10話 鍛冶への挑戦
2018.10.24 いろいろと修正
うわっ変なやつに声かけられたと思いゆっくりと振り返るとずいぶん小さなおじさんがいた。
それでも人間になった俺よりも少し低いくらいだが。
思わずステータスを確認してみると驚いた。
彼はドワーフという種族でレベルが132もある。
この町でも戦闘なら中堅の腕前だとみられるだろう。
「さっきから店の前でウロウロしていたからにはうちに用があるんだろう。こっちにきな」
ぶっきらぼうな口調でそう言う彼の後ろについていき店の中に入っていった。
店の中は外で見るよりもボロボロで一部の壁が剥がれており、こんな状態で商売なんかできるのか疑問に思う。
しかし、バリスは気分屋といっていたがさっきのステータスを見ると‥‥。
ドワーフはカウンターらしき台の向こう側へと座りふんすと鼻息を荒げやる気がなさそうに喋りだした。
「ようこそベリアル武具店へ、わしが店長兼制作者のベリアルだ。右の棚が武器、左の棚が防具だから勝手にみてろ」
顎でしゃくると仕事は終わったと言わんばかりに新聞を広げ、すでにこちらを見ていなかった。
そこまでこっちに興味ないなら呼び止めないでほしかったんだけど。
しょうがないから並んでいる装備を流しながら見てみると、バリスが言っていた通り気分屋なようで最低な品質が並ぶ中、武器と防それぞれ一品ずつあきらかに他のものとは比べ物にならない性能をした見かけはぼろい装備が置いてあった。
武器は一見ただのロングソードだが、使われている鉱物は鉄ではない。
防具においてもそれは同じで、更に両方ともわざと傷や錆を付けてこちらを試すかのような作り方をしていた。
おもしろい!
俺はそれを全て手に取りカウンターへとドサッと乗せた。
ベリアルはちらりとカウンターに置かれた装備を見た後、驚きの表情を浮かべ最後に俺の姿を見て固まった。
「これを作ったあんたにこの鉱石で防具を作ってもらいたい」
獄炎鉱石の一つをカウンターに置きニヤリと笑いかけると彼の反応を待った。
ベリアルはゆっくりと新聞をおろし、まるで逃げる魚を扱うかのようにそっと鉱石を持ち上げあらゆる方面から観察をしたあと、ため息をつきまたゆっくりとカウンターへと獄炎鉱石を戻した。
「坊主、おめぇがどこでこれを手に入れたか知らねぇが俺にこれは扱いきれねぇ。他を当たってくれ」
「アンタに作ってもらいたいんだが」
「わしには無理だ。そもそもこれは《魔鉱》、技術国に行くしか扱える奴はいねぇだろうよ」
またそっぽをむく彼の眼には寂しさが映っていた。
俺はそれでも頼み続けた。
「いや、俺はそれでもあんたに頼みたいんだ。この防具や武器を作り挑戦してきたあんたに。それに鍛冶の腕、普段隠しているようだがそうとうな腕前だろ」
そう、彼の鍛冶スキルは最上位の一歩手前のSランクだった。
ベリアルは何度目かの驚きを見せるとなぜか怯えた目をしていた。
「おめぇ、なんでそのことを‥‥」
「ベリアル、おまえは何に恐怖し、絶望し、悲しみに暮れているんだ」
「今日あったばかりのおまえになにがわかる!!わしはな、わしだってな!」
怒るベリアルの目の前に神剣レイアスを抜き突き出す。
それを見た途端に時が止まったかのように歪んだ表情のまま、目線だけで神剣レイアスを見定めようと凝視し始める。
次第に吊上げた眉が、ひきつらせた頬が下がっていき、腕前の事を話す以前の濁っていた眼が輝きを取り戻し始め、震える手で剣を取った。
「どうだベリアル、すごくないか?この剣は大太刀という武器で、俺の故郷にあったもんだ」
「・・・・・・」
「国一番の奴の渾身の出来だが、こんな武器を目指したくないか?超えたくないか?」
「・・・・・・」
「それとも、そんな気概も湧かないほど鍛冶師を止めちまったのか?」
慎重に剣を俺に返し一言ついてこいとだけ言うと奥の部屋へと向かった。
言われた通りに付いていくと、カウンター奥の部屋の中央には地下へと延びる階段があった。
ベリアルの後を追い降りていくと、まず目についたのがのすばらしい武器、防具の数々だった。
煌めくような大鎚、全てを飲み込みそうな漆黒の大剣、荒々しい甲冑などなど、冒険者たちの装備を思い出してもこれほどの装備を持っている者はそういないだろう。
俺は目を奪われながら更についていくと次第に作品物は無くなり、最奥には頑丈な扉が鎮座していた。
ベリアルによって扉は開かれると、立派な鍛冶場がそこにはあった。
鑑定する必要もない、鉄を溶かす炉からハンマー、細工用の道具類まで貴重な素材で作られているのはすぐにわかった。
ベリアルは炉の前に腰を下ろし、背中越しに自身の過去を語ってくれた。
彼は200年ほど前まで技術国ヴェルカーに住んでいたそうだ。
彼の父親は鍛冶なら世界一といわれる国内でも伝説と言われた鍛冶師だったそうだ。
