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ぱられる☆ぱらだいむ 〜目覚めるとエロゲのオープニングで退場するモブになっていたので、全てのヒロインを攻略しようと思います  作者: ねこぱんだ


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1/2

第一話 エロゲのモブに転生した

 時間は深夜十二時を少し過ぎた頃だろうか。

 俺――灰森一郎は一年前に買ったエロゲを、ようやくコンプリートした。


 タイトルは『ぱられる☆ぱらだいむ』。通称、パラパラ。

 ポップなタイトルに似合わず、硬派なアクションRPGだ。

 戦闘は無駄に難しいフルアクションで、フレーム単位の操作が必要になってくる。

 しかも敵が強すぎてワンミス即死の死にゲーだ。

 戦闘だけでみると評価は超超超クソゲーである。

 それでいてキャラクター毎の親愛値によって、エンディングが変わるやり込み系。

 同じ戦闘を何千回いや何万回繰り返したか分からない。

 全ルートを回収できたのは正直、奇跡だと思っている。


 ゲーム雑誌での評価は5段階中の最低になっていた。


 それでも俺を奮い立たせたのは、そこに究極のエロがあったから。

 女の子とのあんな事やこんな事が驚くほどのクオリティで表現されるのだ。

 控え目に言ってパラパラ最高である。


 俺がエンディングを見終えると、画面に1/65535と表示された。

 数字の意味を理解できないまま待っていると、画面に可愛らしい文字で『シミュレーションモードお疲れさまでしたぁ。パラレルモードに移行しますか?』と表示された。


 パラパラさんは、あのクオリティで本気を出し切っていなかったらしい。

 この神ゲーを更に1年遊べるかもしれない。

 戦闘はクソゲー以下だが。


 俺は喜び勇んで『はい』をクリックした。


『……パラレルモード起動中……起動完了』


 少しパラパラらしくない雰囲気だと思った。


『……ソウルトランスポーター起動準備完了』


 今まで見たことがない単語が出てくる。


『カウントダウン開始………5……4……3……』


 嫌な予感が俺の脳裏をかすめる。

 こんな時はいつも良くない事が起こった。


「ちょっとまっ――『2……1……プロジェクトパラレルパラダイムを実行しました』」


  ☆


 目が覚めるとベッドが異様に硬かった。


(硬いなんてものじゃない、これ絶対に地面の上だろ!) 


 半ギレで首を傾けると、飛び込んできた光景に目を疑った。

 周囲で短い雑草が風で揺れている。

 視線を遠くに向けると、木々が青々と生い茂っている。


 そして身体の下はベッドではなく地面だった。


(……は? ここ何処だ?)


 この場所へ来る前、何をしていたのだろう。

 パラパラをクリアした事は覚えている。

 けれども、その後の記憶がない。


 その時、誰かの記憶を思い出した。


 それは無能な男の記憶だった。

 無職で生まれ冒険者になってもまともな仕事がない。

 無能とパーティーメンバーに罵られて生きてきた。

 そして魔族のドレインを食らって死亡。


 身体を半分起こすと、目の前には女性が驚いた表情を向けていた。

 記憶の主を殺したのは、この魔族の女だった。


 脳みそは焼け切れそうで身体は死ぬほど怠い。

 それでも起き上がらないといけなかった。

 力が入らない足を踏ん張って無理矢理立ち上がる。


(エルダーサキュバスのクレア様じゃねえか!?)


 俺は目の前の魔族を見て目を剥いた。

 |『ぱられる☆ぱらだいむ』《パラパラ》の魔族が四天王の一人。

 黒いロングストレートにきめ細かい白磁の肌。

 一度みたら忘れない紅玉の瞳。

 タイトな漆黒のロングドレスは女性らしさを引き立てている。

 色欲のクレア、その人だった。


 そうなると俺の中で疑問が湧いてきた。

 クレア様と俺がリアルで出会えている理由が分からない。


(もしかして俺はパラパラの世界に来たのか?)


 そんな意味不明な結論にたどり着いた。

 むしろ、それしか考えられなかった。


 そうなると俺は誰なのかという話になってくる。

 流れ込んできた記憶の主はアッシュという人物だった。


(アッシュと言えば確か……) 


 『パラパラ』のプロローグで、主人公が魔物から逃げた時に、アッシュが犠牲になったとか何とかって言ってたような気がする。

 アッシュには申し訳ないけれど、ゲー厶をしている時はコイツ誰だよと思ってた。

 こんなモブにも、しっかりとした背景がある事に驚いた記憶がある。


「ねえ、貴方。どうして一人で百面相をしているのかしら?」


 既に驚いた様子は鳴りを潜め、涼しい顔をしたクレア様が俺を見下ろしていた。

 死んだ人間が生き返ったら誰だって驚くと思う。

 驚いたお顔も大変、美しうございました。


「色々と諸事情があったもので……。ですが今はもう大丈夫です、クレア様」


 ピクリとクレア様の美しい眉が動く。


「……どうして私の真名を知っているのですか?」


(しまったああああ! 俺達、初対面だった!)


 アッシュ君、大失態である。


「ククク、どうしてなんでしょうね?」


 とりあえず、不敵な笑みを浮かべて疑問系で返事をする。


「答える気はなさそうですね……。それでは、やむを得ません。身体に聞くとしましょう」


 身体に聞く。なんて甘美な響きなのだろう。


「不本意ですが、喜んでお受けしましょう!」


 目前に迫ったご褒美に、俺のテンションはうなぎ登りになっていた。


 とりあえずアッシュは何ができるのか確認する事にした。


 まず大前提で職業は無職だ。

 ゲー厶では無職の説明がなかったので、詳しくは分からない。

 彼の記憶から察するに、特別な事は何も出来ないと考えるべきだ。

 はち切れんばかりの腕や脚、隆々とした大胸筋を見ると、格闘技に適正はありそうだ。

 試しに拳を突き出し、蹴りを繰り出してみる。

 一挙一動で風を切る音がした。

 思っている以上に身体が動くのは嬉しい誤算だ。

 これならアーツやスキルが使えない普通の格闘家として戦う事が出来そうだ。


 幸いな事に『パラパラ』の戦闘は数万回やってきた。

 誰にどのような特徴があって、ナニに弱いという情報は知り尽くしている。

 特にクレア様は何度もリトライを繰り返しながら攻略した。


 準備を終えた俺は静かに拳を構えた。

不定期更新です。

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