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屋根の下の義妹、窓の外のヒロイン。  作者: 仁波昼海
一章:ヒロインな彼女と

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9/10

葉桜凪乃という女性

「まったく、何なんだ一体...」


返されたスマホはまだ少し人の温もりを感じた。

いや人のポケットの温もり。


「う、やば...」


今日は風が強く、今吹いた風は俺のスマホをかっさらって行こうとした。

まだ少し冬の残りを感じるその風に、俺はブレザーをカバンから出して羽織る。


「あったかあぁ」


思わず感銘の声を漏らしていると、8:05を告げるチャイムが耳に響く。

俺は廊下で立ち止まりながら感無量になっている不審者にならないため、その場からすぐに教室へと向かった。


本当に今日は風が強い。感覚が遮断されているような気がした。



「あ、落ちてる...」


教室に向かう途中、掲示板のポスターが落ちてるのを見つける。多分、この風のせいだ。


別に誰がためにすることではないが、こういうのはなんとなく見かけたらやっておかないとモヤモヤが残るので、とりあえず駆け寄って拾う。


見出しは赤字で「部員募集中!!!」と太く書かれていた。ちなみに吹奏楽部。


(そういえば、葉桜さんは部活入ってんのかな)


思いがけず拾ったポスターからの情報で、不意に頭に葉桜さんが浮かぶ。


(まあ、あの感じなら運動もできそうだよなあ..)


体育は男女別れているので、お互いに何をやっているかは知らない。

でも、あの葉桜さんの事だから。とほぼ確信しきっている自分がいた。兄としても、友達としても。


存分にA型を発揮して、きれいに画鋲を四つ角に差し込んでおいた。



少し軋んだ1の8のドアを開けると、すでにクラスメイトの大半が来ていた。


え、なんでさっきまでいなかったのに大半が来ているか?


陰キャを舐めないで欲しいものだ。

とっくに人通りの少ないルートを開拓している。

それが遠回り且つ、先程のポスターの事もあったから少し時間がズレたというのもある。

ポスターが1枚しか落ちていなかったのは、他の画鋲が強かったのではなく、人気の少ない場所にある掲示板に貼られているのが吹奏楽部だけだったからという渾身のオチはここら辺にして。


もちろん、「おはよう」などと軽く声を掛ける友達なんてものはいなく、席につく。


手際よく、今日使う教科書だけをカバンから取り出して、あとは本を読むのが俺の日課なんだけど...



スマホが振動した。


ゲームの通知は学校に来る前に切っているし、大体のものは設定でミュートにしているはずなんだけど...



「今日放課後特別棟自習室」


...



ポップに表示されていた人物は、桜の花びらのアイコンで俺の義妹でもある葉桜さん。


ふと彼女の方を見ると、倉科?だっけ金髪の綺麗な長い髪をした女子生徒と楽しそうに話している。


「なぎぃー、昨日のドラマ見たー?」

「昨日はちょっと疲れて寝ちゃったー」

「何してたの?」

「そりゃもう勉強よ」

「うわうわ、出たよガリ勉なぎち」

「アナタモコチラニクルカ?」

「ぺし」

「あいて」



何すんだよー、と年に相応しいようなないような

会話を続ける2人。

クラスメイトの男子はいつの間にか2人に釘付けになっていて、どこからか

―――いやあマジで天使。

―――俺、告っちゃおうかな。

―――髪の毛ちょっと貰えんかな。


なんて声が聞こえてくる。

まあ最後のキモい発言は除くとして、多分憧れとかそういう暖かい眼差しを向けているのは間違いなさそうだ。


そんな時、不意に彼女は俺に横目を向ける。


まるで「君、私のことみてたね」なんて訴えかけてくるような。

クラスメイトの男子ならともかく話している倉科さんですら気づかないほどの一瞬の行為だけど、俺はゾワっと、2つの意味で背筋が凍った気がした。


「ねー聞いてるう?」

「聞いてますよーだ、ほら耳見える?」

「バカにしすぎ」


そう言って彼女達の会話はまた続いてく。

しらを切る、というか本当に何事も無かったかのように広げられていく会話。

度胸というかスキルというか、俺はまた彼女を尊敬した。


ちなみに、勉強していたなんてのは真っ平な嘘で、夜まで俺にボコされ続けていた彼女の図が、頭をよぎっていたのは秘密の話。















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