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本に結ばれた人~知識と生存の本〜(ネギを握りしめて異世界に落ちた私の、のんびりサバイバル)  作者: 式文紫
第2章 秋麗~命のぬくもりを紡いで~

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第41話 煙がめにしみる

第41話 煙がめにしみる


 屋根が完成してから、紬は少しだけ安心していた。


 これで雨が降っても、今までのように空を見上げながら過ごさなくていい。


 冬が来ても、少しは暖かく過ごせるだろう。


「よし……今日は簡単にご飯にしようかな」


 紬はいつものように火を起こした。


 薪を組み、火をつける。


 ぱちぱちと小さな音を立てながら、火が燃え始める。


「うん、いい感じ」


 ところが。


 しばらくすると――


「……ん?」


 紬は顔を上げた。


 なんだか、煙が多い。


「……あれ?」


 煙は上へ昇っていく。


 けれど、行き場を失ったように屋根の下に溜まり始めた。


「ちょ、ちょっと待って……」


 目が痛い。


「ゲホッ……ゲホッ!」


 紬は口元を押さえた。


 その横では、ルーチェがすでに出口へ向かっている。


「ちょっと、ルーチェ!」


「ギョ!」


 返事だけ残して、ルーチェは外へ逃げていった。


「逃げるの早っ!」


 紬も慌てて外へ出る。


 扉を開け放つと、溜まっていた煙がゆっくり外へ流れていった。


「……はぁ」


 外の新鮮な空気を吸い込む。


 そして紬は、屋根を見上げた。


「そうか……煙の出口がないんだ」


 屋根がなかった時は、煙はそのまま空へ逃げていた。


 でも今は違う。


 屋根がある。


 当たり前だけど、煙の逃げ道も必要だった。


「うーん……」


 紬はしばらく考えた。


 そして、ふと思い出す。


「……茅葺き屋根って、上の方から煙を逃がしてたよね」


 昔見た写真や映像を思い出す。


 煙は上へ昇る。


 なら、屋根の一番高いところに出口を作ればいい。


「だったら……」


 紬は屋根へ登った。


 ブルーバンブーを重ねて作った屋根。


 釘などで完全に固定しているわけではない。


 それなら――


「ここを少しずらして……」


 火を使う場所の、ちょうど真上。


 紬は重ねたブルーバンブーを少しずつずらしていく。


 一本。


 また一本。


 少しずつ隙間ができていく。


「このくらいかな?」


 手のひらを二つ並べたくらいの大きさ。


 大きすぎず、小さすぎず。


「よし」


 次は、この隙間から雨が入りすぎないようにする。


 紬は木とブルーバンブーを使って、小さな屋根を作った。


 片側だけを屋根に固定する。


 反対側は少し浮かせておく。


「これなら……」


 長い棒を持ってきて、下から小屋根を押してみる。


 ぐっ。


 小屋根が持ち上がった。


「おお……!」


 今度は棒を引く。


 ぱたん。


 小屋根が閉じる。


「できた!」


 紬は嬉しそうに笑った。


 火を使う時は開ける。


 寒い時や、雨の時は閉じる。


 長い棒は壁に立て掛けておけばいい。


「これならいちいち屋根に登らなくてもいいし」


 紬は満足そうに頷いた。


 さっそく、もう一度火を起こす。


 煙が上へ昇っていく。


 そして――


 すうっと、屋根の隙間から外へ抜けていった。


「……おお」


 紬はしばらく煙を眺める。


「ちゃんと出てる」


 今度は煙で苦しくならない。


「成功!」


 小さく拳を握った。


 外へ出た煙は、風に乗ってふわふわと流れていく。


 そして、その先には。


 最近ずいぶん増えてきたネギが並んでいた。


 煙がネギの間を通る。


 すると――


 なんとなく、煙が薄くなっていく。


「……?」


 紬は首を傾げた。


「風かな?」


 特に気にすることなく、紬は中へ戻った。


 今はまだ、それでいい。


 昼食を済ませたあと。


 紬は寝室へ向かった。


「さて……」


 部屋の床を見る。


 石畳。


 夏の間は気にならなかった。


 でも、冬になれば――


「絶対、冷たいよね……」


 裸足で歩くことを考えただけで、少し寒くなった。


「寝室だけでも、なんとかしよう」


 紬は今まで使っていた簡易的な木のベッドを片付けた。


 そして、石畳の上を掃除する。


 集めてきた枯葉を、床へ敷いていく。


「これで少しは断熱になるはず」


 枯葉を均して、その上に細く割ったブルーバンブーを並べる。


 一本ずつ。


 隙間を見ながら、丁寧に。


「……うん」


 足を置いてみる。


 石畳に直接触れた時とは、明らかに違う。


「冷たくない!」


 紬は嬉しくなった。


 これなら冬でも裸足で歩けそうだ。


「よし、次は……」


 新しいベッドを作る。


 土台にもブルーバンブーを使い、寝る場所にも細く割った竹を並べていく。


 まっすぐ。


 無理に曲げたりはしない。


 竹はしなる。


 だから、あまり無理に曲げたら折れてしまうかもしれない。


 できるだけ自然な形のまま、並べていく。


「こんな感じかな」


 完成したところで、紬は恐る恐る腰を下ろした。


 すると――


 ふわっ。


「……お?」


 竹が体重で少し沈んだ。


 一本一本がわずかにしなって、身体を受け止めてくれる。


「これ……」


 紬はもう少し体重をかけてみる。


 ぎしっ。


 けれど、折れるような感じはない。


「スプリングみたい」


 マットレスなんてない。


 それでも、以前の木のベッドよりずっと身体に優しい。


 紬はそのまま、ごろんと横になった。


「……悪くない」


 天井を見上げる。


 ちゃんと屋根がある。


 床も少し暖かくなった。


 煙も逃げるようになった。


「……これ、どのくらい持つんだろう」


 ふと、屋根のことを考える。


 雨。


 風。


 そして、これから来る冬。


「まあ……」


 紬は少し考えてから、小さく笑った。


「今年の冬くらいは、越えられるでしょ」


 この世界に来て、まだそんなに経っていない。


 それなのに。


 水を探して。


 食べ物を探して。


 火を起こして。


 畑を作って。


 道具を作って。


 そして今では、自分で屋根まで作った。


「……私、結構頑張ってるな」


 ぽつりと呟く。


 少しだけ、胸を張りたくなった。


「よし」


 紬は起き上がる。


「明日は何しようかな」


 まだまだ足りないものはたくさんある。


 でも――


 少しずつでいい。


 ここで暮らしていくために。


 今日もまた、一つ。


 自分の居場所ができた。


さいごまでお読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や☆で評価して下さると執筆の励みになります。

ほんとにあると嬉しいです!

どうぞこれからも紬の物語を楽しんでください!


よろしくお願いします!



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