五
客との個室戯れの一時を終え、待機所に戻った冴は時計を見る。時刻は二十三時三〇分過ぎ。建前は翌日正午だが、場末の本店では事実上の「オーダー・ストップ」だ。
待機所には未だ営業時間の体で繭美頬月の次として早速勤務に入ったラスト二人が待機していた。
新入り二人を一瞥後、冴はソファーに座る。閉店までの時間を利用して一つ犯人を当ててみる事にした。
繭美は、性病感染の中、療養に専念、いや、辞める理由が出来た、これ幸いと自ら刺されに行った――正確には、足裏に針の感触が走るだけでも良かった――が、画鋲を外し、絨毯に配し、自作自演に事故を起こしたのではない。すぐそこに事故を起こせる凶器があった事象を上手く利用していただけだ。
頬月は、繭美から性的搾取を求めたが、存在そのもので良かったのだから、別に傷害を負わせなくとも繭美の性的搾取はできたはずだった。
私は、シフト表の裏に叫びを書いただけで、見せたいつもりなどなかった。むしろ一生、日の目を見ないでいてくれた方が、ある意味では良かった位だ。誰が剥がしたのか。それも誰かを傷付ける悪意をもって。
客か。待機所は、一種のスタッフルームだ。客は立入禁止となっている。キャストの待機所へ来る事が出来ない。出来るはずがない。もし入ってきたら不法侵入で事務室送りだ。
残るはスタッフの誰か。画鋲一つの傷害事故で、キャスト進退問題の大事にもなった中、まさか岩田が仕掛けた嫌がらせではないだろう。個人契約の上、人事を握っているのだから、辞めさせるだけならば、いくらでも即日契約解除させられる身だ。
そもそもが、気付いた者なら誰でも良かった無差別犯罪だ。
では誰が?
スマホを開くと、客との戯れの前に待機所で繭美にチャットで問い詰めた容疑者の名が返って来ていた。
やはりあいつのようだ。待機所に入る唯一のキャスト以外の者。
共鳴するようにインターフォンが鳴った。
「はい――分かりました」
インターフォンを戻した冴は事務室に向かった。




