23話 面倒ごとはお腹いっぱい
まだ迷宮に行かないのかよって思った人は挙手!
安心してください、もう行きます!
そして今回あの姉妹が再び登場です。
ついに迷宮攻略の日がやってきた。
本来迷宮の正しい攻略法は進んでは戻り、進んでは戻りを繰り返し慎重に進むべきなのだが、どうも帝都がきな臭いので短期集中!一度潜ると制覇するまで出てこない予定だ。
そのため物資も大量に必要となり、俺・リン・ディー・ダリエラ・オンブルのたった5人では運搬と戦闘員含め全く足りないが、そこは俺の無限収納と俺専用の食材補給用となっている異世界マーケットのスキルでどうにかなった。
今回の用意した物資は
・各種食材 3か月分
・調理済み食料 1か月分
・ポーション等の回復薬
低級ポーション×300(+100)
中級ポーション×250(+150)
高級ポーション×250(+20)
高熱地帯対策薬×各500(+各25)
・魔技具 各種×3
・記録のための各種物資
・各種武器、修繕、手入れ用物資
となる。
その他に個人的な物も無限収納に入っているが、基本的に用意したものでやりくりすることとなっている。
追加ポーションは昨夜アマナさんに無理を言って入手したので、やたらやる気になって飛び出していった義兄さんたちの回復も可能となった。
総勢150人の勇敢なるランバ殿下一同を地上に返す際に渡す食料も含めこれで抜かりはない。
「だが、なんでまたお前たちが馬車を引くんだよ・・・」
『あら、なぜと言われても我が家で貴方たちに見合う馬がいないのだもの』
『そうですねお姉さま。わたしたちはあの後ろで震えている雄たちよりも早くいけるわ。ちょっと触らないで!』
「うわぁっレイヌさん止めてくれ!こいつなぜか俺に全然なつかねぇ!」
馬(妹)とディーが激しい?攻防を繰り広げるが、迷宮に挑む前に馬にやられるとか一生の笑いものだから止めて欲しい。
・・・・食材足りるよな?
「いざとなればスキルを使いましょう。彼女たちはなかなか見どころがあります」
「あまり他人に《異世界マーケット》は使いたくないんだよ。オンブルもあまり過信しないでくれ」
すべての世界の物を生み出すこのスキルはやたらと乱用しないように気をつけているからな。
用意された馬車(まだ個人の馬車を作っていないのでレンタル)まで案内されて確認すると、なぜか前回より豪華になっていた。
御者含め8人乗れる大きさに中は寝れるほど柔らかいクッション、馬車の上には今回必要はないがトランクが落ちないよう柵がついており、どう見ても王族用以上の馬車だ。
こんな上等なもの前はあったか?
「おはようございます。この馬車は皇帝陛下からせめて道中疲れが無いようにと用意されたものです。最近開発された技術も組み込まれておりますので、使い心地によっては王族用にも新たに作られるようです」
馬主のおっちゃんにそう説明されたら断れないな。
要は試乗含めての手配らしく、帝都中の職人を集めての一品のようだ。
あの金具を見るにベリアルも参加したようだな。
「ありがたく使わせてもらうが、これ四頭引きだよな?二頭しかいないんだが」
「・・・あの二頭を含め四頭用意したのですが、噛みつかれたり蹴られたりで怯えてしまい、小屋からすら出てこなくなりまして。しかしご安心を!この二頭は馬力が凄まじく、問題なく目的地までお連れします!」
『ちょっと触らないでこのハゲ!』
「いたたた!こら、噛みつくな!」
頭を齧られる馬主は確かに頭部が寂しいが、原因はこいつたちじゃないだろうか。
出発前になぜこんなに疲れなければならないんだ。
なにか昨夜と同じことを考えているな。
辺りも暗くなり始めたところで今夜は野営することとなった。
リンと二人で向かったときは丸二日かけての道のりだったが、もしこのまま走り続ければおそらく日付変更前には着いていただろうという、異常なほどの快速だ。
・・・前は馬車ではなく乗馬で二日だったが、この姉妹は成長しすぎるだろう!
