天須美日向
さっきまで同じように部活をしていて、僕が最後だったはずなんだが...
「君は一体いつからそこにいたんだ?」
「先輩が先輩の未来のダーリン(仮)になぎちの名前言われてNTRれたみたいな顔してた時からですかね」
目の前にいる彼女は嘲るように言う。
初心な僕の心をえぐっているような事を言ってるのかもしれないが、よく単語の意味が分からない。
て、今はそれどころじゃない!!
僕はまた顔だけを出して彼女たちの様子を伺う。
すると―――
な!!!!!!!
「おぉ、なぎちやるねぇ〜」
彼はスマホを彼女に渡して、後ろをついて行った。それも小走りで。
ぽかーんと開いた口が締まらない僕の横で、ひなたは関心したような声をあげる。
なるほど、これがネトなんとかされた感覚..。
うぅ...スマホを渡せる仲....か。
「負けたね先輩」
「うるさい!なんなんだ君は!」
僕の心の嘆きを見透かしたように彼女は代弁する。
いつもの自分を取り乱さないよう、それなりにキメようと思っても、きっと彼女には通じないだろう。
「あぁ...スマホおぉ...」
「そんなんで泣かないでくださいよせんぱ〜い。もう今ほんなはおひへまふよー」
後輩の前で嘆き崩れている僕に、彼女はプライドを捨て、(´・ω・`)を顔で多分表現している。
「ちなみになんにも面白くないぞ」
「ひどい!」
天須美日向という人間はこういうやつだ。
茶髪ボブとそれなりに整った顔立ちの気品溢れる見た目とは違って、他人の恋愛に割って入り、尚且つ一芝居打つこともできる、腹黒くて稀有な力ももつ敵に回したくない存在。
そして、味方になっているかも分からないのが更にめんどくさい。
ふふ、と日向は可笑しそうに笑う。
「いやあ、それにしてもなぎちと先輩があの陰キャ君を好きになるなんてねえ」
日向は、小馬鹿にしたようなはたまた面白がっているような顔でしゃがんで僕と同じ視線を作る。
「ま、私はROM専なんで関与しませんから安心してくださいよ先輩」
そうやって彼女は僕の肩をポンポンと叩く。
さっき言った言葉って遠回しに見れば、私が彼おとそうと思ったら一瞬だからwみたいな事表してるし、結果は置いといてROM専で良かったと安堵してしまっている自分もいる。
でも学年の離れている彼のことを知るためには目の前で腕を組む彼女すらも利用しなければならない。
僕は気持ちを切り替え、情報収集を進めることにした。
「こっち人少ないからこっちで話そうか」
僕は万が一の時しか使わない、誰にも出会わないルートを彼女に教える。
「こんな所で2人っきり!?」
「しないよ」
「あれ?私何も言ってませんけど?」
「...はぁ」
いちいち反応かったるいよ本当に。
あ、いやいや。
こんな後輩持つのも困るなあ、HAHAHA。
人の少ない方の道を歩きながら隣にいるひなたに話を聞く。
「さっきから呼んでいるなぎちというのはあの葉桜というやつのことなのかい?」
「ですです、私仲良いんですよね〜」
流石に下の名前で彼が呼ぶことはしていなかったため、確定ではなかったが、どうやらひなたと彼女は親友的な立ち位置らしいので少しありがたかった。
そして僕が何よりも気になるのは...
「じゃあ次に、葉桜さんがマイダ...ごほん。冬咲くんを好きだと思う根拠についてお聞かせ願おうか」
彼女が敵か否か、それを確かめるための話だ。