父親の打った武器に切れぬもの貫けるものはないといわれ、作られた防具はドラゴンの顎だろうと敗れぬことはないとうたわれたほどの腕だったらしい。
しかし200年前、特別な金属を加工中に謎の爆発が起き、王都の2割を崩壊させた。
父親はその事故で死に、当時まだ子供だったベリアルは母親とともに国を追われ、この帝都に住みだした。
そう語り終えた彼の目から流れた一滴の涙が、当時どれほど辛かったかを表している。
「おふくろは言った、親父は世界最高の鍛冶師だったと。いつかおまえも親父を目指せと。おふくろを看取った後、わしは死に物狂いで鎚を振った。何年も、何年も、朝を問わず、夜も問わず、気づけば100年の月日が流れていった。だがダメだった!わしに打てるのは先の部屋の装備品止まりだった!どんなに腕を振っても、どんなに鉄を調べ上げても、わしは親父の足元にもおよばなかった!親父の口癖であった鉄の声を聞けという意味も理解できずに、気づいた時には全てを諦め客を試すような真似をしていた‥‥しかし」
袖で涙を拭いた後俺を真っすぐに見つめた。
その眼にはドロリとした暗い光は消え失せ、ギラギラとした眼になっていた。
「しかしお主の言葉に焚きつけられ、その剣をみて久々に心が震えた!長年わしの鍛冶への探求心はとうに消え去ったと思っていたが、自分でも信じられんがまだ燻っていたのだ!わしはその武器を超えたい。親父を目指すのではなく、親父を超えたい!おふくろの願い、そしてあの親父でさえ失敗したあの鉄を打ち親父を超える!だから頼むお前の防具、わしに作らせてくれ!」
そう言い切るとベリアルは額をガイン!と床に打ち付け深く頭を下げた。
その瞬間俺はこの男の夢を叶えたい、夢の先を見てみたいと思った。
「頭を下げるのはこっちの方だ。ぜひお願いしたい」
面を上げた彼の表情はまさに職人の顔だった。
さっそく防具づくりへとうつると、まずベリアルに何が足りないのか調べることにした。
ランクSとランクAが力を合わせるんだ、この世界最高の防具を作ってやろうじゃないか。
まず今の実力を見るために現状で最高の装備品を作ってもらう。
一通りみたが力加減は絶妙、温度の管理も完璧で鉄に合わせ、部分に合わせ、打ち方や温度も変えていた。
これは知識を得るだけでは届かない経験による高みだ。
俺は一緒に鉄を打ち、細かいところを教えてもらい、ベリアルは自身の知識の再確認の為に共に鉄を打ち続けた。
出来上がるころには自身の鍛冶スキルもランクSになっていたが、これでもまだSSには届かない。
そしてついに持ってきた獄炎鉱石を使っての防具づくりをお互い交互に打ち、外から鉱石をみて研究を続けた。
鍛冶場に籠って3日がたった。
未だに進展はなく獄炎鉱石はインゴットにもできずにそのままの姿で鎮座しており、お互いに疲れが溜まっているのが目に見えていた。
「くっ腕が・・・」
「大丈夫か?ちょっと早いが今日はここまでにしよう。年なんだから身体くらい労われよ」
「はっなにをいう今のわしは過去最大のコンディションだ!」
しかし身体は正直なようで最後の一振りは完全に力が抜けていた。
リィィィィィン!
!?今の反応はなんだ?
「はぁっはぁっ。どうやらおぬしが言う通り今日はここまでに・・・・どうした?」
ベリアルの最後の一振り。
力が入っていないにも関わらず鉱物が淡く光り、今までとは違う反応を見せた。
なんだ、何が起きた。
今までとなにが違うんだ。
「おい、大丈夫か?おぬしも疲れているようだ、共に休むぞ」
そういうベリアルの手を見るとブルブルと小刻みに震えている。
しかたない休むか。
なにかわかりそうな気がしたのだが。
諦めて観察の為に組んでいた足を延ばしながら立ち上り、上の階に戻ろうとしたそのとき、彼の掌が淡く光っていることに気づいた。
「なぁベリアル、その光はなんだ?」
「ん?おぉ、力がぬけて魔力がつい漏れてしまったようだ」
魔力?
そう、魔力だ!
今までと先ほどの違い、それは魔力の行使だ!
「待ってくれベリアル!最後にもう一度、もう一度だけ試してみよう」
「じゃがわしもおぬしも体力の限界だぞ?」。
「二人で協力すればあと一回はできるだろ。頼むよ」
「‥‥なにかに気づいたのだな。しかたない、ではやるか」
いくら常識離れした筋力をもっていても加減を意識してた3日間続けての作業は身体にかなりの負担を与えている。
数時間休めば元通りになるが、今の閃きをためしてみたい。
ベリアルが火入れ、俺が打ちを担当し、一打ち入れる。
リィィィィィィィン
今までと違う音に気付き急いで鉱物をみるとやはり淡い赤色に光り出していた。
「やっぱりか!」
「な、なんと!」
ただいま引っ越しの準備中で配信が遅れています。ごめんなさい。




