャァン!


レイヌ達が迷宮に挑んでいる頃、帝都にある王城地下の鍛錬場では剣がぶつかり合う音が響き渡っていた。


模擬戦なども行うこの場ではこのような音は日常茶飯事ではあるが、ここ最近過去類を見ない光景が騎士や近衛兵が目撃していた。


数組が打ち合ってはいるが、もちろん一方は在中している城勤めの兵たちだ。


そしてもう一方は・・・・。



「甘い!そのような攻撃で体勢を崩せると思うな!」


「う~、硬いよぉ!」


「弱音を吐いている暇はないぞ!」



小柄な人物の攻撃を全て受け止め叱責をする騎士の攻撃に、その人物は細かな傷を作りながらも食いついていた。


いや、訂正しよう。


彼は小柄ではなく年相応の、下手をしたらもう少し上に見えるだろう子供だった。


一見大人が子供をいじめているように見えるだろうが、この模擬戦を見学している者たちからは侮蔑の視線は無い。


むしろ現れるのは驚愕、嫉妬、そして探求心だ。


驚愕は打ち合う騎士の身分のせいでもある。


彼は近衛団長の一人であり、その警護対象はオルバ・レイオット国王・・・・今は敬称も変えオルバ・レイオット皇帝陛下、つまりは国のトップだ。


その実力は冒険者で例えるならば金ランクと言われ、騎士団長たちや他の近衛団長たちよりも強者として王城勤務の兵たちからは尊敬と目標の対象とされている。


そして嫉妬はその彼に眼をかけられ直接稽古をつけてもらっていることについて。


憧れの人物を取られたような感覚に兵たちは少年を羨んだのだ。


最後に探求心、これは近衛団長にいまだ食いつく少年を兵たちは格上と見たからだ。


彼らならば初手で剣が折られ続行不能となっただろう。


しかし少年は傷つきながらもかれこれ10分は粘っている。


これは騎士の力をうまく反らし武器の破壊を防いでいる結果だが、もちろん簡単な事ではない。


剣の進入角度を一瞬で見極め、自らの剣が壊れぬように滑らせてこちらから迎え撃つ。


戦闘経験のない者では出来ぬ技を当たり前のように使う少年を観察し、自らに取り入れようと一挙手一投足を見逃そうとはしない。


しかし、もしルルが-のリソースを大量投入しなければこのように意識の高い騎士ばかりではなかっただろう。


常日頃、命の危機が迫っている現状だからこそ、このように強くなることに貪欲になっているのであって、これが平和な世なら鍛錬などせずに地位を上げることに必死になっていたはずだ。


一部で良い結果が生まれてはいるが、決して褒めるべきではないミスなので・・・・・図に乗る~な?


若干調子乗ってる~のは知ってる~んだからね?


わた~しがこうやって書いている報告書も盗み見てる~のも知ってる~から、後で戻に戻しておいてね?


・・・・報告書に私用を書き記し失礼しました。




「いってぇぇ!」



長く続いた模擬戦も、少年の剣がついに折れることにより終わりを迎えた。


見ることに全力を向けていた兵たちも汗を掻きながら深く息を吐き、その場に座り込む。


中には鼻血を流す者までいることから、どれほど集中していたのかがうかがえる。



「・・・・・・はっ!そ、そこまで!」



審判役の兵も疲れ終了の合図を忘れかけていたが、少年に斬りかかろうとする近衛団長気づき慌てて声をかけた。



「・・・・ふぅ、なかなかの腕だったわ少年。じゃが実戦では武器を無くそうとも相手は待ってはくれぬぞ?」


「あ~、にぃちゃんもおんなじこと言ってた」


「ほっほ、名誉侯爵様ならばそうじゃろう。多才であったようじゃが短期間で上り詰めた最大の要因はその戦闘力じゃからな」



冒険者の支援を主な産業としている国に使える者らしく、強者に尊敬を称えるその言葉には嘘偽りのない本気の意思があった。


傭兵の国と似ている考えだが、かの国の考えは【強けりゃ偉い!】でありアルバ帝国では【心技体を高める】と精神的な強さまで求めている。


これは職種の違いから生まれるものだが、長くなるので今回は割愛しよう。


少年、ムートがアドバイスを受けている間に残りの3組の模擬戦も終わったようで、散らばっていた兵たちが集まり感想を言い合っていた。



「つ、疲れました~」


「おらも腕が痛いよ」


「あぁもぉ!あとちょっとで魔法当たったのに!」



それぞれ闘っていた子供たちも傷だらけではあるがムートほど酷くはないようで、しっかりとした足取りで鍛錬場の端に移動してきた。


今更だがこの場所は王城の地下であり彼らのような平民は本来入ることはできないが、以前レイヌに連れられた際に多くの人に目撃されたことから「あの人と一緒なら問題ないだろう」と今では保護者無しで訪れることができる。


