21話 身の丈に合った自覚
大急ぎで書いたので今回は短いです、すみません。
バクバク、ムシャッ、ズズー、ズゴゴー、ジュゴーー。
イニスティア家、つまり我が家の食事は毎回音が絶えることはない。
会話であったり、この通り食事音だったりと、おそらく他の貴族たちはこんなに騒がしくはないだろうがここでは当たり前の光景だ。
ちなみに先ほどの音は全てダリエラだ。
「なにか足りない気がします・・・」
「なんだ《美強》、飯が足りないのか?」
「・・・私のはあげない」
「違いますよ!?」
食後のお茶を飲んでいたリンがふとした漏らした呟きに周りはすかさずに反応したが誰もかれも的外れの行動をしている。
みなわかってないな、リンはお茶に入れる砂糖の量が少ないと言ったんだ。
あとダリエラ、おまえ何皿目だ?
「実はいまひとつ迷宮に挑むだけの実力があるか、自覚できないんです。レイヌ様、先日ギルドで行った模擬死合いを私ともしていただきたいのですが・・・」
どうやら俺も違ったらしい。
「かまわないが、あと数日で迷宮に挑む予定だっただろ?今からやると当日に支障がでる可能性があるが?」
「そ、そうですよね・・・・」
青年との模擬死合いをどこかで見ていたリンの提案に思わず難色を見せたが、自信のあるなしってここぞというときに実力を出せるかどうかの大事なものだからどうにかしてやりたい。
だがリンほどの強者が自信を持てるための死合い内容を考えると、終わった後当分動けるになさそうな事しか思い浮かばない。
迷宮に挑む日にちも陛下やバリスなどと打ち合わせもしてあるし準備もすでに済んでいる。
俺も一応貴族でそこのところは念入りに調整したから、ここで出発を延ばそうとするとまた一からやり直しでおそらく1か月は延期になる。
なにかいい案はないかと持っていたフォークを置き考えるとディーから思いがけない提案が出た。
「なら俺たち3人と対レイヌさん1人でやらねぇか?そしたら影響も少しは無くなるとおもうんだけど」
「え?・・・いや、私は・・・」
なるほど3人か。
各個人で瞬時にそれぞれへの加減を変えれば俺も手加減の練習ができるし・・・うん、いい案かもしれない。
「よしわかった。だがさっき言った通り時間がないから今日やるぞ。今から2時間後の地の刻10時に北門に集合だ」
「ところでさっきからオンブルさんいねぇよな?つい人数から外したけどどうすっか」
「オンブルさんなら、なぜか半笑いしながら庭で凍っていましたよ?」
「あいつにはいざというときの仲裁役をやってもらうか。ラミス、あいつが復活したら今の会話を伝えてくれ」
「畏まりました」
とにかく今日の予定が決まったところで、食べ終わった者は席を立ち、各々装備の手入れや柔軟を始めたのであった。
「・・・ねぇ、ほんとにやるの?・・・私死にたくないんだけど・・・」
それから2時間と30分後、北門から約2km離れたところで3人と1人が死屍累々と倒れていた。
「も、もう魔力も体力も・・・・・」
「俺、さっき両腕消し飛んだぞ・・・・」
「・・・・・・(ダリエラはすでに屍のようだ)」
全てを出し切った3人は仲良く地面に横たわりグチグチと文句を言っているが元はと言えばリンとディーが言い出したことなので自業自得だ。
ダリエラはまぁなんだ、完全にとばっちりだが。
「ですが、みな僅かな期間で大きな成長が見られますね。・・・・少し違和感がありますが」
十字架に張り付けられて火で炙られているオンブルは特に苦痛の様子もなく、平然と評価をしてくる。
これが変態力∞の力か・・・・。
「オンブルの言う通りだな。出会った頃なら10分も持たなかっただろう。ちなみにだが、今のは中位竜くらいの強さだ」
ここでいう竜はヴィクシムのような龍ではない。
龍はこの世界最強の種族であり、「帝」となれば龍たちが崇める神の「龍神」から任された土地の生態系調整を一任される。
対して竜は魔物であり、その強さは龍に劣る。
しかし数は竜のほうが圧倒的に多く、上位竜が束になればさすがの帝龍でも決死の覚悟で戦わなくてはならない。
つまりは俺たち神の試練は、たとえ最強種族の龍であっても用意されているというわけだ。
そう考えてもやはりリンたちは十分迷宮に挑んでも問題ないだろう。
「あれが中位竜並み・・・・、やはりランク不明の魔物は強いんですね」
「さすがに体の大きさは向こうの方がでかいから俺よりは攻撃は当たる。だが鱗や皮膚の固さはあれぐらいだな」
リンがこの世の高峰の一端を確認する一方、ほかの2人はとうとう意識を手放しオンブルの開放を受けた。
だからなぜお前はそんな簡単に拘束を抜けるんだよ!
