021 プレゼントと作戦会議(裏)
「こちらのお召し物は、オーレリア様からのプレゼントと伺っております。どうぞご自由にお使いください」
そう言うカンナの顔には隠し切れない悲しみの色がある気がした。
「カンナ、どうかしたの?」
「あ、いえ……。実は私はオーレリア様のお召替えを手伝ったこともあるのですが、その時見た服の量と比べると、半分以下になってしまわれたなと……」
「え……?」
半分以下? 半分以下になってこの量なの? 元はこの倍以上あったの? どんだけ服を持っているんだ!
「ジゼル様もご存じだとは思いますが、服や布は贈り物にも使うような高価なものです。おそらく、動けなくなってしまった腐蝕銀鎖のファミリーの食事代などを工面するために売ってしまったのでしょう。仕方のないことなのかもしれませんが、ご家族との思い出のある服を売らなければならなかったオーレリア様のお心を思いますと……」
そう言って言葉を詰まらせるカンナ。
でも、これでかなり情報を得た気がする。
どうやら、ニンゲンたちにとっても布は貴重品らしい。そして、高価だ。
そんな高価な布を惜しげもなく使った服を大量に持っている。在りし日の腐蝕銀鎖の栄光の日々が窺える気がした。
というか、僕はこんなに大量の服を貰ってしまっていいのだろうか?
これは絶対に何かお返しが必要だろう。
どうしようかな……。
僕にできることなんて、治癒魔法しかない。でも、腐蝕銀鎖の怪我人はもうすべて治してしまったところだ。
「うぅーむ……」
「すみません、こんなお話。さあどうぞ、ジゼル様。本日のお召し物を選びましょう」
「あ、うん……」
「ジゼル様は何か好きな色はございますか?」
「色? 色かぁ……」
色に対して、好きとか嫌いとか考えたことなかったなぁ。
ニンゲンって誰でも好きな色とか決まってるものなのかな?
じゃあ、この質問には答えないといけないかな。
好きな色……。好きな色……。
「黄色、とか?」
僕のスライムボディーは輝くような黄色だった。好きな色とは違うかもしれないけど、なんとなく親近感がある。
「黄色ですと、このあたりでしょうか……。ジゼル様、これはどうでしょう?」
カンナが見せてきたのは、箱の中に入っているクリーム色の服だった。
どうでしょうと訊かれても、僕にはニンゲンの服に対するセンスなんてわからない。
だから、ここは全部カンナのセンスに任せてしまおう。
「カンナ、カンナに全部任せるよ」
「よろしいのですか⁉」
「うん」
「ご信任いただき、ありがとうございます! がんばります!」
なぜかやる気満々のカンナ。
まぁ、僕もカンナのセンスからニンゲンの常識みたいなものを学んでいこう。
◇
私、オーレリアは、腐蝕銀鎖の主要なメンバーと、地擦りと破砕が集まっている部屋へとやってきていた。
「待たせたわね。それでは、始めてちょうだい」
「かしこまりました」
司会進行をするのは、家令である爺、セバスチャンだ。
「まずはジャック様からご報告があります」
「あー、報告ってえのは、あれのことかあ? 宴会を覗いてる奴らがいたからよお。始末しておいたんだわ。腐蝕銀鎖の復活は、まだ秘密の方がいいだろお? でよ、そいつらが持っていたのが、これだわなあ」
ジャックがテーブルに転がしたのは、三つのペンダントでした、ペンダントトップには、心臓を上から貫く獅子の剣のモチーフ。獅子心臓のモチーフです。
「つまり、獅子心臓が見張っていたと?」
「こいつを見る限り、そうなるなあ。とはいえ、偽造もできなくはねえ。本当に獅子心臓かはわかんねえなあ」
爺の問いかけに、ジャックが答えます。
まさか宴会を偵察していた者たちがいるだなんて……。獅子心臓の可能性が高そうですが、それも定かではない……。厄介ですね。
できれば、復活を悟られないうちに、他の組織に一撃入れたかったのですが……。急がねばならないでしょう。
しかし、地擦りのジャック。優秀な弓使いと聞いていましたが、その噂は本物のようですね。
「襲撃は急いだほうがよさそうですわね」
「その方がいいだろうなあ。どこの誰かはわかんねえが、準備できねえうちに叩くに限るってもんだあ」
「襲撃するのは決定事項なのかな? 情報を集めてからでもよさそうだけど……」
自信なさそうに破砕のバーグが慎重論を言い始めました。
「破砕の、いや、バーグ。こちらが情報収集するということは、相手にも情報収集する時間を与えるということだ。今回は、腐蝕銀鎖の復活という情報は悟らせずに、先手を取った方が強いだろう。不意打ちにはもってこいの状況だ」
バーグの言葉を否定したのは、フェイディでした。フェイディの言葉に、頷く腐蝕銀鎖の幹部の姿も見えます。
彼らは、腐蝕銀鎖の栄光を知る者たち。そして、襲撃事件の後も、成人もしていなかった私を総長として集まり、腐蝕銀鎖を守り抜いた者たちです。
そんな長い雌伏の時間を味わった彼らは、一刻も早く先代の総長であるお父様の無念を晴らしたいのでしょう。
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