放課後デート?①
ブーブーとスマホが振動する。
「女の子を待たせるなんて!」
やかましい。
赤信号でスタンプが送られてくる。
「あなた、ヤバいわよ!」
迫真でサメが言っている。メスだ。
そんなヒロインらしからぬユーモア溢れるスタンプや言葉を一方的に送られ続けているうちにユニシロの前についた。
今度は俺が1つスタンプを送る。
「待たせたな」
いつもするゲームのキャラが言っているスタンプ。馴染みのある方が愛嬌もある。ものにもよるが。
待たせるなんて!って言ってるぐらいだから外で待ってるのかと思ったのに、辺りを見渡しても、それらしき人物が見つからない。もしかして中にまだ入っているんだろうか。
それにしてもなんでユニシロなんだろう。
しかも放課後わざわざスーパー寄る前に行く必要あるかな、どうにも腑に落ちない。
色んな女子がいることは分かりやすい前例が多すぎるため、よくわかっているが、ぶっちゃけ葉桜さんはファッション気にするタイプじゃないと思っている。だから更に謎だ。
そんな時、スマホのポップアップに一つのメッセージが来る。葉桜さんからだ。
「もう外にいるよ〜ん」
あれ?いつの間に外に出たんだろう。
自動ドアの開く音しなかったしなあ...。
俺が再度辺りをキョロキョロしていると―――
(よっ!)
「ひゃっ!!....」
急に後ろから首筋に冷たい感触がした。
俺がすぐさま後ろを振り返ると...
「どう?似合っとう?」
「...」
そこには、確かキャスケット帽?だったかな。
黒いそれを被って、白いブラウスに薄いカーディガン。デニムのダボッとしたパンツを履き、完全に"デートモード"の装備を完成させたヒロインもとい義妹が両手を広げて何かを求めていた。
なるほど...
「変装か」
「That's right」
指をパチン!と上手くは鳴らせず、なんとかキメ顔で誤魔化して流暢な英語を話す。
とりあえず見なかったことにしといた。
恐らくさっきの訛ったような口調も頑張っているんだろう。
「で、何がお望みだい?変装したお嬢さん」
「むふふぅ...そうですねえ」
俺は彼女より少しだけ背が高い。
だから詰めよれば若干圧をかけているようにも見える。でも演じる役にはぴったりかな。
彼女も役になりきっていることだし。
設定としてはこんなんで変装するなんて飛んだお嬢様ですね!なんて皮肉まがいなことから始めていたつもりなんだけどね。
「とりあえず、手を繋いでください!」
そして彼女は左手を俺に小さく差し出す。
俺は貰った桃風味の天然水をポケットに閉まう。
「はい、お嬢様」
自分でも思わず笑みがこぼれている。
俺はとことん茶番に付き合うことにした。
それらしく紳士的な笑顔を向けたつもりにもなって、右手を差し出す。
「ふ...ふふふ....おお、これは給料アップかなぁ」
安心してほしい、人はいない。
俺は彼女の手を自分から受け取った。
「お褒めに預かり光栄です」
「ふふ、ほんと面白いね」
ほんのり赤くなった頬が夕陽に照らされ、笑った顔も眩しくなる。
本心なのかは分からないけど、彼女といるとなんとなく調子にのってしまう心当たりが無くはない。少し食い気味に行動したり言動が迷走したりする時もある。
ちょっと馬鹿にされているような気がしなくもないが、「ふふ」がヒロインとしてまだ演じているのかお嬢様のなりきりなのかはまだ分からなかった。
「じゃあ行こうか」
俺は彼女の荷物を受け取り、先導する。
「うん、でもまず格好ほめてよね」
「なんで?」
「試着室だけ貸してくだいって言うのめっちゃ恥ずかったんだから!」
「ははは、勤勉だなあ君は」
そうやって笑い合いながら俺たちはユニシロを出た。
義妹に切り替えていたのはとっくに手を繋いでわかっていたから。




