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063 こいつら何者?

 僕はちょちょちょっと走ってジャックの元に行く。


「何かあるの?」

「おわっ⁉」


 僕がジャックに話しかけると、ジャックの隣にいたタンゴが大袈裟なくらい驚いていた。


 でも、今はジャックの言葉の方が気になるから、タンゴのことは無視だ。


「ジゼル……」

「え……?」


 ジャックは、今にも泣いてしまいそうな顔で僕を見た。


 なんでだろう? 厄介なお客さんは僕の魔法で拘束したし、もう安全になったはずなんだけど……?


「なんじゃ、これは⁉ まったく動けんぞ!」

「魔法も使えん!」

「これが、スラムの聖女の力……!」

「控えなさい、ベルリッヒンゲン! キャメロン! ガッツ! あれは、あの方は――――ッ!」


 スピリットバインドで拘束したお客さんたちが喚いている。


 よく見ると、黒髪の少年と赤髪の騎士はニンゲンだと思うけど、他の二人は種族が違うみたいだ。


 エルフとドワーフかな? ここはニンゲンの国だし、こんなところで見るのは珍しいね。


「あの方こそ、わたくしたちが探し求めていた聖女ですわ! 魔力の見えないあなたたちにも、あの方の力は身をもって知ったでしょう? わたくしたちにできることは、頭を下げ、言葉を重ね、力を貸してもらうことを懇願することだけです! わたくしたちは、あの方の足元にすら力が及ばないのですから!」


 エルフの女の子かな。オーレリアとそう歳が変わらないように見えるけど、エルフは長寿だから、ひょっとしたら僕よりも歳上かもね。


 エルフは他種族に対して高圧的で誇り高い種族と聞いていたけど、言葉の意味を噛み砕いてみると、だいぶ下からな態度だ。この個体が特別なだけだろうか?


 でも、エルフの言葉に一番驚いているのは、お客さんたちだった。


「まな板女……。それほどなのか……?」

「フィルレインがこんなに怯えて……?」

「フィルレイン、この力が聖女の力だというのか⁉ 我々は、聖女一人にしてやられたと……⁉」

「心して聞きなさい。あのジゼルという少女の魔力量は、わたくしの十倍以上です……」

「「「……ッ⁉」」」


 あのエルフの少女、フィルレインというらしい。


 フィルレインの言葉に、お客さんたちが恐れを含んだ驚愕の表情を浮かべて僕を見ていた。


 僕は知らなかったけど、エルフって魔力の量が見ることができるの?


 僕は確かに魔力の量には自信があるけど、でも、さすがに僕の十分の一以下なんて、魔法使いを名乗れるレベルなのだろうか?


 あ! だからこのフィルレインというエルフは弓を持っているのか。


 たぶん、魔力の量に自信がないんだね。


「どんなバケモノじゃ……」

「それは本当なのか⁉」

「聖女とは、それほどの……!」


 お客さんたちは驚いているみたいだけど、僕なんて大したことないよ。その辺にいるスライムと一緒さ。


「どうすっかなあ……」


 僕の隣では、ジャックが天を仰いで頭を掻きむしっていた。


「どうしたの、ジャック? せっかくジゼルが拘束してくれたんだし、このまま殺して埋めちゃえばいいんじゃないの? おらたちがやった証拠はないんだし」


 キョトンとした熊みたいな顔で意外と物騒なことを言うバーグ。


「いや……」

「何か問題があるのか?」

「お、俺にできることなら、なんでも協力します!」


 フェイディもタンゴもお客さんを処理する方向で考えていたようだ。


 スピリットバインドは、一度攻撃を受けると解けちゃうんだけど、この場には僕もいるし、完封できると思うんだけど、それじゃダメなのかな?


「これは何の騒ぎなの?」


 その時、さすがに騒々しくしすぎたのか、オーレリアが護衛を連れて現れた。


「状況を説明してくれない? こいつらは何なの? ずいぶん豪華な格好だけど」

「こいつらの言葉信じるんならだが……。あの黒髪の男が、救世の剣を抜いた勇者らしくってよう……」


 ジャックの言葉を聞いて、オーレリアが目を細める。


「勇者? 勇者って、あの大昔に魔王を倒したっていう? あと、その救世の剣って何よ?」

「知らねえのかあ……」


 ジャックが周りを見て、誰も救世の剣について知らないと知ると、がっくりと肩を落として説明してくれる。


「救世の剣ってのは、勇者が使ってたっていう伝説の剣でな。王都の中央広場にある岩に刺さってるんだわ」

「そんな伝説の剣なのに、広場に飾られてるの? 盗まれたりしないの?」


 僕もここ最近かなりニンゲンのことがわかってきた。


 たしかにニンゲンにもいい人はいるけど、悪い人もいる。そんな高価そうな剣があったら、真っ先に盗まれてしまうだろう。


 それとも、その王都にいるニンゲンはニンゲンの中でもいい人ばかりなのだろうか?


「いやな、ジゼル。救世の剣は、誰にも抜けないんだ。伝説では、勇者にしか抜けないとされている。それを、そこのガキは抜いたとぬかしやがる。普通なら、与太話だと思うんだがあなあ……。あそこのちっせーおっさんと、座り込んでる耳の長い女がいるだろお? ありゃたぶん、ドワーフとエルフだ。あのガキだけなら、与太話で済むんだけどよお。ドワーフとエルフまで動いているとなると、もしかしたらあのガキは本当に勇者かもしれねえ」

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