20話 代償なき近道は無い
な、なんとか書けました(´;ω;`)
しかし来週はお休みさせていただきます。
すみません!
「レイヌさん!俺を男にしてください!」
「・・・・・・は?」
物騒な旅行から帰って数日が経ち、リンたちもなんとか迷宮に挑んでもよいと判断もできたので、改めて攻略の準備を始めた。
旅行前は十分だと思っていたが、思っていたよりも魔技具の耐久が低く、テント等用意したものがかなりの数壊れてしまった。
もっと良い素材を使えば問題なかったと思うが、これ以上の品は未開拓地まで行かなければならないそうだ。
未開拓地とは言っても大昔には都市もあり、素材も物資も豊富であったが魔物や魔王により全て滅ぼされ、すでに諦められている地となっている。
現在存在する国々を放って開拓するわけにもいかないので、解放は当分先になるだろう。
話が逸れたが今現在、俺は名も知らない冒険者の青年に頭を下げられている。
旅行時の討伐報酬と報告目的で冒険者ギルドへ向かったが討伐数と質が異常でもう少し時間がかかると追い出された。
その時のバリスの顔には平手の形が赤く付いていたので、おそらく奥さんに「帰りが遅い」とでも言われてビンタでもされたんだろう。
どうやら奥さんは武闘派らしいので想像でしかないが、案外外れてもないだろう。
そしてギルドから出ると同時にこの青年が目の前に現れていきなりプロポーズされた。
俺自身なにを言っているかわからない。
「気持ちはうれしいが悪い、俺はノーマルだ。すまんな」
「はえ?いやいや違います!そう意味じゃなくて、俺を強くしてくださいって意味ですよ!?」
どうやら俺の勘違いだったらしい。
話を聞くと彼は初心者でも安全に狩れる【角兎】は倒せるが【小鬼】が怖くて倒せずに青ランク止まり、生活が苦しいそうだ。
冒険者になって1年だと言っていたが、ランクは上がらなくても仕方がないとして【小鬼】くらいは倒せないといかんだろ。
「なのでほんっとうに困ってるんです!お願いします!」
「まぁ下の指導は暗黙のルールだから構わないが、あまり時間はかけられないぞ?」
こっちも準備が整い次第帝都を出るつもりだからな。
「それでもいいです!お願いしまっす!」
「わかったから頭上げろ。周りの目が痛い」
このやり取りのあいだにもなんだなんだと人が集まってくる。
とうとうバリスが事態収拾に出てくるほどの騒ぎになってしまった。
ついでにギルド地下にある広場を貸してくれ、そこで青年の戦闘指導をすることになった。
「ありがとうバリス。ほっぺの手形がキュートだ」
「関係ねぇよな!?」
―――― 冒険者ギルド 地下 ――――
地下に降りるとドーム状の広い空間がそこにはあった。
床や壁は土を限界近く圧縮されておりほぼ石化している。
このような場所をつくれるなら他にも流用すればいいのにと言うと、もともとあったこの場を再利用しただけでどうやってつくったかはわからないらしい。
たまに魔法ギルドが調べているらしいのでその人たちにまかせるか。
「さて、さっそく始めたいが獲物はなんだ?」
「これです!」
彼は鉄製のナイフを取り出し、高々とかかげた。
見たところ特別な付与もない、通常よりも刃が長いただのナイフだが、彼が冒険者を始めて最初に買ったものらしいので宝物だそうだ。
「じゃぁ始めたいが長期で安全な方法と短期で死ぬ危険がある方法のどちらがいい?」
「えっと・・・・短期のほうで」
「後悔はないな?」
俺はそう言い彼と同じようにナイフを取り出した。
ちなみに標準サイズの鉄製だ。
「も、もちろんで・・・・ひっ!」
いつの間にか集まりだした周りの人たちにも言質が取れたので殺気と威圧を最低威力で叩きつけたが、案の定彼は身動きができないようだ。
俺は青年が気絶するギリギリまで殺気を高めるが先に一般の観客から気絶者が出始めて上へと運ばれていった。
「おい、いつまで座り込んでる?お前が決めたことだぞ。いい加減にしないと殺すぞ!」
「ひゃ、ひゃい・・・・・ギァ!?」
ゆっくりと近づく俺から離れようとしたが背後に回り込み背中を蹴り上げた。
これで俺が本気だと伝わったようで彼は涙や唾液で顔をグシャグシャにさせながらゆっくりと構えた。
互いに構えに入ったので彼と同じ身体能力まで下げて駆けだした。
本来は対処が簡単な速度でも今の彼には退避不能な攻撃に見えるだろうと、固まる青年の左手首を切り落としながらふとそんなことを思う
「え?ぐっぎぃゃぁぁぁぁぁ!お、俺の手がぁぁぁぁ!」
騒ぐ彼の腹をナイフの背で滅多打ちにして強制的に黙らせると地面へ引き落としマウントを取った。
「おい、騒ぐだけか?敵がこんな風に待ってくれるか?そんな甘い考えなら今すぐに死ねよ」
「ひぐっ、う、ぼ、ぼれは・・・・」
「なんだ?死にたいか?」
「ぼ、俺は死にだぐないぃぃぃ!」
首に突き付けられたナイフを右手で握り締め、切り落とした左手首で殴りかかって来るところを躱しながら握っていた指を切り落とす。
「根性見せたな。で、これで終わりか?」
「う、ヴァァァァァァァ!」
彼は倒れた際に落としたナイフを今度は口に咥え、今度は俺の首めがけて突進をしてきた。
