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スラムの聖女だけど、擬態したスライムってバレたら討伐されるよね?  作者: くーねるでぶる(戒め)


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018 我慢できなくなったオーレリア

「いい、ジゼル? ここはね、こうすると上手く骨からお肉が取れるのよ」


 そう言って、オーレリアが自分の前に置かれたお皿の上で上手に骨からお肉だけを外していく。


 なんだか、宴会が始まってからオーレリアが甲斐甲斐しく僕のお世話を焼いてくれていた。たまに僕の手を取って、ナイフとフォークの上手な使い方を教えてくれるくらいだ。


 たぶん、僕のナイフとフォークの扱いが下手だったからだろう。


 周りを見れば、食事を手掴みで食べてるニンゲンもいるし、さすがにこれだけでは、僕がスライムとはわからないだろうけど、ちょっと緊張が走る一瞬だ。


「なるほど……」


 僕はオーレリアの真似をしてナイフとフォークを操る。オーレリアのものと比べると少し不格好だけど、わりかし上手く骨を外すことができた。


 まぁ、僕はスライムだから骨ごと食べれるんだけど、ニンゲンは骨を食べないらしい。一気食いしなくて本当によかった。


 気になっていたお肉の味だけど、スパイスで味付けされているのか、複雑な味と肉汁、脂が三位一体となって襲ってきた。


 つまり、何が言いたいのかというと――――。


「おいしい……!」


 これが料理か。ハッテンバロー大要塞では骨や皮、残飯なんかを食べていた僕は、初めてまともな料理を食べたよ。


 まともな料理ってこんなにおいしいんだ。すごいな、ニンゲン。この料理という発明をしただけでもニンゲンは素晴らしいよ。こんなにおいしい料理を毎日食べられるなら、できれば僕もニンゲンに生まれたかったな。


「お口にあったようでよかったわ」


 気が付くと、びっくりするくらい近くにオーレリアの笑顔があった。思わず仰け反ってしまいそうになる。


「爺! お肉のおかわりを持ってきて! あとワインも!」

「かしこまりました」


 僕が気に入ったのがわかったのか、オーレリアが爺に追加注文をする。


 注文されちゃったら食べるしかないよね!


 お肉を消化した後、ワインを口に流し込む。お肉の脂で汚れた口がさっぱりするね。食べ合わせもいい感じだ。


 この食べ合わせという言葉もオーレリアに教えてもらったものだ。一緒に食べると相乗効果で単体で食べるよりもさらにおいしくなるらしい。


 逆に食べ合わせが悪いというのもあるらしい。勉強になるね。


「ねえ、ジゼル。私、もう我慢できないの……」


 オーレリアが急に変なことを言い始めた。その一つだけ見える黒い瞳を潤ませて、軽く唇を開いた顔で僕に顔を寄せるオーレリア。


「どうしたの急に?」


 トイレかな?


 ニンゲンや魔族は、一定時間おきにトイレに行くことが確認している。


 何をしているのかは謎だ。


 僕もニンゲンに擬態するなら、一定時間でトイレに行った方がいいだろうな。


 たぶん、オーレリアはこれからトイレに行くのだろう。僕に断らずに行ってくればいいのに。


 そんなことを考えていたら、急にオーレリアに抱きつかれた。僕の顔が、オーレリアの豊かな胸に沈んでいく。


 これ、下手したらニンゲンは呼吸できない状態ではないだろうか?


 口は封じられてしまったので、なんとか目を使って放してくれないかとオーレリアとアイコンタクトを試みる。


「ごめんなさい。我慢できなくなってしまって、つい……。でも、覚えておいて。私は、そして腐蝕銀鎖のみんなは、ジゼルの味方よ。ジゼルに何があっても必ず助け出すわ。だから、ジゼルはもっと私たちを頼っていいのよ?」


 うん。アイコンタクトは伝わらなかったね。


 よく見ると、僕を見下ろすオーレリアの頬や耳が赤くなっているような気がした。


 もしかして、オーレリアってお酒に弱かったりするのだろうか?


 魔族の中にはお酒を飲むとタガが外れて、信じられないことをする酒乱という個体もいた。僕にできるのは、オーレリアがそうじゃないことを願うばかりだ。


 またギュッと強くオーレリアが僕を抱きしめ直す。


 まさかオーレリアは、僕を締め落とそうとしている……?


 スライムである僕には効果がないけど、普通の女の子だったら、もう窒息して意識を失っているんじゃないだろうか?


 助けを求めようとキョロキョロ周りを見るけど、みんな微笑ましそうに僕たちを見ているだけだった。


 その時、僕は笑みを浮かべている爺と目が合った。


 今こそ輝け、僕のアイコンタクト能力!


 ここで爺に助けを求めるんだ!


 僕は真剣な瞳で爺を見つめる。しかし、爺から返ってきたのは深い笑みだった。


 うん。どうやら僕にはアイコンタクト能力はないみたいだね。残念でならないよ。


「腐蝕銀鎖はジゼルの家族、ファミリーです。いつでも助けを求めてきなさい。みんな、ジゼルに応えてくれるでしょう。だから、だからもうジゼルは悲しい思いをしなくてもいいのです。私が、私たちがジゼルを守りますわ! この誓いを、私たちは違えません!」

「そうだ!」

「総長の言う通りだ!」

「恩人には恩を返さねえとな! スジってものが通らねえよ」


 あの、なら今、オーレリアから解放してくれない?

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