試しに二頭を鑑定するとレベルが15上がっており、スキルも増えていた。
―ステータス―
名前 メララ(名付け親:ダリエラ)
性別 雌
年齢 13
種族 魔獣ダッシュホース
レベル 15→30
HP 4800/4800
MP 240/240
攻撃力 540
防御力 620
瞬発力 3780
魔力 40
知識 1500
幸運 110
馬力 3馬力
スキル
・悪態C ・馬車引きB ・騎馬B ・蹴撃C ・噛みつきC ・唾吐きB
称号
・暴れ馬
・わがままお嬢
・憧れのお姉さま
―――――――
―ステータス―
名前 ユーユ(名付け親:リングラット)
性別 雌
年齢 11
種族 魔獣ダッシュホース
レベル 13→28
HP 4300/4300
MP 220/220
攻撃力 670
防御力 460
瞬発力 3470
魔力 40
知識 1260
幸運 100
馬力 3馬力
スキル
・悪態C ・馬車引きC ・騎馬C ・蹴撃B ・噛みつきB ・唾吐きB
称号
・暴れ馬
・わがままお嬢
・かわいい妹
―――――――
魔獣だからレベルは低いが基礎能力は高くなっているのは分かるが、これおかしいだろ。
見たところ攻撃の妹に防御の姉といったところか。
元々魔法が使えない種族だから最低限の魔力しかないが、低ランクの魔物なら轢き殺せるな。
「ってちょっとまて!なんで名前がついてるんだ!」
「も、申し訳ございません・・・」
「・・・名前ないと不便。・・・この子たちとは長い付き合いになりそう」
『そうよね。強馬である私たちには名前があるべきね』
『そうですねお姉さま』
嫌な未来予想をしないでくれ、本当になったらどうする!
あぁ認めるさ、確かにこの二頭は力強く美しいが周りに喧嘩を売りすぎる。
いざとなっても責任が取れない。
食事に関しても都市から離れることを考えると量的に準備に苦労する。
いいところが容姿しかないんだよ。
「・・・・本人?たちもすでに受入ちまったようだが、帰ったら馬主のおっちゃんに伝えておけよ?」
「もちろんです。よかったわねユーユ」
『はい、特別にわたくしの妹にしてあげましょうか?』
「・・・気に入ってくれて嬉しい」
『ヒヒン!これからもメララを名乗り続けるわ、おねえ様。ちょっと暑苦しい人族は触らないで!』
「なんで俺だけ!?」
「なぜわたしの考えた「コーネ」と「フタエゴ」はダメなのでしょう?」
いつの間にか種族を超えた姉妹が増えたりディーが蹴られたりはいいとしてオンブル、その名前は馬肉の部位名だからじゃないか?
翌日、夜が明けて少し時間を空けてからの出発。
途中何体かの小鬼や豚頭を跳ね飛ばしながら順調に進み、昼過ぎに迷宮付近に到着した。
説明し忘れたが、迷宮入口を中心に謝って入らないように「迷宮監視地区」という名でぐるりと高い壁で仕切られて迷宮から魔物が出てきた際に被害が拡散しないようになっている。
冒険者証と《家名天捧の儀》時に作った家紋を門番に見せ門内へと入ったが、直後数名の兵に前方を塞がれた。
「すみませんレイヌ様、このままですと進めません」
「俺が説明してくる」
御者をしていたリンが兵に何度通してくれと説得するが事態が進まず立ち往生してしまったので、馬車を降りて説得役を交代した。
「すまないが通してくれ。私はレイヌ・イニスティア名誉侯爵、皇帝陛下の命により本日この迷宮監視地区にある紅蓮の迷宮へときた」
「黙れ、成り上がり風情の野蛮な冒険者が!貴様のような奴に迷宮に挑む価値はない!」
「今はランバ第一王子様たちが挑んでいる。さてはあの頭のおかしい第二王子からの刺客であろう、見逃してやるからとっとと帝都へ戻れ!」
「お前たちはどうせ共に入った貴族の私兵だろう。私の地位は皇帝陛下直々に受け賜わった正統なる地位だ、これに異議を唱えるのならば皇帝陛下に異議を唱えるのと同義である!」
「なんだと!!」