「合格だ、しばらく眠りなさい」
その突進をできるだけ優しく受け止めると彼はぐったりとそのまま意識を失った。
一連の戦いが終わり、呆然と見ていた観客と青年に神魔法をかけながら救護を頼むとようやく動き出し始め、青年が運ばれていく。
この魔法はあまり使わないようにしていたが青年のがんばりにどうやら感化されたようだな。
「おいレイヌ、いくらあいつがめんどうだからってやりすぎだ!このままじゃあの坊主は!」
「落ち着けよ手形。俺は真剣にやったしあの子のケアもしっかりやるつもりだ」
「本当だな?・・・・まったく、もう面倒ごとはやめてくれよ。っておまえ今おれのこと手形って言ったか?」
「さて、あの子が目を覚ますまで付き添ってやるか」
「おい!絶対手形って言ったよな!?」
一仕事終えた俺は騒ぐバリスを無視して運ばれていく青年を追っていった。
―――― 創敬教教会 診療室 ――――
ついにきてしまったよ教会に。
なるべく近づかないようにしていたが、この世界で怪我を治すといえば教会しかないので今回はしょうがなく、本当にしょうがなくやってきた。
俺の目の前ではここの神父の診察を終えた青年が静かな寝息と共に休んでいる。
切り落とした指や左手、打撲なども治したが、精神的疲労までは癒さなかったのでこうして眠ることにより回復させている。
ちなみにバリスも途中までついてきたがあまりにも騒がしいので診察室から追い出され、この部屋には俺と青年、それから医父と呼ばれる治療専門の神父の3人だけとなった。
「んん・・・あぁ・・・ここどこ?」
医父とお茶をして1時間ほど経つとようやく青年が目を覚まし、見慣れぬ部屋に困惑していた。
「おはよう、体調はどうだ?」
「え?あぁ、あぁぁぁぁぁぁ!」
俺を見た青年は先ほどの事を思い出したか、ベットから落ちると一目散に部屋の隅へと逃げて行った。
さすがに申し訳なくなって医父にここで昼食を食べていいかと伝えると怪訝な顔をされたが許可をもらった。
俺は料理長が持たせてくれた【騒音鳥】という魔物の肉を使ったサンドイッチにかぶりつき、遅めの昼食を始めた。
ちゃんと俺用の食材だぞ?
揚げた肉にスパイシーなオルスという植物からつくったソースが染み込んで、食べれば食べるほど胃袋が「もっとよこせと!」と騒ぐ。
まぁ俺はダリエラじゃないから限界はあるんだがな。
もくもくと食べる俺につられたのか、青年と医父の腹も鳴り始めたのでお前も食えとおすそ分けをした。
なんでも青年は朝早くから俺を待ち伏せしていたようで何も食べていないんだと。
「あ~うまかった~。いやまじすみません、こんなに旨いの分けてもらって」
「そいつはよかった。・・・・もう俺は怖くないか?」
「・・・・そうですね、やっぱり怖いですけどギルドの時ほどじゃないです」
だろうな、あれだけの事をされてまったく怖くないのも問題だ。
しかしここまで落ち着くとは、やはり食事とは偉大なものなんだな。
「さっきの俺と小鬼ならどっちと闘いたい?」
「断然小鬼ですよ!レイヌさんに比べたらあんなのは目ヤニですよ!」
かなり独特な表現に思わず笑うと、青年も医父もつられて大笑いをし、外で待機していたバリスが「目を覚ましたなら呼べよ!」と乱入してきた。
「じゃぁお前が言っていた問題も解決したな。もう【小鬼】どころか【大鬼】相手でも怯むことはないだろ?」
「もちろん!もう怖いなんて感覚は麻痺しました!」
「調子に乗るな」
「あだ!」
はしゃぎすぎる青年に軽いデコピンを食らわせて反省させてやった。
後悔はしてない。
だが俺だけではなくバリスやさっきから見守っていた医父も青年に注意をし始めた。
「あのなぁユーシス、恐怖ってのはぜってぇに捨てちゃならねぇもんだぞ」
「その通りですよ青年、人間にかぎらず生き物にとって恐怖とは神からの大切な贈り物なんのですよ?」
「え?え?」
どうやらあまり内容がわかっていないユーシス(そういえば名前聞いてなかった)に簡単に説明をしておこう。
「恐怖っていうのはいわば身を守るセンサーのようなものだ。怖いと思うからこそどうにかしようと行動に移せるんだ。剣で切られそうになっても恐怖を感じなかったら抵抗もせずに斬られるぞ」
「そ、そうなんだ・・・・・」
この年頃の人間は怖いもの知らずをまるで英雄のように想うから困ったものだ。
どの世界でも怖がることを恥じだと勘違いをして平然と危険に飛び込んでいくやつがいる。
そして命を散らせているのだからこういった意識改革はしっかりと植え付けなければならないだろうな。
「あなたはまだ若く見えますが、ずいぶんと先を見据えているのですね」
「それなりには」
一瞬医父に不思議がられたが孤児院の子供達には教え込んでいるので俺だけ特別とは考えないだろう。
「ところでバリス、仕事はいいのか?」
「・・・・・・・・あ」
レイヌ 「なぁ、その手形直してもらえよ」
バリス 「・・・治療したら即離婚だと言われた」
レイヌ 「そうか、なんというかすまない」
バリス 「なら厄介ごと持ち込むなよ!」
――――今回の取得スキル――――
模倣 C
――――今回の取得称号――――
鬼畜軍曹




