魔法のケーキ
たんじょうび たんじょうび たんじょうび
きょうは わたしの たんじょうび
うれしい たのしい たのしい たんじょうび
誕生日? お祝いしちゃうぞ?
私の誕生日だけど。
私一人で私一人のお誕生日会。
はっぴばーすでー私、おめでとう、私から私へ。
だって、彼は急な出張でいないから。
今日は私の誕生日なんだけど、私一人のお誕生日会。
ぐっすん
寂しいな。ひとりぼっち。
誕生日なのにひとりぼっち。
バースデーケーキはホールケーキ。
まあるいまあるい、まん丸真っ白のホールケーキ。
ロウソク立てて、お祝いお祝いしようと思ってたのに。
私一人のはっぴばーすでー。
賞味期限は今日までなので、ぱくぱく食べてしまわないと。
そんなに大きくないけどね。
私一人で食べきれるかな?
苺の乗ったバースデーケーキ。
真っ赤な真っ赤な、美味しそうな苺なのに。
大好き、私の大好き、甘酸っぱい苺のケーキ。
美味しく美味しく召し上がれ。
私ひとりぼっちなんだけどね。
ぐぅ
あ、泣いたのは私のお腹の虫の声。
ちょっとびっくり、一人で良かったかも。
彼に聴かれたら恥ずかしいから。
でも、やっぱり寂しいな。
ひとりぼっち。
ピンポーン
家のチャイムが鳴った。
っと、同時にスマホに通知が?
誰だろう、こんな時間に。
っと、思って通知を見ると、
『ゴメン、鍵忘れたからドアを開けて』
彼からだった。
急いで、ガチャガチャ玄関のドアを開けた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
彼だ。
「お仕事は?」
「予定より早く片付いてね。急いで帰って来たんだ」
「そうなんだ」
「それにさ、今日は特別な日だから」
彼を見ると、ちょっと疲れが見える顔をしていた。
「お疲れ様」
「うん? ありがとう」
疲れた顔色が気になる。
「ご飯は?」
「忙しくって、今日は何も食べれてない」
「じゃあ、先にお風呂に入って。温め直すから」
「えっ!? 二人分あるの?」
「うん、もしかしてって思って、念の為作っておいたの」
「そっか。空腹で倒れそうだよ」
「無理はしないでね」
「じゃあ、風呂に入ってくるよ」
「うん」
彼はお風呂場へ消えた。
私はキッチンへ向かう。
ぐつぐつぐつぐつ
ことことことこと
ぐつぐつぐつぐつ
ことことことこと
とんとんとんとん
ざくざくざくざく
とんとんとんとん
ざくざくざくざく
美味しく、美味しく、美味しくなあれ。
隠し味は、愛情たっぷり。
うん、出来上がり。
用意は準備オッケー。
「ふぅ、いい湯だった」
「うん、こちらも準備できたわ」
お風呂に入ったからか、彼の表情と声が明るい。
良かった。ほっとした。
「良い匂いだな。腹ペコだよ」
「実はね、私もそうなんだ」
さっき、お腹の虫が鳴いたのは内緒だけどね。
「そうだ、ゴメン。駅前の予約したケーキなんだけど、俺が行った時には閉まっててさ。受け取れなかった」
「ううん、私が受け取っておいたから大丈夫よ」
「そっか。ユイの誕生日なのにゴメンな」
「こうして、一緒にいられるだけでも私は幸せよ」
「そっか。こうしてずっと一緒にいられるといいな」
「え? それって、もしかして?」
彼がちょっと焦った表情をしている。
「しまった。明日、いや、明日、二人の思い出のレストランを予約しておいたからさ。その時に話すし、その時に言うよ」
「あのお店ね」
「そうそう」
「うふふ、それなら楽しみにしておくわ」
「それって?」
「ううん、明日のお楽しみにしておきます」
「そうだな。期待しておいてくれ」
「うん」
ぐぅ
私のお腹と彼のお腹の虫が同時にぐぅっと鳴いた。
「ふっ、食べようか」
「そうね。私もお腹ペコペコよ」
食卓のテーブルに二人一緒に。
『いただきます』
「食後のデザートも楽しみだな」
「そうね。私もあの駅前のケーキ屋さんのケーキは大好きだから」
「老舗の味ってやつだな」
「そうそう、安心する美味しさかな」
「ユイ、お誕生日おめでとう」
「ありがとう。嬉しい」
心がぽかぽかあったか幸せ。
魔法のケーキ




