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スラムの聖女だけど、擬態したスライムってバレたら討伐されるよね?  作者: くーねるでぶる(戒め)


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20/21

020 お部屋とカンナ

 宴会も終わり、僕たちは腐蝕銀鎖のお屋敷まで戻ってきていた。


「どうぞこちらへ」


 案内してくれるのは、爺と呼ばれる老いた男個体のニンゲンだ。もともとこのニンゲンが、腐蝕銀鎖のお屋敷の家令、使用人で一番偉いニンゲンだったらしい。仕事に復帰できたのが嬉しいのか、その顔には笑顔が浮かんでいた。


「こちらがジゼル様のお部屋になります」

「ここ?」


 爺に案内された部屋は、二階の角部屋で、日当たりもよく、とてもいい部屋だった。


 掃除も行き届いているし、僕にはまだよくわからないけど、家具もできる限りいいものを取り揃えた感じがする。僕にはもったいないくらいの部屋だ。


 ハッテンバロー大要塞で生活していた時は、治療室が僕たちの部屋みたいなものだったからね。個室なんてなかったから、少しドキドキしてしまう。


「この奥には寝室と、ウォークインクローゼットがございます」

「さらに二部屋……!」


 個室だと思ったら、僕一匹でなんと三つの部屋を使ってもいいらしい。すごいね!


「クローゼットには、私が昔着ていた服を運ばせておきました。すべて、ジゼルにプレゼントします」


 そう言ったのは、僕を後ろから緩く抱きしめているオーレリアだ。


 オーレリアは酔うと抱きつき癖があるのか、僕はずっとオーレリアに抱きつかれたままだった。


「ありがとう」

「いえいえ、ジゼルのためですもの! ちなみに、私の部屋は隣です。いつでも遊びに来てくださいね」

「うん」


 腐蝕銀鎖のトップ、総長というらしいけど、総長のオーレリアの部屋の隣ってかなりの好待遇ではないだろうか?


 なんだか一気にすごいことになったなぁ。今朝はオーレリアに会うことにも警戒されていたのに。


「ジゼルも自分の部屋を見て回りたいでしょうし、今日はこのあたりで解散しましょうか。お着換えにも時間がかかりますし……」


 オーレリアが名残惜しそうに僕から手を離す。


 たしかに、初めて貰った自分の部屋を見てみたい。


 それにしても、お着換え? 何のことだろう?


「カンナ、あとはよろしくね。ジゼルをお姫様にしてあげて」

「かしこまりました」


 そう言って頭を深く下げたのは、オーレリアと近い歳であろう茶髪のニンゲンだった。


「ジゼル、カンナはあなたの自由に使っていいあなた付きのメイドよ。仲良くしてあげてね」

「え?」


 僕が、メイドの主?


 メイド、というか使用人を持つということは、それだけでステータスだった。まさか、借り物とはいえ、僕がメイドの主人になる日が来るなんて想像もしていなかったよ。


「よろしく」

「はい、ジゼル様。よろしくお願いいたします」


 カンナは笑顔を浮かべて僕に向かって頭を下げた。


「では、行きましょうか。ジゼル、また後でね」


 そう言って、オーレリアたちが僕の部屋から出ていってしまう。


 部屋に残されたのは、僕とカンナの二人だけだ。ちょっと緊張してしまう。


 どうしようかなとキョロキョロと部屋の中を見ていると、カンナが口を開いた。


「ジゼル様、湯浴みはまだ浴室が壊れているので無理ですが、体を拭きましょう。お湯と布をご用意いたします」

「え?」


 気になって見降ろすと、白かったシーツの裾は茶色く汚れ、僕の足も汚れていた。


 森の中を歩いたし、スラムも決して綺麗な場所ではないからね。気が付かないうちに、僕はずいぶんと汚れていたらしい。これはカンナが綺麗にすることを勧めてくるわけだ。


「じゃあ、お願いしようかな」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 そのまま部屋を出てお湯の準備をするのかと思ったら、カンナはすぐに帰ってきた。


「もういいの?」

「はい。お湯と布の手配を済ませましたので」

「なるほど……」


 もしかしてだけど、カンナって使用人の中ではランクが上の存在なのだろうか?


 たしかに考えてみれば、僕専属のメイドであるカンナがお湯の準備をして僕の傍を離れるより、他の誰かに頼んだ方がいい。たぶん、そんな感じなのだろう。何か頼もうと思ったら、自分のメイドがいないという状況を減らすための工夫に違いない。


 なるほどねぇ。よく考えられたシステムだ。ニンゲンってけっこう頭がいいのかもしれない。


「お湯は間もなく到着いたしますので、その間に本日のお召し物を決めてしまいましょう」


 僕はカンナに案内されて、初めてウォークインクローゼットの中に入った。


 そして、驚いた。


 なんと、そこそこ広い部屋を所狭しと服が並んでいるのだ。


 服、というか、服に使われる布自体が、魔族の間では高級品の類だった。新品の布はもちろん、服になってからも高価で、誰かの古着でも価値が発生する。本当に、ボロ切れになるまで価値があるもの。それが布だ。


 その布を、それも新品だと思われるほど綺麗な布で作った服が、こんなにある。


 ニンゲンの価値基準はわからないけど、魔族から見たら、この部屋だけでかなりの資産に見えるだろう。


 まぁ、本来服を着る必要ないスライムの僕にはわからない基準だけど……。

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