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本に結ばれた人~知識と生存の本〜(ネギを握りしめて異世界に落ちた私の、のんびりサバイバル)  作者: 式文紫
第1章 夏の果て~本と光の友~

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第10話 雨音の聞こえる家

第10話 雨音の聞こえる家


 大木の上での睡眠にも慣れた朝


目がふと覚める上の枝でいつも起こしてくる虹色鳥が遠くを眺めている


気になり同じ方向を見る


大木から見る風景は変わらないが遠くの山に黒い雲が見えた。朝で晴れているがここに来て初めての雨が降るかもしれないと


僅かに心に焦りが生まれる


 紬は大木から降りると、根元の湧き水で顔を洗い


 少し飲み


 バッグを開く。


 残っている食料を確認


 にんじん。

 じゃがいも。

 クッキー。

 飴。

 塩。


「今日は……にんじんにしよう」


 にんじんを軽く洗って、端をかじる。


 ぽりっ。


「……甘い」


 ぽり、ぽり。


 生でもちゃんと食べられる。


 食べ終わる前に、にんじんの頭を取っておく。


「これ、あとで畑に置いてみよう」


 ミナハーブを少し食べ、大木の湧水を飲む


 それから石壁へ向かった。


     *


今日はとにかく屋根を作ることに全集中する。


 昨日集めた長い枝を並べる。


 まず、長い枝を縦向きに石壁の上に渡す。


高い所なので石を重ねて慎重に


 一本。

 また一本。乗せていく


 その上から、今度は横向きに枝を渡す。


 縦の枝と交差するように置いていく。


「格子みたいにすれば、葉っぱも乗せやすそう」


 交差した場所をツタで結ぶ。


 きゅっ。


 一本。

 また一本。


 結んでは軽く揺らしてみる。


 ぐらつくところは、もう一度結び直す。


 午前中いっぱいかけて、石壁の上に木の格子ができた。


石壁に登る時用の簡単な足かけ用の棒も用意しておく


「よし。けっこう丈夫そう」


 紬は格子を見上げた。


「これなら葉っぱを乗せられそう」


     *


 昼前。


少し湿気を感じる風が吹く


 屋根に使う葉を探しに行く。


 以前、水を持ち帰るために使った大きな葉を思い出した。


 でも、時間が経っている。


「新しいのを探したほうがよさそう」


 紬は背負いカゴを持った。


「これ、作って本当に良かった、めっちゃ使える」


 大きくて破れていない葉を探す。


 一枚。


 カゴに入れる。


「……もっといる」


 もう一枚。

 さらに一枚。


 カゴがいっぱいになるたびに石壁へ戻る。


石壁に登り


 集めた葉を格子の上に重ねていく。


 一枚だけでは隙間ができる。


 少しずつ重ねる。


 その上から細い枝を置く。


 葉が風で飛ばないように押さえ下の土台の枝とツタで縛り付ける


 必要なところはツタで固定する。


 何度も森と石壁を往復する。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 石壁の上に屋根ができていった。


土台が出来たら


最後の葉を置く。


紬は一歩下がって、出来上がった屋根を眺めた。


「……まあまあ、屋根……だね」


完璧ではない。


葉と葉の間には隙間がある。

ところどころ枝も飛び出している。


それでも――


昨日まで見えていた空は、もう見えない。


紬はしばらく何も言わずに、その屋根を眺めていた。


「……これなら、雨も少しは防げそう」


ほんの少しだけ。


本当に、ほんの少しだけ。


自分の居場所ができた気がした。


ほっと息をついて間に合ったと安心した。


     *


 夕方。


だんだん外が暗くなる雲が出始めている


 紬は畑へ向かった。


 ネギは今日も風に揺れている。


 根元には、小さな芽。


「元気だね」


 そっとネギをなでる


今日は水はいらないかもしれない


 それから、朝に取っておいた人参の頭を取り出した。


「これも試してみようかな」


 ネギの隣


 少し空いている場所に、人参の頭を置く。


 土を少しかぶせる。


 最後に水を少し。


「これで育つかは分からないけど……」


「元気に育ったらいいな」


     *


 夕方を過ぎた頃。


 紬は大木の下へ戻った。


 空を見上げる。


 さっきまで白い雲が広がった空に、黒い雲が広がっている。


湿気を帯びた風が頬をなでる


「……雨、降る……」


 ぽつ。


 頬に一滴。


「あ」


 もう一滴。


 風も少し強くなってきた。


 紬は大木を見上げる。


 いつもなら、ここで枝に登って眠るが


 でも今日は――。


「……ちょっと、厳しいかな」


 紬は石壁のほうを見る。


 今日作ったばかりの屋根。


 まだ完全ではない。

 葉の隙間もある。


 それでも、大木の上よりは雨を防げそうだった。


「……試してみようかな」


 紬は荷物を持って石壁へ向かった。


     *


 石壁の中へ入る。


 上を見上げる。


 雨が葉を叩いている。


 ぽつ、ぽつ。


 ところどころ隙間から水滴が落ちてくる。


 けれど、直接雨に当たることはない。


「……思ったより、いいかも」


 紬は地面の濡れていない場所を探す。


 そこへ大きめの葉を敷いておく


 少し座ってみる。


 雨音が屋根越しに聞こえる。


 ぽつ。

 ぽつ、ぽつ。


 紬は外を眺めた。


 大木の枝の上で眠るより、ずっと安心できそうだった。


「……これなら寝られそう」


 紬はタオルを丸めて頭の下に置き、身体を丸める


 今日作ったばかりの屋根を見上げる。


 葉と枝の隙間から、雨粒がいくつか落ちてくる。


 それでも、雨の勢いはずっと弱い。


「屋根、作ってよかった」


 小さく呟く。


 雨音が、森の中に静かに響いている。


 紬はその音を聞きながら、ゆっくり目を閉じた。


 今日は初めて。


 自分で作った屋根の下で眠る夜だった。


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