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スラムの聖女だけど、擬態したスライムってバレたら討伐されるよね?  作者: くーねるでぶる(戒め)


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013 救われた命

「爺……!」


 老いたニンゲンの言葉に心を動かされたのか、オーレリアが今にも泣いてしまいそうな声で言った。


 この爺と呼ばれているニンゲンは、それだけオーレリアにとって身近なニンゲンなのかもしれない。


「みんな! 怪我は治ったかしら?」

「オーレリア様? いったい何が起こったのでしょうか……?」

「お嬢だ! お嬢の姿を見たら、怪我なんて吹き飛びましたぜ!」

「間違いねえ! お嬢だ!」

「怪我なんて治りやした!」

「これでまた腐蝕銀鎖のために働けるってもんだ!」


 オーレリアが問いかけると、ニンゲンたちの元気な声が返ってくる。


「実は、みんなの怪我を治癒魔法で治したのは、この子なのです! さあ、ジゼル。みんなにお顔を見せてあげて」

「うん」


 僕がオーレリアの隣に立つと、無数の視線にさらされる。でも、そのどれもが好意的な視線だった。


「こんな小さい子どもが? ありがとな! 助かったぜ!」

「かわいい子だね。ありがとよ!」

「小さいのにすごいんだな! あんたのおかげで助かった!」

「ありがとう! ありがとう……!」


 ジャックの怪我を治した時にもお礼を言われたし、フェイディの怪我を治した時もお礼を言われた。


 そして、今は部屋にいた全員が口々にお礼を口にしている。


 ニンゲンは、魔族とは違って、ちゃんと感謝を伝えることができる生き物らしい。


 そのことで、なんだか僕は温かい気持ちになった。


 この気持ちは何だろう?


 ものすごく心地よくて、それでいて、ふわふわな気持ちになる。


 ひょっとして、これがずっと僕が求め続けていたものなのだろうか?


「ジゼル、魔力は大丈夫なの? フェイディも治してるし、ここにいるみんなを治してしまうなんて。私は嬉しいし、ジゼルに感謝しているけど、ジゼルに倒れられたら悲しんでしまうわ」

「大丈夫だよ。僕は大丈夫だから、早く次に行こう」

「ジゼルが大丈夫ならいいのだけど……」


 僕は何かに急かされるように、また早く温かな気持ちを感じたくて、オーレリアの背中を押して次の部屋へと向かう。


 オーレリアに案内されたのは、やっぱり怪我人がぎゅうぎゅうに詰められた部屋だった。


 どうやらこの家自体、比較的重傷の者が集められているのかもしれない。


「治すよ」


 僕はどんどんみんなの怪我を治していく。


 すると、みんなが驚き、僕にお礼を言ってくれる。そして、僕は温かい気持ちになる。


 スライムには寿命というものがない。


 だから、僕はこの世界に生まれてから、ほとんどといってもいいくらい長い間ハッテンバロー大要塞で酷使されてきた。


 でも、こんなに心が温かくなったことが今までにあっただろうか?


 僕はそれが嬉しくて、どんどん怪我をしたニンゲンを治療していく。


 最後の方なんて、怪我をしたニンゲンをわざわざ探して治療していたくらいだ。


 僕の治癒魔法で怪我が治ったニンゲンは、みんないいニンゲンだった。


 だって、僕なんかにお礼を言ってくれるんだ。絶対にいいニンゲンだな。


 その時、ほんのちょっとだけど思ったんだ。このニンゲンたちが死んでしまうのは嫌だなと。


 今まで、僕は魔族の治療をしてきたけど、それは僕に与えられた役割を果たしてきただけで、患者に対して特別な感情なんてものはなかった。


 死んだらそれまで。怪我を負っても生きて帰ってきたなら、また治療するだけだ。それはただのルーティンのようなものであり、そこに感情を挟む余地はない。


 でも、ニンゲンたちは違った。


 今まで治癒魔法の効果を知らなかったということを考えても、純粋に僕を褒めて、お礼まで言ってくれる。


 そんな純粋な好意を向けてくるニンゲンたち。


 僕はそんなニンゲンたちに対して、患者に対して初めて感情を持った。


 死んでほしくない。


 患者の生存を祈る。治癒魔法使いにとって当たり前かもしれない感情を、僕はニンゲンから教わったのだ。



 ◇



 私、オーレリアは、怪我がすっかり治ったフェイディを伴って、地擦りと破砕のもとにそっと行きました。


 もちろん、彼らへの要件はジゼルに関してです。


「地擦りと破砕のお二人は、ジゼルのことをどれだけ知っているのですか? このジゼルの魔力は、治癒魔法に疎い私にも異常に見えるのですが……?」


 私が問いかけると、地擦りと破砕はお互いの顔を見合ってから、地擦りの方が答えます。


「いやあな? これに関しちゃあ、俺たちも知らなかったんだ。ジゼルに会ったのも今日の早朝だし、もっと言えば、ジゼルに関して知ってることは、あんたらとそんなに変わらねえ。最初会った時、妙に警戒心がなかったし、このスラムのことを知らなかったからなあ」

「そうだね。それでいて壁の中に入るのを薄っすら拒否してたし……。もしかすると、壁の中から逃げてきたのかも?」

「そう……」


 何か、大きな問題を抱えているのかしら?


 彼女には、フェイディをはじめ、腐蝕銀鎖のファミリーのみんなを救ってくれた恩があります。


 私も、あのままでいいのか、生かしているのは彼らを無駄に苦しめているだけではないのか、いっそのこと……。そう思ったこともあります。


 ですが、少しでも助かる命があればいいと、痛みが和らげばいいと願っていましたが、まさかジゼルが全員を一人も残さず救ってくれるだなんて!


 私はこの恩にどうやって報いればいいのでしょうか?

お読みいただき、ありがとうございます!

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