モデルの彼氏
会社の帰り道。
いつもの本屋に寄った。
いつも立ち読みでごめんなさい、本屋さん。
いつもの占い。いつもの星占い。いつものファッション雑誌の星占い。
今日はどうかな? 今日はどうかな? 私の星座は天秤座。
パラパラパラっとページをめくる。
「はぁっ」
声にならない吐息が出た。
そして、私はそこから目を離せなかった。
写真の彼は微笑んでいた。誰だろう?
シンヤ
そう、名前が書かれていた。
モデルさん? なのかな?
略歴を見ると俳優志望のファッションモデルだった。
「ふぅん」
変な吐息が出た。
何か私、変?
このドキドキは何だろう?
「ありがとうございました」
気が付くと、私はその雑誌をお買い上げ。
だって。
本を小脇に抱えてドキドキドキドキ。
ただのファッション雑誌なんだけどね。
どうしたんだろう? 私ったら、やっぱり変?
逃げるように追われるようにマンションに帰った。
エレベータが上昇して行く。
鍵をガチャガチャ、マンションのドアをオープン。
誰もいないのに「ただいま~」の挨拶。
「おかえり、ユウカ」
「ひゃぅあ」
変な声が出た。
びっくりしちゃった。
だって、彼がいたから。
「またかい?」
そう言った彼が優しく微笑んでいる。
「えっと…」
「そろそろ慣れてね」
「う、うん」
改めて、
「おかえり」
「また買っちゃった」
「ああ、それね」
「うん」
手にした雑誌を彼が見る。
「次号だけどさ」
「うん」
「ちょっと変わるんだ」
「えっ、何が」
「略歴が書いてあるよね?」
「う、うん」
「決まったんだ」
「もしかして?」
「うん、決まった」
「そっか、おめでとう」
「サンキュー。これ、最新号の見本」
雑誌を受け取ると、書かれてあった。
『シンヤ 俳優兼モデル 〇月から朝ドラに出演決定』
『俳優志望のファッションモデルから俳優兼モデル』
そうなってた。やったね。
「主役じゃないけどさ、朝ドラデビュー」
「やったね、おめでとう」
「この先も幸せにするからさ」
「じゃあ、私も頑張らないと」
「ユウカは今のままでも十分魅力的だよ」
「そうかな?」
「そうだよ。無理しないで」
「そっかぁ」
「このままずっと二人だ」
「うん、ずっとずっと二人でね」
「おう」
「うん、嬉しい」
この何気ない日常と彼との会話。
ただそれだけで幸せいっぱいになる。
ずっとずっとね。
このまま歳を取っても。
ずっとずっと。
一緒にいようね。
モデルの彼氏




