12話 前兆
久しぶりの部下に会いさり気なく声をかけたつもりがへ―ルイスはばっと跪いた。
「お久しぶりです主長様。あいもかわらず美しいお姿で私は感嘆に震えております。失礼かと思いますが質問をさせていただきたいのですが。」
「あぁ許す。なんでも聞いてくれ。」
「はっありがとうございます。なぜ主長様は下界に降りられているのでしょうか。それからかなり御力を抑えられているご様子。なにがあったのでしょうか。それからその言葉使い。いえ!けして悪いというわけではなく‥‥その、むしろワイルドさがあって魅力が増して…。」
ほんのりと頬を染めながら質問を投げかけてくる様子に少し懐かしく思いながら頭を撫でてみるとビクッとしたあと顔を真っ赤にさせてうつむいてしまった。
「ルルのやつがミスをしてな、その修正のために人間になって降りたんだ。それより昔みたいに話してくれよ。寂しいじゃないか。」
「い、いえ!あの頃の私は若かったのです。どうかご勘弁を。」
「そうか。だがこうして真面目に仕事をしているとはうれしく思うぞ。ルルにも見習わせてやりたいな。次の定期給料日は期待しておけよ?」
「ありがとうございます!」
俺は微笑みながら元の場所へと戻ると「あっ。」と残念そうな顔をした。
いままで部下たちの俺の容姿を褒める言葉はお世辞だと思っていたがこの世界の住人たちの反応を見るに案外良い部類になるのかもしれない。
「仕事熱心なのはいいがベリアルは寝てるんだ。起こすから待ってくれ。それからこいつの前では俺のことを人間扱いにしてくれ。」
「そんな失礼なことを!いえ、わかりました。」
打ち合わせが済んだことで少し荒っぽく起こすと部屋の状況と目の前の神を見て呆然としたあとあわてて跪いた。
やっぱり本能的に上位者っていうのはわかるんだろうな。
「私の名は鍛冶神へ―ルイス。ドワーフと人族の子よ。お前たちは見事に神器を作り出しました。褒美に我が加護を与えましょう。受け取りなさい。」
「あ、ありがとうございます・・・。」
ベリアルは汗をダラダラと流しながら返事をしたが声が霞んでいる。
ちと刺激が強すぎたかな?
加護《鍛冶神の加護》を入手しました
「これからのあなたたちの活躍に期待しています。」
そういうとへ―ルイスは上へと上がっていき消え、部屋の状態も元に戻っていった。
「おい、大丈夫か?」
「まさかこの年になって神に会えるとは。なんとも美しい姿だった・・・。」
放心状態の彼を蘇生させ改めて出来上がった防具を見てみる。
無骨な見た目だったその軽装は加護を与えられた後見事な装飾がされ、
淡く光る白い表面は鏡のように姿を映していた。
「みごとなもんだな。」
「あぁ。なんと美しいのだろうな。・・・レイヌよ。」
ベリアルは軽装を手に取り俺の前に近づき差し出した。
「これがおぬしの防具だ。受け取ってくれ。」
「いいのか?この材料はおまえの大切なもんだろ。」
「いいんだ。これはおぬしとふたりで鍛えたものだ。ぜひ使ってやってくれ。」
受け取った防具をその場でつけてみた。動くのに支障はなく、まるで服を着ているようなほど重さを感じられない。
うん、いい防具だ。
「ありがとう。さっそく性能と見せびらかしに行ってくるよ。」
「うむ!しっかり宣伝してきてくれ。わしも今後はおもいっきり力を振るい冒険者の小僧どもに売ってやるわ。」
かるくお別れをして俺は冒険者ギルドへと向かった。
「おめぇレイヌ!いままでどこいってた!査定はとっくに終わってんのに受け取りにこねぇから心配したぞ!」
到着そうそうバリスに怒鳴られてしまった。鍛冶に夢中ですっかり忘れてたなんて言えないな。
「ん?おめぇすげぇ装備になってんじゃねぇか。どうしたそれ。」