「・・・そういえばリンも魔術の練習をしていたんだな。火の精霊に助けられたとはいえ中級魔法を無詠唱とはな」
「あ、あはは・・・・やはりバレてしまいました」
火の中級魔法【炎の剛矢】は、適性のないリンにとっては相当な魔力消費で無詠唱も現段階では不可能なはずだが、もともと無魔法に分類される「精霊魔法」を使っているだけあり、自分に足りない部分は精霊の介入により放つことができた。
しかし
「アイディアは悪くないが今のままだと精霊たちの疲労が濃い。それにあれほどの数の精霊を集めても制御が難しいだろう」
「え!?レイヌ様は精霊が視えるのですか!」
「精霊視はエルフだけの特性じゃないからな。ごく稀にだが発現する者もいる」
これはごまかしではなく真実だ。
精霊が視える条件としては精霊に気に入られることで視えるようになるが、彼らは森や湖といった自然の中に多く住んでおり、村といった自然に囲まれる場所で育たない限りなかなか会えるものでもない。
実際問題、村など少数で集落をつくってもあっという間に魔物に滅ぼされる為、この世界ではどうやら都市しかないらしい。
それに多くても一国につき最大でも5都市であり、一番少ないアルバ帝国では帝都を含め4都市しかない。
話が逸れたが、ようは滅多に自然豊かな場所になど行かないから精霊視は得ることが難しいというわけだ。
エルフ以外で発現している者も全員高ランクの冒険者や傭兵で、クエストの最中に偶然出会い気に入られたらしい(以上、ウルによるスキル講習会より)。
「そうなのですか。しかし私が呼んだ精霊はそれほど多かったですか?」
「多いなんてもんじゃないぞ。邪魔にならないよう、お前の目の前にはあまりいなかったが、背後に精霊の塊ができたいた」
もともと火山が比較的近いとはいえ周りにいた火の精霊を残らずかき集めたような形になったので、数日はこの周辺で若干の異常気象が起きるだろうな。
大したことは起きないが。
「そこは要練習として、納得はできたか?」
「・・・はい。【鬚蛙】との戦いでディランさんやダリエラさんの実力はわかっていましたが、今日改めて決心しました。私たちは、迷宮を攻略します」
これで全員の決心がついたようだ。
とは言っても、ギルドには13階層までしか情報はなく、俺もルルにアドバイスをしただけで中がどのようになっているかわからないので絶対に大丈夫だとは言わない。
だが生き残るには十分な力はある。
・・・・そう、その力が問題だ。
たしかに効率的な練習法、戦闘の幅は少し教えたが吸収が早すぎる。
ディーの「点掌打」、ダリエラの「適正外魔法の無詠唱」、そしてリンの「精霊との応用技」「盾での戦い方」、すべてが異常な速さで形となり自分のものとしている。
俺が+のリソースを撒いているから、だけでは説明がつかない。
そのあたりはオンブルも疑問に思っているが、原因がわからない。
神様としてそれはいいのか?
神だって別に全知全能なわけがない。
俺がそんな力を持っているなら-のリソースなんて作らないからな。
俺たちの役目はただ一つ、全ての生き物が幸せに発展していくことだ。
そのためにも原因不明な現象は一刻も早く解決しなければならない。
たとえそれが本来喜ぶべき結果となっていたとしてもだ。
―帰宅後—
ディー 「後になって腕がポロっなんてないよな?」
レイヌ 「・・・・・」
ディー 「え?ちょっと待って!?マジで大丈夫なのレイヌさん!?」
レイヌ (問題ないが、面白いから黙ってよう)
――――今回の取得称号――――
鬼畜大佐




