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本に結ばれた人~知識と生存の本〜(ネギを握りしめて異世界に落ちた私の、のんびりサバイバル)  作者: 式文紫
第1章 夏の果て~本と光の友~

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第19話 光を選んだ鳥

第19話 光を選んだ鳥


 朝。


「――ギョエェェェェッ!!」


「うわっ!」


 紬は飛び起きた。


 薄暗かった寝室に、朝の光が差し込んでいる。


 目の前には、いつもの虹色鳥。


 どうやら今日も、日の出を少し過ぎた頃に起こしに来たらしい。


「ギョエッ!」


「はいはい。起きますよ……」


 紬が身体を起こすと、虹色鳥は満足そうに羽を揺らした。


 そして、いつものように少し離れた場所へ飛んでいく。


 紬は小さくため息をついた。


 けれど、その姿を見ていると、自然と笑みがこぼれた。


「……そうだ」


 紬は思い出した。


 昨日、名前をつけようとしたんだ


「朝ご飯を食べながら、考えようか」


 虹色鳥が振り返る。


「ギョ?」


「あなたの名前」


 そう言うと、虹色鳥は嬉しそうに羽を広げた。


         *


 紬は簡単な朝食を用意した。


 自分の分と、虹色鳥の分。


 並んで朝ご飯を食べながら、紬は虹色鳥を眺め


「私の名前は、森川紬だよ、つむぎ」


伝えていなかった自分の名前を伝える


「ギョー?」


自分を指さしつむぎ、と何度か伝える


それから、虹色鳥を見る


「君の名前を、考えるね!」


 しばらく考える。


「虹色だから……虹に関係する名前もいいよね」


 紬は本を開いた。


 虹色鳥に手を触れる。


 本が淡く光った。


【名称】未設定

【種族】アルカンシエル(虹色の鳥)

【属性】光

【性別】雌

【状態】良好

【関係】友達


「……女の子だったんだ」


 紬は少し驚いた。


 そして、もう一度表示を見る。


「……友達」


 その言葉を、小さく呟く。


 なんとなく胸の奥が温かくなる。


「そっか」


 紬は虹色鳥を見る。


「私たち、友達なんだね」


「グェッ」


 返事をするように、虹色鳥が鳴いた。


「じゃあ、ちゃんと名前を考えないとね」


 紬は少し考えてから、いくつかの名前を口にしてみる。


「ムンタ……元気っていう意味」


「グェ?」


「ルーチェ……光っていう意味」


「……」


 虹色鳥が首を傾げる。


 紬はもう一つ名前を考えようとした。


 けれど、なかなか思いつかない。


「うーん……」


 その時だった。


「ルーチェ」


 虹色鳥の羽が、ぱっと広がった。


「……あれ?」


「ギョッ!」


 嬉しそうに鳴く。


 紬は目を丸くした。


「ルーチェがいいの?」


「ギョッ!」


「そっか」


 紬は笑った。


「じゃあ……あなたの名前は、ルーチェ」


 もう一度、本に触れる。


【名称】ルーチェ

【種族】アルカンシエル(虹色の鳥)

【属性】光

【性別】雌

【状態】良好

【関係】友達


「……ルーチェ」


 名前を呼ぶ。


「ギョーッ!」


 ルーチェが嬉しそうに鳴いた。


「ふふ……よろしくね、ルーチェ」


         *


 朝ご飯を食べ終えると、紬は立ち上がった。


「ねえ、ルーチェ」


「ギョ?」


「昨日の場所……もう一度、見に行ってみない?」


 ルーチェが羽を広げる。


 紬は小さく笑った。


「やっぱり気になるよね」


 二人は森の中へ歩き出した。


         *


 しばらく歩くと、昨日の青い花畑が見えてきた。


 けれど――


 紬は足を止めた。


 昨日は、一面に青い花が咲いていた。


 夕日の中で輝き、夜空へ青い光を放っていた。


 けれど今は。


 花畑には、ほとんど花が残っていない。


「……なくなってる」


 紬はしゃがみ込み、地面を見る。


 花が咲いていた跡はある。


 けれど、あれだけ咲いていた青い花は消えていた。


「昨日の光と関係あるのかな……」


 紬は周囲を探す。


 すると――


「あ……」


 一輪だけ。


 少し離れた場所に、青い花が咲いていた。


「まだ残ってた」


 紬はそっと近づく。


 そして花に触れた。


 本が淡く光る。


【名称】不明

【分類】植物

【状態】良好

【属性】光

【魔素】放出済み・なし

【食用】不明

【薬効】不明


「……魔素、ないんだ」


 紬は昨日の光景を思い出す。


「昨日、あんなに光ってたから……全部使ったのかな」


 もちろん答えは返ってこない。


 紬はしばらく花を見つめる。


 そして、そっと花を摘み取った。


「これは……持って帰ろう」


 紬は本を開く。


 そして青い花を、そっとページの間に挟んだ。


「栞にしよう」


 本を閉じる。


 ページの隙間から、青い花の先が少しだけ覗いている。


「昨日のこと、忘れないように」


         *


「……あれ?」


 紬が立ち上がる。


 ルーチェの姿が見えない。


「ルーチェ?」


 少し離れた木の枝に、虹色の羽が見えた。


「あそこにいたの?」


 ルーチェが何かをくわえている。


 そして紬のところまで飛んでくる。


「ギョッ」


 ぽとり。


 足元に、小さな青いものが落ちた。


「……?」


 紬はしゃがみ込み、それを拾い上げる。


「なに、これ……」


 小さな青いもの。


 けれど、普通の石とは違う。


 表面は滑らかで、まるで宝石のように透き通っている。


 陽の光を受けると、淡い青色が中から輝いているように見えた。


「……綺麗」


 紬は手のひらに乗せて眺める。


 そして本を開き、触れてみる。


【名称】不明

【分類】不明

【状態】良好

【属性】光


「……分からない」


 種なのか。


 石なのか。


 それすら、本には表示されない。


 紬は首を傾げた。


「これ……ルーチェが持ってきたの?」


「ギョッ」


「私に?」


「ギョッ!」


 ルーチェが嬉しそうに羽を揺らす。


 紬は青いものを見つめた。


「……プレゼント?」


「ギョ!」


 今度は、はっきりとした鳴き声。


 紬は思わず笑った。


「そっか」


 小さな青い宝石のようなものを、大切に握る。


「ありがとう、ルーチェ」


 ルーチェが紬の肩へ飛び乗った。


 羽が頬に触れる。


「大切にするね」


         *


 帰り道。


 紬の本には、一輪の青い花。


 そして手の中には、ルーチェからもらった青いもの。


 どちらも何なのかは、まだ分からない。


 けれど――


 それでよかった。


「帰ろうか、ルーチェ」


「ギョ」


 二人は並んで歩く。


 木々の間から差し込む光が、ゆっくりと地面を移動していた。


 昨日までとは、少し違う森。


 昨日までとは、少し違う自分。


 そして――


 昨日までとは、少し違う二人。


 紬は肩に乗ったルーチェをちらりと見る。


「……友達、か」


 小さく笑う。


「悪くないね」


 二人はゆっくりと、家へ帰っていった。


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