SS 英雄譚の裏
2本目です
使用人も手に入り屋敷の内装も終わって現在迷宮攻略に向けての準備に忙しいこの頃。
俺はリンとメイとともに二階のテラスで夜空を見ながら食事をしていた。
「美味しかったです!まさかバロウ牛を蒸すとは思いませんでした!」
「はい、さっぱりした味付けでいくらでも食べられそうでした。」
「食べられそうっていうよりお前たち二人で2kgは食ったからな?」
「「覚えていません。」」
騒ぐリンとメイに食いすぎだと注意したら軽くかわされた。
しかしよく食ったな。
この料理を教えた料理長も嬉しそうにこちらに微笑んでいた。
食べ終えると自然と目の前に赤茶が置かれたので遠慮なくいただいき薬煙に火をつけて一服しながら上を見ると星がきれいに輝いている。
「きれいだな。気のせいかいつもより輝きが強い気がする。」
「今日は一年の内でも特に星が輝く日でございます。けして気のせいではございません。」
後ろからラミスが説明してくれたが今はそんなことはどうでもいい。
今はこの星空を気のすむまで見ていたいんだ。
「レイヌ様、あそことあそこの星を《ゲローイの力》と呼ぶんですよ。」
「ほう星座か。どんな物語なんだ?」
「う~ん、最近読んでいないので細かいところは覚えていないのです。」
「申し訳ございません。私も最後に読んだのは200年ほど前なので。」
「ではこの爺が語りましょう。幼少期のウルスラ様やメイトラ様にたくさん読みましたから覚えておりますので。」
そう言うとラミスは喉の調子を整え《ゲローイ英雄譚》を語ってくれた。
昔ある村にゲローイという少年がいた。
彼は村一番の強者であり彼に敵うものは一人しかいなかった。
彼は唯一張り合えるドルークとともに互いの腕を競い、高めあい過ごしてきた。
大人になると二人は自分の力を試すために王都へと向かい腕試しを始めるがやはり誰もかなうことはなく噂は瞬く間に広まっていった。
それを聞きつけた当時の騎士団長は二人を騎士団へと誘い彼らは更に強くなるためにその手を取るのであった。
それから10年後南の地にて魔王が現れ、町は燃え、魔物が現れて人々は眠れぬ夜を過ごした。
それを憂いた王は騎士団に魔王を退治するよう命じ、ゲローイとドルークは魔王の待つ地へ向かう。
その戦いはまさに激戦であった。
魔王が腕を一振りすれば海が割れ、歩を進めれば地割れが起きる。
いつしか魔王の前に立っていたのはゲローイとドルークの二人だけになっていた。
我らの命もここまでかと覚悟を決めたとき、創造紳ルルリア様が現れゲローイに一対の剣と盾を授けた。
ゲローイは剣を取ると目にもとまらぬ速さで魔王の腕を切り裂いき、魔王は怒り拳を振り下ろしたが彼の盾を超えることはできず、ついにゲローイによって滅ぼされた。
王都へ帰り報告をすると王はたいそう喜びゲローイは騎士団長、ドルークは副団長となり王都を守り続けた。
しかしそれからも二人は手合わせを続けては高めあったが剣を手にしたゲローイはドルークに負けることはなかった。
ある日王との晩餐の帰りにテラスを出ると下ではドルークが剣を振り訓練をしていた。
その光景を見たときに彼は気づいた。
彼は貴族や王との話し合いや食事会にばかり力を入れて鍛えることをしていなかったのだ。
ではなぜ負けなかったのか。
それは剣の力のおかげであった。
いつしか彼は剣に頼るばかりであったのだ。
それに気づいたゲローイは己を恥じ、テラスから飛び降りると近くにあった訓練用の剣を掴みその場でドルークに勝負を挑んだ。
結果は惨敗。
大地に倒れたゲローイは声を上げ泣いた。
次の日彼は騎士団長を辞し、ドルークに手紙だけを残し山へと消えた。
‘’永遠のライバルであり真の友 ドルークへ
今の私は貴公の隣に立つにはふさわしくない。
いつか共に戦えるよう己を鍛え再び貴公の前に現れる。
その時まで待っていてほしい。
そのときはまた勝負をし、ともに酒を酌み交わそう。
