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屋根の下の義妹、窓の外のヒロイン。  作者: 仁波昼海
一章:ヒロインな彼女と

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10/11

それが付き合いというもので

チャイムがなって担任が教室に入り、倉科さん共々は席に着いていく。


春沢先生が話を始めると、またもやスマホが振動する。


「どや、私の圧倒的ヒロイン力」

「はいはいすごいすごい」


俺も葉桜さんも一番後ろの席だから、担任からは到底見えない。

だけど、どこか感じるもの恥ずかしさで2人とも机の下でポチポチしていた。


「んで、さっきの送ったやつ」

「あ、気になってたそれ」

「まったく、私と自習室で待ち合わせとか君は陰キャの頂点だね」

「あ、それ自分で言っちゃうんだ。しかも兄に向けて陰キャとかも言っちゃうだ。へ〜」

「なに」

「もう今日はゲーム付き合ってやんないよ」

「ごめんなさい!!!!!!!」


そうして迫真のイソギンチャクが謝るスタンプが3度連続で送られてきた。...イソギンチャク??


やり取りは基本的にこんな感じ。

やっぱり義妹としての俺との会話が馴染むのか、目の前に葉桜さんがいるかのように感じてしまう。

女子とのやり取りをするなんて俺にとっては大きな進歩のはずなんだが..どうにもしっくり来ない。


「んで結局なんなの」

「今日は買い出し」

「待ち合わせ自習室にする必要あった?」

「別にいいの!!」

「あぁそう、まあいいけど」



母も義父も仕事が忙しく、父に関してはまだ声しか聞いたことがない。


でも、そういう所がまた、この二人の仲を進展させている要因でもあるので今となってはありがたさを感じているまである。


だから、買い出しだとか作り置きとかそういう所で2人に恩返しを出来たらいいなあなんて思っていて、それが葉桜さんも同じだったっていうだけ。


少し放課後が楽しみになった朝。

最後の言葉にリアクション機能を付けたのを確認して俺はスマホをしまった。



そうして、ゲームと買い物の事が頭から離れなかった午前が終わり、昼休みに入った。


煩悩しか頭にはなかった訳だが体は正直なようで、チャイムと共に力が抜けていった気もした。


「じゃあ...行くか」


今日は焼きそばパンだ!!などと男子が走り去って行き、学食に向かう女子たちの区切りを見据えて俺は教室を出る。


交代制で作ることにした弁当は今日は葉桜さんの番。自分で作ったものの味はあまりよく分からないとも言うが、それを踏まえた上でも多分彼女の方がご飯は美味しいと(俺は勝手に)思っているので、2日に1回来るのを楽しみにしていた。


そんな弁当を持ちながら俺が向かうのは、体育館裏でも、倉庫でもなく。


風当たりの良くて、暖かな日差しも感じられながら過ごしやすい昼食の最適解。


「よし..開いてる」


初めて気付いたのは一週間前。

そういえば屋上って開いてんのかな、なんて軽い気持ちで持ち前の陰の薄さを活かして掃除時間中にドアノブを回してみたところ。

なんとびっくり。鍵がかかっていませんでした。


絶対的に客観的に閉まっていなければならない場所なので、当然人は来ない。

クラスの人数ですらうっとうしく感じてしまうぐらいの人混みが苦手な自分にはぴったりの場所。

消しゴム忘れた時のシャーペンの消しゴムみたいな、マジでそんな感じ。


「...はぁ」


朝マンション下の自販機で購入した桃風味の水を開けて、ひとくち飲む。案外桃の味するもんなんだな。


恐らく今ついたため息は、この一人の時間に対する安心感と開放された幸福感によるもの。


やっぱり誰かと遊んだりするというのは無論楽しい。ずっと一人でいたけど、それが楽しいってことぐらいはずっと承知の上だったからこそ。

だけど、こうやって一人でいるのもまた嫌いじゃない。

それは彼女との楽しいやり取りや、慣れない高校生活の疲労などがあるから余計に。


「しんどいのか楽しいのか...全くわからんな」



ふわっとそんな言葉が口から出てしまう。

最近は物事の流れが速すぎて、もしかしたら一つ一つのことをもうしっかりと覚えていないのかもしれない。


あの時こうすれば良かったのかな...とか、一人でだった時に考えていた事もまた別の意味で考えさせられているのがどこか面白くてでも面倒くさくて。


そんなことに気付かせてくれたのは間違いなく義妹いもうとであり、隠れた友達でもある彼女。


必然的に長くなる付き合いだからこそ、そういうのにも慣れていかなければならない。


「...頑張らないとな」


彼女の作ってくれたご飯を一つ一つ味わって食べて、最後に桃風味の水で締める。


少し早いが、教室に戻ろうとしていた時だった。


―――なんですか蒼宮先輩。


聞き覚えのある声が、ヒロインと対になって存在しているような学校の王子様的男子生徒の名前を口にしていた。





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