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ぱられる×ぱらだいむ 〜目覚めるとゲームのオープニングで退場するモブキャラになっていたので、ヤリたいように生きようと思います  作者: ねこぱんだ


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第二話 クレア様が可愛いすぎる

 クレアはアッシュが構えるのを確認すると姿を消した。


 距離を一瞬で詰めて背後から強襲する。

 振り下ろされた短剣は鈍い光を帯びながら、アッシュの首元に吸い込まれていった。

 それは『ビハインド・ナイトメア』という名の初見殺しのスキル。

 いきなり背後に現れて首を掻き切る一撃必殺のスキル。

 相手は何が起こったのか理解できないまま死に至る。


 だがアッシュは短剣が首に刺さる直前で、左腕を立ててガードする。

 まるでクレアの動作が予め分かっていたかのように。


「なっ! どうして!?」


 必殺の一撃を防がれて、クレアから驚嘆の息が漏れた。


「クレア様、惜しいですね!」


 アッシュは空いてる右腕で鋭いカウンターを放つ。

 素早くバックステップで距離を取るとクレアは難なく躱す。

 だが息をつく暇もなくアッシュは懐に入りこんでいた。


「くっ!」


 クレアは再び距離を取ろうとするが、アッシュがピタリとその動きに付いてくる。

 アッシュは完全に間合いを掌握して刻みながら攻撃を放ち続けた。

 連続で放たれる拳を受けてクレアは確実に追い詰められていた。


 スキルのリキャストが完了して、逃げるように再び姿を消すクレア。

 再びアッシュの背後に姿を現すと短剣で斬りつけた。

 まるで全てが見えているかのような動きで、上体を反らすアッシュ。

 満を持した放たれたクレアの反撃は虚しく空を斬った。


「クレア様はスキルを使う時、左手の小指がほんの少しだけ動くんですよ」


 クレアはアッシュが何を言っているのか分からなかった。

 言っていることが理解出来なかった。


「……貴方とは初めて会ったばかりですが」


 ほんの数分前に出会ったばかりなのだ。

 クレア自身すら知らないような癖をどうして知る事が出来るだろう。


「クレア様はそうかもしれませんね。ですが俺は貴女をずっと前から知っているんですよ」


 アッシュは会話を交わしながら拳を放ち続ける。


「それとガードした後、三フレほど止まるんですよ。こんな感じで……ね!」


 左のジャブをガードさせて、右ストレートを叩き込んだ。

 クレアの防御が遅れて、肩に深い攻撃が当たる。


「くっ!」


 苦痛で眉間が歪む。


「そろそろですか? ドレインキス」


 軽い口調でアッシュは次の攻撃を言い当てた。


 クレアは戦慄した。

 動きは読まれ、攻撃は防がれ、リーサルスキルまで知られている。

 相手が魔王だったとしても、ここまで後手に回ることはない。


「ば、バカにしないで!」


「キタ!」


 これは状況が悪くなってくると、クレアが言うセリフだ。

 そろそろか、とアッシュは考える。


 同時にクレアの小指は微かに動いた。

 動いてしまっていた。

 アッシュは虚空に向かって裏拳を放った。


 背後に現れたクレアに拳が直撃する。


「あ……」


 強烈な一撃を受けたクレアは、あっさりと意識を手放した。

 身体が崩れ落ちる瞬間、アッシュは片腕でクレアを支える。

 そして両手で抱き上げると、リアカーに向かって歩き出した。


  ☆


 目を覚ますと、わたしは木の床の上に寝かされていた。

 横にはわたしを圧倒した男が腰を下ろしている。


「クレア様、何処か痛い所はないですか?」


 男は心配そうな顔をしながらわたしを見ている。

 さっきの思い出すと左の頬が痛みだした。


「これを使って下さい。俺が作った薬なので効かないかも知れませんが、何もしないよりは良いと思います」


 男は薬瓶を取り出すと、蓋を開けてくれる。

 中には、どろりとした緑色の粘液が入っていた。

 頬に塗ると、少し痛みが和らいだ気がした。


「貴方は敵だったと思うのですが……私をどうしたいのですか?」


 敗れた相手を休ませたり、傷薬を提供したり。

 この男の考えている事が分からなかった。


「そうですね。王国にでも引き渡しましょうか」


 どこか試すような視線を向けてくる。

 彼は私を知っていると言った。きっと魔族の幹部という事も分かっているだろう。


「人間に捕まるくらいなら……。貴方の手で私を殺しなさい」


「クレア様ならそう言うと思ってました。では俺の女になって下さい」


「えぇ?」


 何を言っているのか理解出来なかった。

 言われた言葉は分かるけれど意味が分からない。

 ただ嫌な気はしなかった。

 魔族は武を尊ぶ、強い雄に惹かれる種族だから。


 真剣な瞳が真っ直ぐに私を見つめていた。

 私はこれまで感じた事がないほど胸が高鳴る。

 けれど、ここ流されてはいけない、と必死に視線を反らした。


 その、ささやかな抵抗も呆気なく崩された。

 彼は両手を地面について、私の上に覆いかぶさっていた。


「俺がどれだけ貴女に焦がれているか知っていますか?」


 そんなの知るわけがない。

 ただ私の事を見てくれているのは分かった。


「そんな事……知るわけありませ……ん」


 変わらない眼差しを向けられて頬に熱が集まってくる。

 喉がつまって掠れた声がでた。

 男の片方の手が私の顎に触れた。

 頭では手を払おうと思っているのに、身体が言う事をきかなかった。

 彼の唇が優しく触れた。


「あ……」


 声にならない吐息が漏れる。


 これまで知らなかった感情に飲み込まれた。

 夜が明けるまで彼は狂ったように私を求め続けた。


   ☆


 森に白い日差し振り注いだ。

 隣で寝息を立てているクレア様の横顔を眺めながら困惑していた。

 本来クレア様は主人公(レオン)と結ばれるはずなのに、何故か俺と結ばれてしまったのだ。

 やってしまった感が半端ない。

 だがアッシュの過去を知ってしまった以上、俺としてはレオンに遠慮をする必要はないと思っている。

 むしろシナリオをぶっ壊して、俺が主人公に取って代わっても良いとさえ思っていた。


 そうと決まれば次の行動プランは……。


「ん、んん……」


 腕の中でクレア様の瞼が震えた。


「クレア様、おはようございます。起こしてしまいましたか」


「おはようございます……ええと……」


 クレア様は気まずそうな表情をしていた。

 そう言えば俺の名前を言ってなかった。


「失礼しました。名前を名乗っていませんでしたね。俺はアッシュって言います」


「そうですか。アッシュ……様」


 俺ごときに『様』なんて付けなくても良いと思ったが、クレア様が満足そうにしていたのでスルーした。


「体調は悪くないですか?」


「はい」


 微笑むクレア様を見て、可愛いなんて思ってしまった。


   ☆


 俺達は服を着た後、リアカーの側に立っていた。


「それでは一度、戻ります」


 クレア様は、漆黒のロングドレスから何か取り出した。


「転移石ですか」


「やはり、アッシュ様は全てお見通しですね」


 穏やかに微笑むクレア様。

 そして微かに触れるキス交わした。


「気をつけて下さいね」


「心配して下さるのですね。嬉しい……」


 転移石が起動して、クレア様の姿が消える。

 俺はしばらくの間、その場所から動かずに見つめていた。


 クレア様の姿が完全に見えなくなるまで見送った後、俺はある場所に向かって歩き出した。


(レオンが手に入れるはずのアーティファクト。悪いが俺が先に手に入れてやる)

不定期更新です。

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