永遠のライバルであり真の友 ゲローイ‘’
全てを語り終えると一口水を飲みペコリとラミスはお辞儀をし、俺たちは拍手で称えた。
「そうでしたね。そんなお話でした。」
「わたしも久々に聞いて思い出しました。」
「ラミスは話すのが上手いな。まるでその場にいるかのようだったな。」
「お褒め頂き恐縮でございます。」
しかしラミスのやつカンペも無しでここまでスラスラ話せるとは、どれだけウルとメイに読ませられたんだろうな。
「ですが幼き頃はカッコ悪いなぁとしか思わなかったですが、今になって聞くとなかなか為になるお話ですね。」
「えへへへ、実は今でもメイは思ってたりします・・・・・。」
「たしかに理解力が乏しい子供には真に伝えたいものが見えないかもな。」
この話が伝えたいことはゲローイの武勇伝ではなく他人から与えられた力に溺れることなく自分を見失うなということだ。
ようは教訓話だな。
そのことを伝えるとメイはそっか!と手を合わせ恥ずかしそうにしていたが恥ずかしがることはない、その年じゃ完全に読み取ることは難しいからな。
その後もいろいろと話を聞いてから食事会兼お茶会を終わらせてそれぞれ部屋に戻った。
――――執務室―――――
俺は二本目の薬煙に火をつけ部屋の窓から先ほどの《ゲローイ英雄譚》を思い出す。
「しかしあいつらの事が今でも語られているとはな。半分以上御伽噺みたいになってるが、神界に帰ったら教えてやるか。ゲローイは恥ずかしさで悶えそうだけどな。」
あの話は約1500年前にところどころ真実とは異なってはいるが実際に起きた出来事だ。
まずゲローイとドルークが村で高めあっていたとあったが単に暴れまわっていただけだ。
なまじ大人より力があったからあちこちで悪戯や喧嘩を繰り返して半分以上追い出される形で王都に行ったんだよな。
王都に行ってもやることは変わらずにとうとう騎士団が動いて捕えられその性根を叩き直すため騎士団長が無理やり下級騎士として部下にした。
何度も逃げ出しては捕まりしごかれるを繰り返して10年もかけてやっとまともになったっけな。
それから魔王を倒してからは話通りで違うのは勝負後と手紙の内容だけだな。
――――――――
「ちくしょー!負けた!」
「がっははは。剣に頼りからそんなになんだよ!ざまぁみろ!」
「てめぇ・・・・・・調子に乗んな!ぜっていボコしてやるからな。覚悟してろよ!」
そう言い残しゲローイは走り去っていった。
一人残されたドルークはその後ろ姿を見つめながら嬉しそうに笑っていた。
「まさか自力で気づくとはな。もっと負けてから真実を伝えてボコボコにしようと思ってたんだがなぁ。まぁあいつもようやく本気を取り戻したんだからな、まだ楽しみが残ってそうだな。」
翌日手紙だけを残して突如姿を消したゲローイに王宮は大混乱を起こし事態収拾の為にドルークは騎士団長へ就任した。
そのことが正式に決定するとドルークは空に向け「あのくそやろー!」と叫んだ。
それから40年が経ち突如ゲローイはドルークの目の前に現れ突然勝負を挑んだ。
結果は引き分けに終わったが二人の顔には満足感があった。
その後死去するとこれまでの功績を称えて二人は下級の亜神となり二人で1柱の「友情神」として修業を積み、現在「心の世界」にて下級神ドルージバとして働いている。
ちなみにゲローイが残した手紙には次のように記されていた。
‘’くそ野郎のドルーク
俺は修行をする。
力をつけて必ずテメェをボコボコにするから首を洗って待ってろ!
あとで泣いても知らねぇからな!
追伸
騎士団長の地位は邪魔だからてめぇにやる。
お茶会やら謁見やら楽しいぞ~?
まぁがんばれや。
超イケメンでモテモテのゲローイ様‘’
というわけで今回は七夕にちなんで星のお話でした
実は7月7日当日の夜に七夕の事を思い出し思い付きで書きました(〃▽〃)ポッ
語られることと真実が違うなんてよくあることですよね