貴族になり日が浅いにもかかわらずこれほど信頼が厚いのはさすが我らが主長様ですね。


理由の一端としてはレイヌが復活させたポーションや魔鉄の加工技術などで冒険者や国民の死亡率が大幅に減少したことにあるが、本人は以前をあまり知らず図書館(正確な名称は「アルバ帝国情報保管管理棟」)でも一般常識の収集を主としているため知らないようだ。


せっかく準機密情報まで見れる許可証をもっている~のにちょっともったいないですね。



「そちらも終わったか。で、どうじゃった?」


「いやぁこいつらおもしれぇわ。今現在でスカウトしてぇ!」


「わたしのところもそうですね、2属性の魔法に詠唱も短め。陛下に行って入隊してもらいますか?」



それぞれ国でもトップクラスの兵の評価に団長も皺くちゃの顔が笑みで更にクシャっとなった。


もちろん冗談だと笑ってはいるが彼らの目は本気だった。



「おでも奴が欲しい!おでのタックルを何度も受け止めるやつは団長だけだった!」



世間体を考えてふざけて話していた労力が一瞬で無に帰った。



「・・・・あんたねぇ、さすがに子供を勧誘はできないわよ?」


「必死でこっちは我慢してんだから空気読め」


「そちは・・・・もう少しその真っすぐすぎる性格を直した方が良いぞ?」


「うぉぉぉ!ごめんな!」



声を押さえている意味さえ無に帰った。


ことごとく邪魔をする彼を団長以外が袋叩きにしたが、緊急時に囮役をする大柄な体型を持った彼には通じず、数人の兵が逆に傷ついた手足を押さえ悶えていた。



「さて子供達よ、医務室へ行こうかの?そちらもいい加減やめなさい」



団長の言葉にどちらもおとなしく従い、しばらくするとあの騒がしかった鍛錬場から人間はいなくなり、代わりに兵たちが意見交換として日夜使っている冒険者ギルド本部は一気に賑やかさが増していった。






「それにしてもあのガキたちはすげぇな、団長と隊長たちと渡り合うとか」


「俺たちには到底真似できねえよ。まさに天才ってやつだな」


「いや、確かに才能もあると思うけどよ、たぶん頑張ればある程度は俺たちもできるらしいぞ?」


「はぁ!?誰だよ、んなこと言ったのは?」


「団長」


「あ~、あの人が言うんなら・・・・・・できんのかなぁ」



ギルド本部の応接室でお茶を飲みながら話す内容は先ほどの模擬戦だった。


確かに子供達には天賦の才があり、誰でもあのように戦えるわけではないが、彼らも国を守るために魔物と闘い続けた猛者たちであり実戦経験は遥かに上だ。


見たことのない動きだったのでたじろいでしまっただけで、あのようなこともできると知った今では下地が出来上がっている分むしろ彼らの方が習得は早くなるかもしれない。



「お前たち・・・・・毎度毎度ここは休憩所じゃねぇんだぞ!とっとと出てけ!」



ギルド職員の一人がとうとう我慢できずに怒鳴りつけるが、配り続けるお茶ゆえに全く説得力はなく、むしろ兵たちを和ませていた。



「しかしあの子たちもかわいそうに」


「話を聞けよ!出てけよ!」


「あの孤児院に住んでるんだろ?あそこの管理してるミテラさんにも苦労かけてるし、こういった問題は周りがどうにかしてやんなきゃならないんだけどなぁ」



兵たちの言葉からわかるように、実はムートたちが住む孤児院は大きな問題を抱えていた。


正確に言えばあの場所にいく原因について憂いていた。


住宅地から若干離れたあの場所に入る子供たちは皆親が犯罪者であり、逮捕や刑に処され既に死んでしまい保護者がいない状態なのだ。


以前報告させていただいた通り、-のリソースの大量投入により死が身近になったこの世界では、どの世界よりも犯罪に関しては重い罪とされているので、人間たちの間では【犯罪=最大の敵】のようにと幼少期より教えられている。


命を大切に繋がるこの傾向は良いことだとは思うが、反面その犯罪者の親族にも忌避の目を向ける輩も少なくはないようだ。


もちろんある程度成長し周囲を見渡せばそういった意識も薄れていくものだが、年齢的に未熟な者は教えられたことに融通を聞かさずに子供同士で対立が生まれることが多々ある。


特に子供は良くも悪くも純心なので、敵には容赦しない。


過去には子供が子供を殺す事件も起こっていた。


そのことから対象になった子供を隔離し、成長するまでは周りの大人たちが支えるといった光景が広まり、ミテラたちが住む孤児院のような場所が建てられた。


国元の施設なのにボロボロの家屋だった理由も、頻繁に出入りすれば他の子供達が犯罪はダメだと教えておきながらその親類を保護するその姿勢に混乱するので、出身国や種族がバラバラな冒険者たちに依頼を出すしかなかったからだ。