別に貴族の誇りも皇帝陛下万歳!なんて考えもないがあまりに乱暴な物言いに思わず返したが、反応もいいからこのまま続けてみるか。
「更にお前たちの失言は多々ある。まずウルスラ殿下は次期皇帝候補のお一人であらせられる。敬称のみの呼称、侮蔑の言葉はウルスラ殿下を蔑ろにする行為であり王族に対する不敬だ。敬称にしても皇帝陛下自らの変更であり、未だに恥ずかし気もなく堂々と発言をし、尚且つ訂正もないとはお前たちは皇帝陛下に逆らうのか?」
「くっ、成り上がり風情が・・・」
「何度も言う通り私の地位は皇帝陛下より授かった物であり、迷宮攻略も国からの依頼だ。私たちへの妨害はそのまま帝国への攻撃とみなされる」
国という規模での話に兵たちは狼狽え言葉を飲み込んだ。
門番や貴族の争いに介入ができない常駐の騎士たちが会話を聞いているし証拠もこちらにある。
幾人かの騎士の鎧には常駐騎士とは違う装飾がされているところから、おそらく義兄さんを追いかけた騎士小隊であろう。
「それからもう一つ、ランバ殿下と同行した貴族たち、騎士中隊には王城への帰還命令が出され、命に反する場合は拘束してでも連れ戻せと書面にて預かっている。即刻帰還されたし」
昨夜ウルが帰る前に渡された羊皮紙を近くにいた常駐の騎士に預け無理やり馬車を進ませた。
今度はお邪魔私兵たちも邪魔できずに道を譲り、今度こそ迷宮へと向かった。
しかし迷宮の入口付近には騎士たちが集まり、またしても足止めを食らって馬車すら預けられない。
「少し見てきます」
「では今度はわたしも行きましょう」
リンの後ろに続きオンブルも騎士たちに近づき事情を聞きに行ったが、なぜこうもうまくいかないのかね。
「・・・モチベーション下がってきた。・・・これはお肉を食べなきゃもたない」
「一昨日から肉ばかりじゃねぇか。一緒に作ったんだから野菜も食え」
「・・・モブはいらない。・・・やはり主役がいてこそ」
「リーラ、お前の皿は主役だらけでわけわかんねぇぞ?なんでオーク肉をおかずに牛肉食うんだよ」
「お肉をばかにするな!」
「なんで最終決戦みたいな雰囲気だしてんだよ!?」
「ディーも人の事言えないからな?どっちもどっちだ」
「・・・こんな偏食と一緒にしないで」
「俺はちゃんと野菜も食ってるからな!?」
葉物2.3枚だけしか食わないくせによく言うな。
ずいぶんと狭い空間での「第一次お肉戦争」が勃発する中、事情を聞き終えたリンが馬車に入ってきて現状を伝えてきた。
「どうもランバ殿下は「我が歩みを遮る者は帝国への反逆だ」と、常駐していた騎士と追いかけてきた小隊が迷宮に入らないよう厳命したようです。以前お世話になったここのライズ隊長さんも救出に行きたいようですがどうにも・・・」
「国を守る騎士が反逆なんて濡れ衣は帝都が混乱必死になるからな、迂闊な行動はできないだろ。直接話に行くか」
もう一度馬車から降り、騎士達の元まで向かうと隊長さんとオンブルが険しい顔で話していたので、まだなにかあるのかとうんざりしながらも間に入っていった。
「久しぶりだなライズ、話は聞いた。ランバ殿下については皇帝陛下の署名入りの帰還命令書があるから即連れ出し可能だ」
「これはレイヌ名誉侯爵様、お久しぶりです」
「我が主様、命令書についてはお伝えしましたがつい先ほど問題が発生しました」
言った傍からこれだよ。
こんどはなんだ?高ランクの魔物でも迷宮から溢れ出たか?
「実はランバ殿下と共に潜ったアルウィート子爵家の私兵一名が先ほど迷宮から脱出してきまして、本人は重症、現在支給されていたポーションを使いなにが起こったか聴取しているところです」
ほらみろ言わんこっち
メララ 『硬い地面を走るとこの美しい爪が痛むわ。人間たちがつけている《くつ》という物を用意するべきね』
ユーユ 『全くその通りですわ、お姉さま』
レイヌ 「・・・・それじゃぁ蹄の意味がないだろうが」
というわけで、当作品の一押しのキャラに名前がつきました!
おめでとー(祝)




