19話 料理人への侮辱
あけましておめでとうございます!
先週は仕事で忙しく更新できずにすみませんでした。
がんばって1話書き上げたのですが、まだまだ落ち着きそうにもないので来週も不安です(´;ω;`)
今後ともレイヌ達をよろしくお願いします。
「あ~、やっと帰ってきたぜ!」
「・・・ディーうるさい」
実戦旅行開始から2週間後に俺たちは帝都に帰ってきた。
5日目に俺以外が課題クリアを果たしたので2日欠けて休息、その間一人で火山と草原を走り回りSランクを集め、まとめて討伐し俺自身も課題を終えた。
この人族の身体でどこまで動けるか知りたかったのだがとりあえずSランク10体ならば同等に戦えるようだ。
ついでに採取もしたのでベリアルやユリアちゃんに後で持っていこう。
途中ヴィクシムに会いに行き、その後魔物は襲ってきたか聞くと死の魔物大行進以来来ていないらしい。
どうやらあの魔忠とやらが散々けしかけていたようで討伐しといてよかった。
魔忠・・・か。
あれも作った覚えのない魔物だった。
命が宿る生き物は進化や退化を繰り返しどのようなものが生まれるか神たちもわからないが、この世界の魔物は決められており、姿形で覚えのないものはいないはずだった。
あの時に見た魔忠の構造は魔物と同じ-のリソースの塊でできていたが、あの防御力や攻撃力、そして何より意思が宿っていたことには驚いた。
この世界で意思の宿る魔物は魔王以外いないはず、しかも宿ると言っても決められた言葉を喋るだけで会話は成り立たないはずだった。
本当に-のリソースのせいだけなのか、誰かの思惑が介入しているのではないかと最近思い始めてルルに調べさせているが今のところ成果はない。
「レイヌ様、どうなさいました?」
「・・・・・いや、なんでもない。街に入るか」
門の前で止まった俺をリンがのぞき込んできたので足早にようやく帝都へと足を踏み込んだ。
―――― 冒険者ギルド 受付 ――――
それぞれ武器の整備やら食事をしたいようだがまだ日は高く時間も余裕があるので冒険者ギルドでクエストの報告と素材の買取を先に済ますことにした。
「おはようございます、あら?賢者さんたちですね。クエストの報告ですか?」
「あぁ、報告と買い取りを頼む」
5人ともギルド証を渡すとそれぞれ読み取りの魔道具へと差し込まれ内容を書き写していた。
まわりの冒険者たちも今度は何を倒したか気になるようで後ろからのぞき込んでくるがオンブルが壁となり一定以上近づけないようだ。
「ふわ~、なんだ?騒がしいと思ったらおまえらか」
「あぁ、さっき帰ってきたところだ」
「よっすギルド長!」
「こんにちはバリスさん」
「はいはい、依頼完了か?あんだけの危険クエスト受けたんだから今回は驚かんぞ」
どんな様子だったか簡単に説明していたが討伐した魔物が多すぎて確認に時間がかかるらしく、2日後にまた来てくれと言われそれぞれ別行動となった。
俺は低ランクの魔物を解体所に放り込み、ユリアちゃんとベリアルのところで使えそうな素材とアイディアを伝え久しぶりとなる黒猫亭へ行くことにした。
―――― 黒猫亭 ――――
着くころには日も落ち始め、道中ポツリポツリと酒を片手に笑いあう男たちが見え始めた。
黒猫亭の扉を開くと1階の酒場ではさっそく宴会を開いている冒険者らしき男女が乾杯をして給仕の女の子にちょっかいをだしている。
だがいつものことのようで女の子は軽くかわすとこちらに気づき、注文をしようとしていたエルフを無視してこちらにやってきた。
「おにいちゃんおかえり!」
「ただいまユーリちゃん。ところであのお客はいいのか?」
「いいのいいの。どうせエールだけなんだから!」
エルフの青年にすまないと手で謝ると気にしなくていいと厨房へ直接注文をしに向かった。
あとでユーリちゃん怒られるんじゃないか?