この様子や事情を知ったときはやっぱり教育って難しいなと深く思いましたね。



「・・・どうにもできないだろ。今はな」



先ほどまで散々文句を言っていた職員も話の内容につられて思わず会話に参加したが、今度は誰も茶化さずに彼の言葉に耳を傾けている。



「なんだぁ?いつもと違う答えじゃねぇか。「今は」なのか?」



この話は会話の題材になる頻度が多く、そのたびにギルドのお茶汲み係でも彼は最終的に「しょうがないな」と話を占めていたが、今回はどうやら何かしらの変化があったようだ。



「実はな、最近増えてきてんだよ」


「なにがだ?」


「勉強クエストを受ける初心者冒険者がさ」


「「「!?」」」



それは長年悩みの種である問題だった。


冒険者として必要な依頼人との会話、活動する街と住人との繋がりを目的とした通称《勉強クエスト》。


街中という命の危機がないこのクエストは初心者には圧倒的に人気がなく、その真意も見極められずに結局ベテランが動くという悪循環に陥っていたのだが、ここ最近やたら受けたがる初心者が増え始めたのだ。


まぁ相変わらず主長様が原因なんですけどね。



「おいおい、いったいどうしたんだよ」


「水晶ランク・・・冒険者としてもトップクラスのレイヌさんが率先してやってるのを見たらしくてな、同じ行動をとれば強くなれるんじゃないかと受けてるんだ」


「う~ん、あながち間違ってねぇのがなんとも言えねぇな」



一人の騎士が言ったことも一理ある。


もし生産者が出したクエストを受け、個人的な繋がりが出来たら場合によって融通をきかせてくれることものだから。



「だから「今は」が付いたのか」


「あぁ、この国は・・・・いや、もしかしたら他国もこれからどんどん変わっていくぞ。最近それが楽しみでな、今日の悩みが明日にはあっけなく解決する、そんな日が近づいてる気がするんだ」


「うわ!くせぇセリフだな~」


「うるせぇよ!それよりいい加減出てけってば!こっちも仕事溜まってんだよ!」



彼らの言う通り変わるでしょうね。


いえ、元々ひどい環境にこちらがしてしまったのですから我々が全力で変えますよ。


・・・・・良い方向ばかりではありませんけど。



以上、今回の報告はここまでとなります。


追伸 最近同僚の彼氏が〇〇〇〇な小説作品にはまってる~んですよ。


なんとか止めさせる方法ってありませんか?










「・・・・・報告書と言うよりはほとんどが小説のような内容であったな」


「仕方ないですよ~、彼女は《遊戯の神》であり管轄は文学ですから~。多めに見てください~」



神界の女王はフゥと一息つくと軽く辞書の厚さを超える紙束をどさりと机へ放り投げた。


一瞬ブルリと机が痛がったが、軽く撫でてやるとまた動きを止めただの机へと戻る。



「私語も多く含まれておる、彼女しかおらなかったのか?」


「そうなんですよ~、みんなあの世界の修繕に忙しくて僕の部下もあの子しか~」



そう言って女王の前にたった一柱の神はニヘラと垂れた目尻ををさらに垂らした。


男の子にも女の子にも見えるこの神ヘルメスは《遊戯の神》をまとめる長であり、外見がどっちつかずで子供のような容姿から新人にはよくからかわれているが最高神の一人でもある。


ちなみに性別は無性である。



「ただでさえ神不足なのだから贅沢は言えないが・・・・なんとかならぬか?緊張感が欠けてしまう」


「う~ん、そうだ~!セレネーの部下がもう少ししたら休暇に入るって聞きました~」


「《月の神》か。かの者らは魔法も司っているから真面目であったからな・・・・後で連絡を取っておくか」


「僕がやっておきますよ~」



そう言ってヘルメスはボサボサの髪を左右に揺らすと、どこに入っていたのか筒状の何かが頭からニュッと飛び出し部屋の窓を突き破り飛び出していった。



「あれは、またそなたの発明か?」


「そうです~、きっとセレネーも喜ぶと思いますよ~」


「・・・・そうか」



女王は一言呟くともう一束の報告書を取り出し読み始めた。


彼女の仕事はこうしてまだまだ、具体的は100年ほど続いていく。





ちなみに後日、おしとやかな姿であったセレネーがガングロギャル姿となり、ヘルメスの自宅に極太の光線をいくつも降らせたのだが、周りの神もいつもの事だと特に気にも留めなかったという。


―――― 神様メモ ――――


ヘルメス

 ギリシア神話の神であり、発明や策略など多面的な性格をもつ文化英雄と言われています。


セレーネ

 同じくギリシア神話の神であり、月の女神と言われています。また《月》にちなんで月経から性を司ると言われたり、魔法に関連付けられたりしているようです。


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