↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
56/73

056 破門解除

「ふぅ……」


 僕は自室に帰ってくると、格調高そうな椅子に座る。


 すると、すぐにカンナがお茶を用意してくれた。


「ジゼル様、お疲れではないですか?」

「うん? ぜんぜん大丈夫だよ」

「それならばよろしいのですけど……。どうしてジゼル様はあんなにタンゴを気にかけられるのですか?」

「うーん……」


 やっぱり、同じ魔物仲間だからというのが大きいかな。まぁ、まだ確定ではないのだけど。でも、状況から考えるとタンゴは魔物である可能性が高い。


 毒虫を名乗っているのだから、やっぱり毒蜘蛛やムカデ、サソリなんかの魔物なのかな?


 たぶん、僕と同じように擬態のスキルで姿を変えてニンゲンに化けているのだろう。


 タンゴは前々からこのスラムにいたようだし、擬態の技術も高いのだろう。僕の目からはニンゲンにしか見えなかった。


 でも、タンゴも魔王軍からの脱走兵の可能性が高い。周りに人がいたから直接聞けたわけじゃないけど、逃げてきたって言っていたしね。


 それに――――。


「タンゴの能力は役に立つからかな?」


 見ていた感じ、タンゴはあまり薬には詳しくなかったみたいだけど、学習意欲が高そうなのが好印象だった。


 種族的にはポイズンスライムであり、医療の経験のある僕の方が、作り出せる薬の種類も毒の強弱も思いのままだ。


 でも、僕がハッテンバロー大要塞でやっていたように、体内で薬を作って投薬するのは、今のニンゲンの体では不自然すぎる。


 そうなると、以前のようにキュアポイズンの魔法を使うことになる。だけど、キュアポイズンはあらゆる毒に対応しているけど、その分、専門性はないんだよね。だから自分で解毒薬を作って投薬した方が効果が高い。病気に対しても同じことが言える。


 魔法は便利だけど、時には薬を作った方がいい場合の方がいいことが意外と多い。


 タンゴには、その薬部分を担当してもらう感じだ。


 そしたら、タンゴは腐蝕銀鎖やスラムにとって必要な存在になれる。そしたら、タンゴがもし魔物バレしても助かるかもしれない。


 まぁ、僕が全部やってもいいんだけど、製薬は時間がかかる。だから、同じ脱走兵の魔物のよしみでタンゴでやってもらおう。


 タンゴなら、毒の知識があるから打って付けだしね。


「タンゴに薬を作ってもらえば、その分、僕の時間が増えるからね」


 端的に言ってしまえば、僕はこのスラムでの生活を楽しみたいのだ。


 せっかく南スラムの支配者である腐蝕銀鎖の中でもかなりいい地位を手に入れたのだ。できれば、このまま安寧に暮らしたい。


 思えば、ハッテンバロー大要塞ではずっと働いていたからね。僕はゆっくりしたいのだ。



 ◇



 その日の夜は、いつもの食堂ではなく、広場で食事になった。


 普段着からドレスに着替え、オーレリアと共に広場に向かう。


 広い広場にはかなりの人数のニンゲンが犇めき合うように存在していた。どうやら、今日は宴会のようだ。


 腐蝕銀鎖って、何かいいことがあるとみんなで祝う風習があるらしい。今日は何のお祝いだろうね?


「ジゼル、行くわよ」

「うん」


 オーレリアに続いて広場に作られた台の上に行くための階段を上る。台の上には、いつものようにテーブルと椅子があり、爺がお辞儀をして僕たちを迎えてくれた。


 台の上に乗ると、視界が高くなって、広場が奥まで見える。広場の中央ではパチパチと大きく組み立てられた木材が燃えていた。その熱に煽られたのか、僕たちを見るニンゲンたちも、まるで爆発する直前のような緊張感が漂っていた。何かあったらすぐにでも狂喜乱舞しそうだ。


 というか、一部のニンゲンは僕たちを見ただけで感極まったように奇声をあげている。僕たちは人気があることを喜べばいいのかな? 手を振ってあげたら喜ぶだろうか?


「見ろ! 聖女様がオラたちに手を振ってくださってるぞ!」

「尊い!」

「もう死んだっていい!」

「バカ野郎! 聖女様の前で死ぬんじゃねえ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「総長! 総長もお願いします!」

「おめえ! 最高じゃねえか!」

「総長! 総長! 総長!」

「「「「「総長! 総長! 総長! 総長!」」」」」


 僕が手を振ったら、なぜか総長コールが始まってしまった。


 さすがに無視できなかったのか、隣に立っていたオーレリアは苦笑しながら控えめに手を振った。


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」


 まるで地鳴りのような歓声があがる。すごいね。


「今日はみんなに話がある!」

「総長のお話だぞ! 静かにしろ!」

「殴ってでも黙らせろ!」


 しばらくすると、熱狂していた広場はシンッと静まり返った。それを確認したオーレリアは、厳かに口を開く。


「聞け! 我らは教会と交渉し、我らを不当に破門したことを改めさせた! 我らはもう破門された身ではない!」

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。