「おいユーリ!客ほっといて何やってんだ!っとレイヌ様じゃねぇか」
「久しぶりおやっさん。それから様はいらないよ」
「がっははは、バリスに嫌がるとは聞いてたが一度くらいは言っておきたかったんだ。飯食ってくか?お前用の食材はまだ残ってるぞ?」
「じゃぁお願いするよ。バロウ牛のステーキを頼む」
「あいよ!」
おやっさんは駄々をこねるユーリちゃんを引きづって厨房へと戻っていった。
俺は適当な席に座りしばらくしてもってきたステーキを食べながらこの喧騒が落ち着くまでひたすら果実酒を飲むのであった。
「さておにいちゃん、どんな冒険したのか教えてね」
「そうだな、どこから話そうか・・・・」
ここ2週間の出来事を簡略に伝えていくと目を輝かせ、時に青ざめ、時に興奮して腕を振り回しながら相槌をうっている。
気づけばまだこの場に残っていた冒険者も寄ってきて情報収集をしていた。
そして帝都に着いたところまで話し終えるとユーリちゃん以外は情報ありがとうと銅貨を数枚おいて酒場から出ていき、ユーリちゃんは騒ぎ疲れたのかテーブルに突っ伏してため息をつく。
「ユーリがすまんな。ほら、ステーキだ」
「気にしてないさ、むしろ他の冒険者との交流に一役かってくれて助かったよ。さて、いただき・・・・・」
料理を出すタイミングが掴めなかったのか、はたまた楽しそうにするユーリちゃんの邪魔をしづらかったのかはわからないが、やっと来た料理にナイフを入れようとしたとき僅かに嗅ぎ取れた刺激臭に手を止めた。
おやっさんを見ても悪意は感じ取れず、状態を鑑定しても異常はない。
ユーリちゃんと二人でどうしたのかと怪訝な顔を浮かべている。
「おやっさん、俺用の食材はまだ残ってるか?」
「お、おう。ステーキ1枚分ならあるが」
「キッチンだな、見せてくれ。ユーリちゃん、悪いがそのステーキを持ってきてくれ。絶対食べるなよ」
自分の作った料理を食べるなと言われ不機嫌になったおやっさんだがキッチンにある冷蔵庫へと案内をしてくれた。
この宿にある既存の冷蔵庫は木製の箱に樹液を塗り傷まないようにコーティングされ、大きな氷を入れて内部を冷やしていた。
その隣にある金属製の冷蔵庫に俺用の食材が入っており、扉を開けて中を確認する。
ここまでくると料理が問題ではなく食材に問題があったと分かり、おやっさんも隣で中を覗き込んできた。
「おやっさん、おやっさん以外でキッチンに入ってきた奴はいるか?」
「食料を運んできた商人とあとは・・・・ホブゴブリンだな」
「悪戯されたの?おとうさんちゃんとミルク置いてなかったんでしょ」
「毎晩置いてるわ!」
ホブゴブリンはミルクと引き換えに家事をしてくれる所謂家憑き精霊である。
ありがたい存在だがお礼のミルクを忘れると悪戯をする少し困った奴らだ。
「食材に落書きとかだったらホブゴブリンの仕業だろうが、これは違うな。肉にも野菜にも毒が撒かれているぞ」
「「どくぅぅぅぅぅ!?」」
毒と聞くとおやっさんは急いで調理器具を洗い出し、ユーリちゃんは冷蔵庫から別の食材を出して確認を始めた。
すぐにそういった行動ができるとは、まさに料理人の鏡だな。
「他の食材は大丈夫だった!」
「こっちも洗い終えたぞ。しかし他は大丈夫となると完全お前狙いって事だな」
「変なことに巻き込んですまない。怪しいのは商人だと思うが、いつもと同じ人物だったか?」
「いや、なんでも用事があるとかで代わりのやつが来てた。くそ!あいつか!」
人相を聞いてもどこにでもいそうな顔で印象に残らずわからないらしく、おそらく特定は無理だろう。
今回は他の客が帰ってから調理したので大事には至らなかったが、もしあの調理器具で続けたらと思うとゾッとするな。
今後通い続けたらどんな被害に会うかわからないことから、しばらくここには来ない旨を伝えた。
ユーリちゃんは泣きながら「ごめんね」と謝ってきたがこっちが悪いんだからと説明し、おやっさんに後を任せた。
結局食べられなかった夕食に腹を空かせながら今後の付き合いについて考える。
おそらく洗脳が不可能と判断され殺害に目標が変わったと思われるが、今回の事から周りの被害もかまわないのだろう。
そうなると自衛ができない孤児院にはなるべく近づかないようにするべきだ。
職人たちはなぜかそれなりに自衛ができるのでそちらとは交流を続けようと思う。
後は陛下に巡回兵を増やしてもらい、リンたちにも警戒してもらおうと決め、すっかりと暗くなった道を踏みしめながら屋敷へと歩き出した。
灯のない道は今後を暗示しているようで、ねっとりとした不安が俺の身体に纏わりついていた。
おやっさん 「食材に毒なんてしかけやがって・・・・、ユーリ!あれ持ってこい!」
ユーリ 「お父さん、とうとうアレを使うときが来たんだね!」
レイヌ (この店にはなにがあるんだ?アレってなんだ!?)
――――今回の魔物知識――――
【ホブゴブリン】
ゴブリンはヨーロッパの民間伝承として伝えられているらしく、モンスターではなく妖精や精霊の類として語り継がれています。
ゴブリンと付いてますが、ホブゴブリンは家の家事をしてくれる善良な妖精とされているらしいです。
律儀な性格で、悪意には悪意、善意には善意でお返しをすると言われています。
このお話ではお礼にミルクを上げないと怒って悪戯してくる設定です。
※Wikipediaより参照




