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九
二人の怒鳴り声は、薄い扉を隔てた従業員用通路を介して待機所まで漏れ聞こえていた。これも、店の経営事情を暗に聞かせる設計なのだと言うから皮肉なものである。
ソファーに座って指名が来ない事を分かっている中、新入り二人は暗い想いで今は綺麗に張り直されているシフト表と絨毯の毛が削り取られた一画を交互に見比べていた。
繭美の血で汚れた絨毯は、血液感染の懸念から、繭美の血を吸った絨毯の毛が毟り取られていた。医学的に傷口感染しなければ、血液感染は、そうそうに起こるものではないとはいえ、素足に切り傷一つあれば大事と、性感染に敏感を期しての心理的な事前措置だ。
「ごめんね。そういうわけだから、少しの間だけど、よろしく!」
「……はい」
「分かっています」
硬い表情の二人に愛想笑いを浮かべると、冴は、急いでスマホを手に取り、店で何らかの動きがあった、追って連絡する、との報を繭美と頬月に打電した。




