表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スラムの聖女だけど、擬態したスライムってバレたら討伐されるよね?  作者: くーねるでぶる(戒め)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/22

019 ジャック②

「さて……」

「おい、ジャック! どこ行くんだ?」

「しょんべんだよお」


 俺、ジャックはふらっと立ち上がり、宴会場になっている広場に背を向ける。


 ジゼルは無事にオーレリアの好意を獲得、いや、ここにいる全員の好意を獲得することに成功した。こうなっちまえば、あとはよほどのヘマをしなけりゃ干されることもねえだろう。


「あれ、ジャック? どこ行くんだい?」

「ちょっとしょんべんだ」


 そう答えると、バーグも立ち上がって俺に耳打ちしてくる。


「わざわざ武器を持って?」

「チッ」


 相変わらず目ざとい奴だなあ。


 まあ、だから相棒と認めた男なんだが。


「ちょいと目障りなのが来ててなあ。わかるか?」

「おいらにはちょっとわからないんだなあ。相変わらず、目がいいね」

「そうじゃなきゃあよ、弓使いなんぞできねえよおなあ?」


 そう言って、俺は左手に持った大弓を構える。


 右手に持った矢は三本。獲物も三人だ。


 どこの組織の諜報かは知らねえが、腐蝕銀鎖の復活はもう少し伏せておきてえからな。


 矢を番え、弓の弦を引き、放つ。その動作を一気に三度。


「終わったぜえ。あとは、どこの奴らか調べるか」

「お見事だね。まったく、ジャックだけは敵に回したくないよ」

「そいつあ俺も同じだよお。バーグだけにゃあ、近距離から勝てるビジョンが見えねえ」


 まあ、結局、それが俺たちの組むようになったきっかけだからなあ。


 それまでは、用心棒としてカチ当たることもあったが、お互い争うのが不毛だと察して、俺から話を持ち掛けた。バーグも同じことを感じていたのか、俺たちは組むことになった。


 かれこれ、もう十年は前の話だなあ。


「あん時は、お互い殺気立ってたもんだがあ、歳を取ると丸くなるってのはマジだったなあ?」

「あの時のジャックは、まるで世の中すべてを恨んでいるようだったよね?」

「よせやい」


 なんだか照れ臭くなって、俺はバーグから顔を逸らした。


 しばらく歩くと、道の上に大の字に転がった招かねざる客の姿が見えてくる。


「額に一発……。相変わらず、すごいね」

「これぐらいはできねえとなあ。さて……」


 俺はしゃがもうとして気が付いた。そうか、もう右足を庇わなくてもいいのか。ジゼルに感謝だな。


 改めてしゃがむと、客の所持品を漁っていく。こいつがどこの命令で腐蝕銀鎖を見張っていたのか。そいつを知るためだ。


 そうすると、出てきたのは首に下げているペンダント。心臓を上から剣で貫いたモチーフのものだ。


「おい見ろ、バーグ」

「これって――――」

「こいつあ、ちと厄介なことになったかもなあ……」


 このペンダントトップは、現在この南スラムで一番の勢力を誇っている獅子心臓のものだ。


「他のも調べてみっかあ」


 その結果、仕留めた三人とも獅子心臓のペンダントをしてやがった。


 数年前、腐蝕銀鎖が崩壊し、一番勢力を伸ばしたのが獅子心臓だった。つまり、一番おいしいところを持って行ったのが獅子心臓だ。奴らは、そのことで腐蝕銀鎖の復活を、そして腐蝕銀鎖の報復を一番恐れているのかもしれねえ。


 それで、三人の密偵だ。


 正直、腐蝕銀鎖には獅子心臓に報復できるような余裕はなかった。傷付いた腐蝕銀鎖の構成員を見捨てられず、ジリ貧になっていやがった。そんなところに、普通、密偵を三人も送るか?


 もしかしたら、この密偵の狙いは、腐蝕銀鎖ではなく――――ジゼルか?


 ジゼルの存在は、いきなりスラムに現れたように不自然だ。その恰好、存在、力、すべてがアベコベだ。


 これに嚙んでいるのが獅子心臓という線もあるか?


「情報が、足りねえなあ……」

「ジャック?」

「情報がまるで足りねえ。ジゼルってのは何者なんだあ?」


 呟く俺に向かって、バーグがいい笑顔を浮かべて口を開いた。


「ジャックの恩人で、娘、だろ?」

「誰がパパだよお!」

「あんまり年頃の娘の詮索はよくないんじゃないかな?」

「ったく。おめえなあ……」

「あんまり詮索しすぎるのもダメでしょ?」


 まあ、調べたってわからねえし、このスラムには触れちゃいけないものがごろごろ転がってやがる。そういう意味では、バーグの方が正しい。


「わあったよお。ったく……」

「それで、この死体はどうするの?」

「俺たちはもう腐蝕銀鎖だからなあ。先輩方に死体処理の仕方くらい教えてもらうかあ」

「そうだったね」


 勝手に殺したことは怒られるかあ?


 まあ、なんとかなんだろ。


 そう思ってふらりと宴会を開いている広場に戻ったら、ジゼルはオーレリアの膝の上に乗っけられて後ろから抱っこされていた。


 オーレリアはジゼルに頬擦りしたりしているが、ジゼルは我関せずという無表情でパクパク食事を楽しんでいやがる。


 まったく、マイペースだねえ。


「お? やっと戻ってきた。えらく長かったな?」


 声をかけてきたのは、俺と同年代くらいのおっさんだった。


「ちょいと野暮用ができてなあ……」


 こいつなら、腐蝕銀鎖も長いだろうし、腐蝕銀鎖の流儀もわかってるだろう。


 俺は死体の処理をどうすればいいのか訊くために口を開いた。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