閑話 物語を生み出す星
閑話 物語を生み出す星
人の一生は、短い。
けれど、その短い時間の中で、人は笑い、泣き、迷い、時にはがむしゃらに生きる。
同じ人生を歩む者はいない。
穏やかな日々を重ねる者もいれば、幾度も壁にぶつかり、それでも前へ進もうとする者もいる。
人の数だけ、人生がある。
そして――
人の数だけ、物語がある。
*
人は、生まれた瞬間から一枚のページを開く。
最初は、何も書かれていない。
けれど、一日が過ぎるたびに、少しずつ文字が増えていく。
誰かと出会う。
誰かと別れる。
笑う。
泣く。
失敗する。
立ち上がる。
何気なく過ごした一日でさえ、その人のページの一枚になる。
時には、間違った文字を書いてしまうこともある。
消してしまいたいと思うページもある。
それでも、人は次のページを開く。
そして、また一文字を書く。
最後に目を閉じる、その時まで。
人生という本に、少しずつ自分だけの物語を綴っていく。
*
不思議なことに、人は自分の物語だけではなく、存在しない物語まで生み出す。
こんな場所があったらいい。
こんな世界があったらいい。
こんな未来になればいい。
空を飛べたら。
魔法が使えたら。
誰も知らない場所へ行けたら。
そんな小さな願いから、大きな夢まで。
人は、まだ存在しないものを想像する。
そして、その想像は言葉になる。
絵になる。
歌になる。
誰かに語られる物語になる。
やがて、それは一冊の本になることもある。
人は、物語を読むだけの存在ではない。
物語を生み出す存在でもある。
*
この星は、不思議な星だ。
数え切れないほどの人が生まれ、
それぞれが夢を持ち、
願いを抱き、
まだ見たことのないものを想像する。
一人が一つの物語を生み出すなら、
この星には、いったい幾つの物語が存在するのだろう。
そして、その物語の一つ一つが、また新しい物語を生み出していく。
終わりはない。
物語は、常に生まれ続ける。
誰かの夢が、誰かの想像を刺激する。
誰かの願いが、また別の誰かの物語になる。
そうして物語は広がっていく。
まるで、枝を伸ばす木のように。
一つの物語から、また一つ。
その先に、さらに一つ。
幾つもの物語が枝分かれし、
やがて――
数えることさえできないほどの世界を描いていく。
*
もしかすると、
物語とは、ただの想像ではないのかもしれない。
誰かが思い描いた世界が、
どこかに存在しないと言い切れるだろうか。
誰かが夢見た場所が、
どこにもないと言い切れるだろうか。
誰にも見つけられていないだけで、
どこか遠くに、その世界があるのかもしれない。
あるいは――
物語そのものが、世界を生み出しているのかもしれない。
*
この星は、今日も物語を生み出している。
誰かが笑い、
誰かが泣き、
誰かが夢を見る。
誰かが願い、
誰かが想像し、
誰かが新しい物語を書く。
その一つ一つが、
まだ見ぬページを生み出していく。
人の人生も。
夢も。
願いも。
想像も。
そして、世界さえも。
もしかしたら、すべては一冊の本のようなものなのかもしれない。
生まれた瞬間に最初のページが開き、
生きるたびにページが増えていく。
そして最後のページを閉じる、その時まで。
物語は続いていく。
――だから、この星には終わりがない。
今日もどこかで、新しいページが開く。
誰かが、最初の一文字を書く。
そしてまた一つ。
新しい物語が、生まれる。
**物語を生み出す者がいる限り。**
**物語は、決してなくならない。**
星物語
著者
本結び人【星の本】 空川 星雪