「そうだった、バリスありがと。おまえの紹介してくれた店で作ってもらったんだ。すげぇ鍛冶の腕だったよ。」
「はぁぁぁ!?あの耄碌ジジィがこれ作ったのか!?なにがわしは落ちこぼれの鍛冶師だ!!だましやがって!俺も剣を作ってもらえるかな?」
「問題ないみたいだぞ。今後は全力で仕事するらしいから。それより金くれよ。」
あぁそうだったとギルド長室へと案内されたが忘れんなよ。
‥‥人のこと言えないか。
「さて、今回の受け渡しだ。まずゴブリンだが225体で2体で1銅貨だが、新鮮な状態だったから1体1銅貨。次に大蟷螂が同じく21体で1体1銀貨。岩芋虫が36体で1体9銅貨。肉食蝶が26体で1体7銅貨。殺人針鼠が11体で1体2銀貨。殺人熊が6体で1体3銀貨。色付きだが殺人熊の赤、緑、黄はそれぞれ2金貨、2金貨、
2金貨と5銀貨。最後に狂気熊が12金貨だ。しめて19金貨と3銀貨、1銅貨だ。それに加え月の滴草がおまえの情報通りでな、大量に入手できたから王から褒賞がでてなんと50金貨だ!よかったなあっという間に小金持ちだな。今度酒奢れよ。」
『原初の世界』で6931000円か、それなりだな。
金を受け取り帰ろうとすると真剣な顔で呼び止められた。なにやら重たい雰囲気だ。
「実はなおまえが倒した計325体の魔物、そして色付きが計4体なんだがな、はっきり言って以上な発生量だ。」
そうなのか。火山でも森でも大量にいたから普通だと思っていたんだが。
「今調査隊が現状を調べるだが嫌な予感がする。予定では5日後に戻ってくが事と次第によっては大部隊をつくる。そこでおまえには先頭をきって配置したいと思うが周りが青ランクが先頭じゃ納得しないだろう。よっておまえを白ランクに上げる。これが新しい冒険者証だ。」
渡されたカードは白い色、だがこんなに大幅にあげていいのか?
顔に出てたのかバリスはフッと笑った。
「おまえのレベルじゃすぐにでも最上位クラスにして活躍してもらいたいが
最下位から一気にとはいかないんだ。ここが精いっぱいなんだよ。」
話は済んだと席をたったので俺もギルドをあとにし宿に帰ろうと思ったがなんとなく歩きたくなりどこへ行くでもなくフラフラと町を散策した。
気が付くと薄暗い路地にいた。そろそろ帰ろうかと踵を返したがとある店に視線がいった。
見た目はどこにでもある普通の店だがなんだろう、すごい嫌な気配がする。
店に入ると頭の薄い太った男が気持ち悪い笑顔で近づいてきた。
「奴隷商へようこそ。どなたの紹介ですか?」
「いや、始めてきた。」
俺がそう言うと男は態度を変えうっとおしそうに投げやりに喋った。
「ここは貴族御用達なんだ。金もなさそうだし紹介もない。とっとと帰りな。」
「奴隷は地下か?」
気配は地下から流れてくる。
「だから帰れといって・・・。」
すこしイラッとしたので軽く壁を殴ってみた。壁は大穴が開いてずいぶんと風通しがよくなったな。
スキル《威圧》SSを手に入れました
称号《恐喝者》を入手しました
仮にも上の地位にいたから心の機微はわかるからいきなりSSなんだろう。奴隷商の男はみるみると青ざめていきあとずさった。
「商品をみしてくれ。」
凄みのきいた笑顔でそう告げると男は壊れたおもちゃのようにかくかくと首を縦に振り、震える足で地下へと案内をした。
中は埃とカビの匂いで満たされておりあまり吸いたくない空気だった。
通路の両側の檻には獣人や巨人族、人族など様々で数人エルフがいた。
「どの奴隷をお探しでしょう?」
先ほどとは違う態度にまたイラッときた。
「一番奥に案内してくれ。」
男は渋っていたがもう一度脅すとそそくさと案内しだした。
奥の檻に着くと俺は思わず息を飲んだ。
そこには神をも唸るほどの美しい女性がいた。




